10.躊躇いの日々に手を振って
うわぁー!とうとう最終話です!
早いっ焦焦
「湊ー!!!」
ホームに佇む君に向かって精一杯叫ぶ。
「林檎っ!?」
「はぁっはぁっはぁっ湊ー大好きだぁー!!!」
「えっ。」
驚く君のもとへと行きたくて。
周りの人たちの視線ムシして走ってゆく。
「私っ湊の事が、好きーーー!!!」
「林檎・・・・?」
顔真っ赤にする湊を見つめる。
「俺、林檎の事、大好きだー!」
戸惑いを見せたその顔は私の知ってる大好きな湊で。
私まで顔真っ赤になるじゃん。
駅員さんに止められたけど、改札機むりやり潜って、湊のもとへと走る。
ちょっと、強引かな・・・・?
でもそんな事考えてる余裕は私にはない。
走って走って。
ホームの階段駆け上がって、君のもとへと今。
やっと向かう決心が着いたんだ。
君が大大大好きだーって。
実感したから。
君なしじゃ、私じゃないって。
気づけたから。
君にまだなんにも、言ってなかったから。
ありがとうも。ごめんねも。さようならも。
ちゃんと伝えなきゃって。
気づけたから。
顔真っ赤にする君の胸へと飛びつくよ?
「りっ林檎!?」
「湊!!!今まで、ありがとう。それから、ごめんね?あと、さようなら。」
大きく息吸って、落ち着いて言ったら湊、私を強く強く抱きしめ返した。
「み、なと?」
「ずっとずっと。林檎の事が好きでした。
俺と、付き合ってください。」
待ちわびていた君のその表情に胸の鼓動がうるさくって。
嬉しすぎて。
涙が零れ落ちそうになる。
「湊・・・・。お願いします!!!」
声が緊張で震えるの分かったけど。
もう。
そんなのどうでもいいよ。
ーーこの時間が永遠になればいいのにーー
そんな願いが私の頭を掠めた。
この恋の期限は、あと何秒後ですか・・・?
そっと瞳を閉じて、この空間が永遠になりますように。
ーーーチュッーーー
甘く、幸せな音と共に、電車の音が響き渡った。
「もう時間・・・・・?」
「・・・・・うん。」
「そっか。」
「俺。絶対戻って来るから!林檎に逢いに、ぜーったい。帰って来るから!さよならじゃないよ?」
「湊・・・・。うん。判った!信じて待ってるよ?」
「おうっ!!!」
「「ばいばい・・・・?」」
小さな荷物を抱えて。大きな思いを乗せて。
希望に満ち溢れた君に。思いっきり手を振って。
「ばいばぁーいっ!!!湊ー!!!元気でねーーーーー!!!!」
ガラス越しに聞こえる筈ないのに、大声で叫んで。
涙堪えて、君に届きますように。
*** *
ーー3年後ーー
「ふあぁー。」
欠伸から始まる大学生ライフ。
高校の時。
ばかで、宿題なんにもしなかった私が。
大学生っ!!!
希望に満ち溢れたその瞳は輝いて。
覚えてる。
大好きな、彼の事。
いつになるか分からないけれど、私は湊がこの町に帰って来る事を信じて。
今日もこの蒼い、蒼い空を見上げる。
ーー湊?
元気にしてますか?
君の事だから、いつも元気にはしゃいでると思います。
私ね?
今日から大学生になるんだ。想像できないでしょ?
親友と同じ大学に入れなくって、淋しいけど。
頑張るよ?ほら。私。元気だけが取り柄じゃん?
いつ君が帰って来てもいいように、私はずーっと待っています。
私は。平気だよ?一人でも、ちゃんと頑張ってる。
勉強だって、頑張ったよ?宿題とか、全くしてなかったけど。
先生にとことん怒られたけど、頑張ったよ?
凄いでしょ?
君は遠い遠い所にいて。
この思いが届く事も、保証がありません。
でも。私は願ってます。
君にこの思いが届きますように。--大好きだよ?湊ーー
Ps.あの後、駅員さんにこっ酷く叱られました。湊のせいだよ!?・・・・冗談です。ばいばい?ーー
ペンを置いて、君の事を考えてる。
あの日。あの時。
いろんな人から勇気を貰って。
躊躇いの日々から卒業した事、後悔しません。
哀しい思い、散々した。
辛い思いだって、数え切れないぐらいした。
それでも。
私の思いは変わらない。
どんなに辛くっても。
私は湊が好きだった。
君に助けられたこの命の大切さを知り。
君のその冷たい言い方の裏に隠された、優しさを知った。
冷たい鋼鉄の仮面を被った君は。
本当に優しくって。可愛くって、不器用で。
本当に。
大好きでした。
君と離れてから。
もっと、そう思う様になれたよ?
もしかしたら。
君との別れは、神様のいたずらだったのかもしれない。
いつの日か。
君と再会する事が出来るのならば。
その時は笑顔で。
迎え入れられる様な。
勇気をください。
弱虫な私はきっと。
泣いてしまうでしょう。
そんな私の頭を。
優しい湊は撫でてくれるでしょう。
でも。私はもう、大学生なんだぁーって。
そんな風に笑い合える様になるために・・・・・・。
勇気をください。
*** *
茶色い革のバック肩に掛けて、新品の靴に足突っ込む。
「いってきまぁーす。」
新しい出逢いに、新しい日々に期待して。
重いドアを推す。
ーーガチャッーー
聞きなれたその音は、少しだけ私の緊張を和らげる。
「っ。」
深呼吸して、目を閉じる。
ーー大丈夫。大丈夫。ーー
踏みなれたこのコンクリートを見つめる。
所々に雑草が生えてて、それがこの街の良さだって。
今更ながらに気づかされるよ。
「っわ!!!」
小さな小石に躓いて、顔から地面に叩き落される。
「痛っつ・・・・。」
「バーカっ!」
「え。」
視界の隅で差し出された手。
そんな手の声の主は。紛れも無い、君だった。
ゆっくり顔あげて、手の正体見つめる。
「湊・・・・。」
涙がじんわり流れてくる。
「ほら泣くなよ?手。」
呆然と座り込む私に彼は手を引っ込め、小さい私を抱きかかえる。
「へっ!?」
宙に浮いた私の体は地面へと立たされる。
「っな!」
顔が真っ赤になって、言葉が出ない。
「相変わらずだな。林檎らしい。」
「湊・・・・・。お帰り?」
「ただいま!林檎!」
涙は流さないって誓ったのに。
ひたすら涙が零れ落ちる。
「ぅっ・・・・」
「ほら泣くなよー?」
「泣いてないもんっ!笑ってるよ?」
「林檎・・・・好きだ。」
「ばかぁー。湊のばかぁー!湊大好きだぁー!!!」
零れ落ちる涙は地面へと落ち。
私の今の表情は。一番新鮮に、笑ってる。
待ちわびた君の姿はあの頃の様でした。
ちっとも変わってない君と私。
あの頃に戻れる・・・・?
「これからは、ずーっと一緒だよ?」
「あたりまえ。ずっと一緒!」
あの頃に戻るんじゃない。
これから、また新たな道を歩いてく。
今度は一人じゃない。湊と一緒に。
二人で歩いてくんだ。
fin.
今まで読んでくださり、ありがとうございましたぁーーー!!!)涙