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復路二日目編その二

国道2号線をひた走った。

今日中に和歌山に入ってしまって午前中に奈良に行って、一気に走って家に帰ってゆっくり休もう!

脳内完結を済まして後は結果を残すのみ。

だが、国道2号線はちょっとした混み具合いを見せていた。

ここは別ルートで、進むがきちだろう!

清水の舞台~、などと言いながら同名の交差点を右折する。

おそらく何かの陸橋であろうちょっとした上り坂が、終了したあたり。

突然そいつはやって来た。

車両後部から砂利を跳ね上げるような音。

あれ?砂なんて浮いていたっけ?

突如として力を失うエンジン。

む?ガス欠か?

ガソリンはまだだいぶ有る。

が、車体を少し揺らし、ギアを落とす。

しかし、エンジンブレーキすらかかっていない様子。

頭の中に嫌~な予感が走る。サイドミラーを確認して走行車線へ移り、

ギアをニュートラルにして惰性で坂道を降りる。

交番が見えるが、とてもそこまでは届かない。

何とかゼブラゾーンの中に車を停めると、早速後部へ回り下を覗き込んだ。

まるで滝のようにオイルが漏れている。

痛恨のエンジンブロー。

二見交番前の出来事だった。

今後のことを考えねばなるまい。

天を仰ぎ、タバコをくゆらせる。

このエンジンの状態では修理して帰ることは99%不可能だ。

まずこの車をどうするか考えよう。

送ることを考えた場合、最低5万円以上の金がかかるに違いない。

そもそも、こんな状態の車を運んでくれるかどうかも怪しい。

修理したとしてもエンジンの換装が最低条件になるだろうから、最低20万円かかるだろう。

たぶん、これは大雑把な計算であって、再び動き出すまでの経費はもう10万円くらい上乗せしないとダメであろうと思われる。

じゃあ、この兵庫県で修理して取りに来るのはどうか?

面識の無い業者では規定料金を取ってくれることだろう。

そうなると修理代はさらに跳ね上がる。

これは全く無意味だ。

ならば、まずはレッカー車で移動、その後に廃車という手続きに移るのが良いだろう。

タバコ一服の間にこのように結論付けて、交番へ歩き出す。

交番で、事情を説明し、レッカー業者を紹介して欲しいとお願いしてみた。

「ここではねぇ、業者の紹介はしていないんですよ」

早速挫折した。

でもあそこに車を放置しておくわけにも行かないよね?

警察官の言葉に引っかかるものを感じて、変化球を投げてみた。

困ったような顔をしながら、

「でしたら、普段警察で利用している業者さんを教えてもらえませんか?」

これが正解だった。

レッカー業者が来る前に、帰る計画を立てる。

こんなことを望んでいたわけではないが車にはバイクが1台。

これを利用しない手は無いだろう。

アルミのラダレール、クーラーボックスと中の大量の飲み物。

その他の備品は残念ながら処分で決定だ。

大き目のバッグに詰められる物だけ詰めて、送ってから、バイクで帰る。

そんな計画がまとまったので、気分よく一服。

走り去る車のタイヤの音が、相棒を失ったことを増長させるが、

そんなことを気にしていたら、悲しくなるだけなので、帰る計画を、と思ったら業者が着てくれた。

まずはこのまま廃車に出来るか聞いてみる。

出来るとは!しかもカード払いOK!

救いの神のようだった。

たぶん心がだいぶ折れてたんだろうな。

事情を説明すると、コンビニまで一緒に行ってくれると言う。

さらに感謝だ。

コンビニでバイクを降ろし、荷物を送る手はずを整え、バイクに荷物を積み、車の中のものの処分を依頼して、さらに一服。

心を落ち着けて、家に電話を入れた。

カミサンに、車が壊れたこと、バイクで帰ることを伝え、コンビニで暖かいコーヒーをすすりヘルメットを被った。

そんなタイミングで電話が入った。

出ると烈火のごとく怒っている父親からだった。

いわく、バイクなんかじゃ帰って来れない。

いわく、クロネコで送れるからバイク送ってもらって帰って来い。

はっきり言おう、

怒るのは反則だ。

怒っている人間とは会話にならない。

つまり理性的に話し合うことが不可能なんだ。

よくこの『怒る』を、ビジネス手法に取り入れている中高年がいるが、

たぶん、理屈でかなわないから、怒って言いたい事言って会話を打ち切るんだ。

それって、ずるいよな。

だいたいさ、兵庫から千葉だろ?

