三歩目
体に振り下ろされる剣が見える。
ああ俺終わったな。
今までのことが走馬灯のように駆け巡った。
そして剣が突き刺さる瞬間死ぬという恐怖により意識が遠のいた。
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気絶した男に剣が突き刺さるかと思われたが、わたしも含めてその場に居合わせた皆が驚愕した。
剣は確かに男の肌に当たったが。まるで、金属か石を殴ったような音が聞こえた。
どこから見ても乱入者の男は服を着ておらず、肌も普通の人間のような柔らかな肌色をしている。
ゴーレムのような岩で出来ておらず、ドラゴンのような鱗もない。
予想外のことに驚愕してる男に、私は隙を逃さず近くに落ちてた剣を拾って素早く投擲した。剣は見事に男の背に突き刺さり倒れさした。
走っていた仲間が男に近づき、念の為に剣を振り下ろし首を飛ばす。
その間にわたしは乱入者が殴って気絶させた男に近づき、落ちていた剣で止めをさして相棒のもとに近寄った。
「生きてる人間達はそいつ以外全員死んだよ。それより、この人間どうする?」
仲間は持っている剣で乱入者を指して言う。
敵だったなら何も相談せずに殺しているだろうが。
わたし達はこの人間に命を助けられており、殺すのを少し躊躇ってしまう。
それに、こちらに友好的なら女王様の種馬にできるかもしれない。
「とりあえず気絶してるようだから、仲間を呼んで巣に持って帰って女王様に相談しよう」
剣を持った仲間は頭を縦に振り、わかったことを示した。
そして走って女王の待っている巣に走って行った。
残ったわたしは倒れている仲間に近寄り安否を確認するが…… 予想通り死んでいた。
「また一人いなくなってしまったか…… 人間共が!!」
人間共はまた仲間を一人取っていった。いつまでこんな思いをすればいいんだろうか…… また気持ちが沈んでいた。
「わたしがこんなことでは、また女王様が悲しまれるな。女王様はわたしよりも悲しみは深いからな」
そう、女王様は娘達の最後をいつも見られずにおられるのだから。
顔を引き締めてこれからのことを考えるんだ。
気絶している男はわたし達を助けたが、何の目的で助けたのか訳がわからなかった。
けれど、自分がこの男に助けれたことは事実で恩を貰ったが、恩を恩で返すか仇で返すかはこの男の行動次第。それまで出来る範囲で恩を返す形にしようと決める。
「さて、仲間が来るまで死体を並べて巣に持ち帰り易いようにするか」
わたしは食料となる死体を集めていく。
死体を集めながら男が目を覚まさないか注意していたが、杞憂に終わり男が目を覚ましたのは巣の中に連れられてから一時間ほどしてからだった。
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目を覚ますとそこは土の壁で出来た部屋だった。
周りには何もなく、壁に空いた小さな穴にランタンが入ってるだけの殺風景な部屋で。
俺は地面にそのまま寝てたみたいだ。
入り口にはジャイアントアントの女が二人、槍を持ってこちらを見てる。
俺は剣で突かれて死んだはずだが。
突かれたはずの胸に手を這わせて傷を探すが見つからない。
「気がついたか。女王様がお前に会いたいそうだから来てくれ。あと抵抗はするなよ」
ジャイアントアントが肩の手で手招きして先を行く。
色々訊きたいことがあったが、今はそんな雰囲気ではないため忠告に従い、先に行ったジャイアントアントを追う。
自分がついて行くと、もう一人のジャイアントアントが俺のことを警戒して槍を背中に構え、変な動きをしたらいつでも突けるようにしながら後ろを歩いて来る。
しかし、女王に自分の裸を見せてもいいのだろうか?
まっ、何も言われてないしいいか。
だらしない俺である。
土で出来た通路を歩いて行く。
通路には俺が気絶していた部屋にあったランタンが所々に置いており、暗い通路をほのかに照らしてる。
その途中いくつか分かれ道や部屋があるが、背中に槍を突きつけられていて中を見る余裕はなかった。
どれほど進んだかわからないが、やっと女王の居るところに着いたようで。
先に歩いていたジャイアントアントが大きく空いた穴の横に立ち「この先に女王様がおられる。中には私達の仲間が大勢いるから変な真似すると…… どうなるかわかるな?」と脅してきた。
怖かった。
殺されるかもしれないことも怖かったが。
それ以外に、大勢の魔物娘に裸を見られて露出プレイに目覚めてしまわないかと。