二歩目
「へっ?」
気がつくと辺りは緑に包まれていた。
目の端から端まで木で埋め尽くされてた。
口を開けて呆けていたが、ふと風が吹き抜けると体の違和感を覚える。
部屋で着ていた服がなくなっていて、素っ裸の状態になっていた。
いきなりのことに思考は固まっていたが、このままでは埒が明かないので、少しずつ思考を柔らかくしていく。
なぜこんなとこにいるのか。
どうして素っ裸なのか。
「やっぱりこれってあのサイトのせいだよな……」
この原因を考えると、やはりサイトの文字しか心当たりがない。
《あなたは人外魔物娘に逢えるなら何もかも捨てて逢いますか?》
書かれてたことが実際に起こったなら、納得できる部分もある。
特に素っ裸の理由が。
《何もかも捨てて》という意味は物理的な意味だったのだ。
「まさか異世界に来たのか?」
知らない世界にきた可能性があるとわかると、体が緊張してくるのがわかった。
しかし、人間の姿だったのは良かった。
もし動物や昆虫だったらどうしてたことか。
学生時代からWeb小説をちょくちょく見ていたので、転生ものやトリップものなどの小説に、このような始まりかたのやつもあったと記憶してる。
だが、小説の主人公のようなことが、自分に起こるとは思ってみなかった。
ふと、サイトに書かれてた、ある単語が頭に浮かんだ。
人外魔物娘。
あの書かれたことが本当なら、人外魔物娘に逢える!!
その夢が叶うとわかると、自然と体の緊張がなくなってきた。
「しかし服はどうするかな」
周りを見渡して大事な部分が隠せるものがないか探すが、木に生えてる小さな葉っぱなどしかなく。
とても俺の息子を隠せるものではない。
「仕方ない。素っ裸のまま移動するか」
まずは川を探して川に沿って下るようにしよう。
そうすれば文明が低い世界なら、水の確保がしやすい川の近くに、村などを作ってるはずだ。
ただ問題があった……
「川はどうやって探せばいいんだっけ……」
肝心なところを忘れてる俺である。
結局、川は見つからず森の中をまだ移動している。
空手で普通の人より体力があるが、いつもの整備された道路と違い、不慣れな土や石で凸凹にできた道の移動に疲れ始めてた。
その時女の悲鳴が耳に入ってきた。
久しく人の声を聞いたが、嬉しい状況ではないみたいだ。
疲れた体に鞭打ち、悲鳴の聞こえた方に全力で走って行く。
途中茂みなどが邪魔をするが気にせずに、茂みを突き抜けて進む。
目的の場所に近づくにつれ、男の怒声と剣戟の音が聞こえてくる。
それと共に風に乗って、鉄の臭い…… 血の臭いが臭ってきた。
その音と臭いに体が強張りそうになるが、女の悲鳴を考えると止まってる時間がおしい。
そして茂みを抜けると、目の前で戦いが行われていた。
目の前では男女に分かれて対立していた。
男が五人、女が二人。
そして地面に男女が一人ずつ血を流して倒れている。
男達は皮のような鎧を着込み、手には洋剣を持っている。
男達は仲間がやられたせいか、全員体から怒りが滲み出ている。
手に持ってる剣は怒りのせいか、震えている。
女の方は鎧などの防具は着ておらず衣服なども着ていない。
ただ肌は人間の肌ではなく、昆虫特有の甲殻が黒い艶を見せている。
手には槍を両手で持っているが、他にも手があり肩から手が二本生えている。
彼女達は俺がこの世界に来る理由になった人外魔物娘で、サイトで最初に見たジャイアントアントそのものだった。
俺は憧れの魔物娘が傷つけられてるとわかると頭に血が上り、「お前等魔物娘になにしてんだ!!」と怒声を男達に浴びせながら走り、手前にいた男の顔面を殴りにいく。
乱入者に驚いた男達は反応が遅れ。
手前の男は俺の体重の乗った拳を避けることが出来ず、顔面に拳をめり込ませて後ろに倒れ気絶した。
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わたし達はいきなりの乱入者にびっくりしていたが、乱入者がわたし達に襲って来ず。
逆に敵に攻撃を加えてるのを見て、乱入者が敵でないとわかったので、これを好機と思い仲間に顔を向けると、仲間もこちらを見ていた。
お互いに付き合いは長いので何を思ってるのか分かった。「好機」だと。
合図などは出さずに、孤立している一人の敵の側面に素早く走り挟撃する。
男はこちらに気づきわたしの攻撃を剣で防いだが、反対側に居た仲間の槍が男の首に吸い込まれ、槍は見事に首を突き抜けた。
そして、わたしは相手を確実に殺すために目に槍を突く。
槍から目の裏側にある骨を貫く感触が伝わり、絶命したのを確証した。
わたし達は素早く槍を引き抜き、乱入者を見ると丁度地面に尻餅をついて三人の男から止めを刺されるところだった。
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魔物娘達が戦ってる時、俺は三人の男からの攻撃を避けていた。
ある時は首に、胸に、手に攻撃がくるが、大振りなためになんとか避けられたが、足に剣が振られた時無理な体勢で片足を上げた為にバランスを崩してしまった。
「しまった!!」
俺は後ろに倒れてしまい、地面に尻餅をついてしまう。
男達三人が止めをさそうとそれぞれ振りかぶる。
諦めかけた時、魔物娘達の投げた槍が男達三人の内、二人の胸から槍が突き出ていた。
残った男は仲間がやられたとわかるが、それでも剣を捨てずに、「お前のせいで仲間達がやられちまった…… お前だけでも道連れにしてやらぁ!!」と怒りを露わに剣を振り下ろす。
二人の魔物娘は互いに落ちてる剣を拾い、一人は投擲するためにその場で止まり大きく振りかぶり。
もう一人は近寄って切るために走るが。
振り下ろされた剣が俺に当たるのが早かった。