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幸福度  作者: 陽田城寺
3/15

天使の能力

 後日、恭二はにおいで目を覚ました。

 普段和食の恭二にそのにおいは違和感が強かったが、それでも旨そうな香りに違いない。

「目、覚めましたか?」

 というのは、昨日の天使の声である。

 机の上には見慣れぬ食器にクロワッサンにカフェオレ、ベーコンエッグやサラダが盛られている。

「なにこれ?」

 寝ぼけ眼で前に座る天使に訊ねる。

「なにって、朝御飯に決まってるっでしょ! どうすか、幸せすか?」

 期待に目を輝かせ天使は訊ねるが、答えを恭二が言う前にその輝きは消えた。

「まあ、少し嬉しいよ」

「あっそすか」

 試しにクロワッサンを一つとって口に入れてみるが、口内の水分が一気に奪い取られ、即座にカフェオレで流し込む。

「うん、悪くない」

「恭二」

 呑気に食事を続ける恭二に天使は真面目な表情で向かい合う。

「私に出来ることがあれば何でも言ってください、多少非人道的なことでも構いませんし、超常的な願いも少しぐらいなら叶えます。これからあなたの存在が私の運命を左右するんですから」

 天使の自分勝手な願いに恭二を巻き込む形であるが、それでも天使は帰りたかった。

 その天使の可能なことを利用すれば、恭二は世界を席巻することも史上に名を残すこともできたかもしれない。

 が、そういうことをしない性格が恭二の不幸の一因である。

「いや、そんなのはいいよ」

「そんなのはって……。いいんですか? 十万円ぐらいなら出せますし、偏差値だって三ぐらいなら!」

 スケールの小ささに嘆息しつつ恭二は天使を宥める。

「別にお金に困ってないし、勉強も、良くはないけど……そんなに必死じゃないから」

「何か願い事はないんですか!?」

 あまりに必死に嘆願する天使を見かね、つい一言恭二は漏らした。

「家族を……」

 それは、天使には叶えられぬ願いであった。

「すいません、生き返らすのは流石に……」

「だろうね」

 恭二は何事もなかったかのように荷物を持ち出かける準備を進めた。

「他に、他に何か願いは!?」

 自分が天界に戻るため、先の失敗を埋め合わすため、必死に天使は叫ぶ。

「見送ってくれたら、それでいいよ」

 そして天使は一人残された。

 座る様は惨めで手を差し伸べたくなるほど滑稽。

 しかし天使のメンタルは意外なほど強い。

「やってやろうじゃねえですか! 幸せのどん底に突き落としてやりましょう!!」

 そして天使は準備を始めた。


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