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幸福度  作者: 陽田城寺
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夜の一幕

 恭二が帰宅した時、既に得美が食事を完成させていた。

「ちょっと早くない?」

 ただいまを言う前にそういうと、大急ぎでエプロン姿の得美が玄関に走ってきた。

「お帰りなさいあなた! ご飯にする? お風呂にする? それとも」

「だから少し早くないかって言ってるんだけど」

 無反応に等しい恭二に、つい得美は溜息をついてしまう。

「どうして最後まで言わせてくれないんすか! せっかく私がドキドキお色気プロジェクトを」

「いつもの時間より二時間は早いよ?」

 普段恭二は食事を七時ぐらいに食べる。普段恭二は帰宅したら勉強をしたり買い物に出かけたり晩御飯の準備や掃除をするために時間が足りないが、神の力を持つ得美はあっという間に食事を済ませてしまったので準備時間すら要さない。

「食事の時間が早い。そんな文句は生まれて初めてです」

「誰かに料理を作ってあげたことあるの?」

「ないっすけど」

 平然と答える得美に、もう恭二は何も言わなかった。


 食事は普通というに相応しいもので、メインはハンバーグだった。

「料理上手いね」

「料理が上手なのか、食べ物が美味いのか、それとも私のゴッドパワーがすごいのか。どう思います?」

「美味しければ何でもいいよ」

「淡白ですね……」

 呟きながら、得美は刻々と恭二の幸福度の上昇を確認する。

 他人と会話するだけで、他人と食卓を共にするだけで、彼の幸福度はむしろ普通より速い勢いで上昇している。

 これは幸福度の上昇が早い体質、幸せになりやすい体質の特徴である。

 なぜ恭二はそのような体質の持ち主でありながらこんな状況に陥っているか。それは不幸になりやすい体質を備え持っているからであり、同時によほど幼少期の出来事が大きかったからである。

 だが、もし彼がこのような幸福体質の持ち主ならばマイナス一億の現状を、一千万まで戻すことが出来るかもしれない。

 問題は一つ一つの言葉に注意して不幸を感じさせないこと、そして柴口さやかである。

「あなたにもっと魅力があれば……」

 と、得美が本音をこぼした直後、恭二は一気に不幸になった。

「ああっ違います! これはちょっと物の弾みでいやホント勘弁してください!!」

 先は長い。



 得美が来て二日が経とうとしているが、恭二の幸福度は減る一方である。

 海藤蝶子の積極化、有野得美との日常会話などで彼は多少の幸福を得ている。しかし非現実的な存在と有野得美自身の立ち周り方が逆に彼の心配事悩み事を増やしてしまっているのだ。

 幸福よりも不幸が大きい、天界に戻るなどということは絶望的に思えた。

 しかし得美は諦めていない。

 彼女は曲がりなりにも神と呼ばれる存在を遠巻きに、人間よりかは遥かに近くに、見聞きし知っている。

 それなのに彼女は自分が誰よりも賢いと信じている節があり、こうと信じれば突き進む精神の持ち主でもある。

 柴口さやかさえ恭二にアプローチするようになればどうにかなる、と本気で信じ込んでいるのだ。

「我が計画は途絶えぬ!!」

「おいお風呂で叫ぶなって!」

 外の方から、恭二が大声を出した。


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