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幸福度  作者: 陽田城寺
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終幕

 得美と恭二は恋人同士、ということになった。

 無論二人に恋愛感情はなく、家族的親愛を持っているだけであるが、登校下校を共にし、同棲するのだからそれくらいの理由がないとまかり通らない。

 この日は休日、いつもの五人で遊びに出かけた。

「いい? 得美ちゃんの次は私だからね!」

 蝶子は結局、我侭に生きることにした。恭二の不幸、家庭の事情、そういう煩わしいものに戸惑い恐れることは恭二自身が嫌がる。

 その我侭は蝶子自身を不幸にするのだが、それすら恭二はすぐに気付き諭してくれたために、ますます蝶子は想いを止められなくなってしまったのだ。

「蝶子、この球、穴が三つしか空いていないわ」

 さやかがボーリングの球を見て大真面目に言った。

 一方のさやかはますます奥手になってしまったかもしれない。

 自分が恭二にどういう感情を抱いているか、蝶子にどういう気持ちであるか、それらを考えるのは少し難しいかもしれない。

 それでもさやかは変わりつつある。海藤蝶子という人間と出会い、触れ合うことで、勉強一辺倒だった彼女は良い方向にも悪い方向にも変わろうとしている。

「さやかちゃん、それには指を三本だけ入れるんだよ……」

 後ろから近寄った幸人を、さやかはボーリングの球で殴ろうとした。すぐに幸人は避ける。

 幸人は恭二の良き友人として、これからも共に過ごす所存である。

 得美の話を聞く限り、もし得美がこの世界から消えてしまったならば幸人の罪も贖われたことになる。だがそれで放置しては恭二はまた不幸になるだろうし、何より幸人の気が済まない。

 不幸だから付き合ってやる、なんて考える人間がこの世にいるわけがないのだ。

 恭二は自分の膝を枕にして寝る得美の姿を見て、楽しんでいるみんなを見て微笑んだ。

 彼の生活は随分変わった。自身の不幸は軽減し、娯楽の享受や金銭の使用も緩んだ。

 携帯は買っていないがテレビは買うぐらいの進歩も見せたし、チャーハン以外にチキンライスも作るようになった。

 何より、自分の命と幸せを人並みに求めるようになった。悪人の子で存在が罪だと考えるきらいがあった彼は、得美がこうして現世で同じように生きていることを伝えられ、自分もそのようになくてはいけないと考えるようになった。

 その性質はなかなか変わることはなくとも、幸福度はマイナス八千万台まで回復したうえ、一般人と変わらない程度の幸福推移になった。

 これから得美が努力を続ければ続けるほど彼は幸せになるだろう。

 しかし、まさしく天使のような寝顔をしている得美はもう努力なんてしようと思わない。

「蝶子、このレーン、横に溝があるわ。これじゃプレイなんてできやしないわ」

「さっちゃん、もう流石に冗談だよね……?」

 次は得美に番であるが、誰もそれを起こそうとはしない。

 兄妹の時間を大切にするために。

 得美が努力して、恭二を幸せにしたところで何が起こるのか。

 彼女が嫌う天界に戻り、妹を再び失う恭二は不幸になり、何より得美は今の環境が好きだった。

 蝶子もさやかも幸人も面白いし、恭二と一緒にいるとなんだか安心する。

 それに、得美が努力せずとも、能力を使わなくとも、自由にしたいことをしているだけで恭二は幸せになってくれるのだ。

 だから得美は思うがままに我侭を言って贅沢をして、時に怒られるけれど、それでも恭二は幸せそうに見えた。

 そして、怒られる得美もどこか幸せを感じる。

 二人がこのまま幸福になっていけば、神は防人弥太郎の業を、別の形で二人に負わせるかもしれない。

 いつまでも永遠に二人が幸福を享受できるとは限らない。

 それでも二人は、二人でいるだけで幸せなのだった。

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