余裕じゃないか。

原付なんて近所周りくらいしか使わないと思っている腐った常識が間違いなんだが。

その腐った常識を常識として捕らえる殻の中にいる人には、当たり前の常識で、

こちらの当たり前の常識は逆に腐っているとなる。

人の話なんか聞かないのが、この旅のモットーなんだけど、

さすがに、自分の親にそうまで言われると少しの抵抗くらいで折れるわな。

『送れる所を探しながら帰る』で折り合いつけたよ。

でもその選択は間違いだったんじゃないかと後になって思うんだ。

ヘルメットを被ったばかりのころは、

『近くで泊まれる所を見つけて、静岡で一泊して帰る』

と言うつもりになって居たんだ。

今の状態は『バイクを送れるところを見つけて、泊まって電車で帰る』

ちょっと仕事多くない?

夜の9時過ぎだよ?

携帯電話のIタウンページを駆使し、クロネコヤマトを見つけ、閉まっていることを確認、

2件目が閉まっていることを確認したのが午後11時だ。

そこで考えを変えた。

名古屋に向かう!

途中で宿泊施設があったら泊まる!

ビジネスホテルならなお良し!

深夜の2号線は車の流れが速すぎて泊まるところを見つける余裕は一切無かった。

深夜の大阪はタクシーが川のように流れていて、周りを見る余裕は無かった。

そして何より、雨です!

旅のアクセントって本当は大嫌いなんだからな!

カッパを着て1号線を走っているつもりだったが、いつの間にか163号線を走っていた。

10月の雨、深夜の雨、雨って何でこんなに冷たいんだろう。

奥歯を震わせながら、元気になる歌を歌ってごまかすがごまかしきれない。

たとえば『走る~、走る~、俺~た~ち~』と、歌いたいのに、

口からは『寒い~、寒い~、こご~え~る~』って、言ってしまうくらいに。

当然、流れる汗なんか出やしない。

深夜2時、心がボッキリと折れました。

寒いんです、眠いんです。

そこに見える光。

昔で言うモーテル、今で言えばラブホテルかブティックホテルか!

ここです!

ここで泊まりましょう。

たって、格好とかそういうのどうでもいいじゃないか。

寝ることが出来て寒くないんだよ?

いきなり飛び込んださ。

そして泊めて下さいって言ったら、返ってきた答えがこうだ。

「男の方お一人では泊められないです」

口の端引っ張ってやりたくなったが、事情を説明する。

「警察から厳しく言われていますのでダメなものはダメです」

京都の警察ガッデム!

自殺対策みたいだけど、俺が死ぬって。

京都に悪い印象を残し再びバイクにまたがった訳だが、

後になって考えれば「後で女が来るから」って、適当に嘘つけば良かったんだよね。

その当時はテンパっていて、思いつかなかったけどね。

再び国道163号線に乗ったわけだが、3時くらいに福音ふくいんが訪れる。

目の端に止まった精米所。

ここなら雨がしのげる!

でも引き返す気にはなれない。

特別な行動をするのが面倒になってきていたのだ。

これは悪い状況だが、心に決める、次見つけたらそこで寝る!

そして見つけた青い囲い、『成年書物自動販売所』だ。

バイクを停めその囲いの中に入ると、カッパを着たまま、ヘルメットをつけたまま、そしてグローブもつけたまま、ひざを抱えて寝ることにした。

このまま死んだらかっこ悪いな~。

時は午前4時を回っていた。


最終話まで行かないままに、

つまらない結果を見ることが出来たわけですが、

この話は次回で最終話です。


この話は、体験した人間が書いているので、次回でいきなり死ぬことは無いんですが、この後私はどうなるのでしょう。

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