#3/三毛猫★ヤマト~友達以上にならないと契約した親友にキスされて死にそうです~
「友達以上にならない契約」
高校の入学式の日に出会った二人。
【学園王子の亜希×学園の姫の聖那】
学年一位の天才・勉強以外はポンコツの聖那。
学年二位の万能型、亜希。
亜希は、女顔のあまり相手に恋愛感情ばかりを持たれ、男友達に恵まれなかった聖那の、初めての親友だった。心から信頼を預けていた。
それなのに──。
玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする「武子内親王/小倉百人一首」
(このまま生きていれば秘めてきた恋がばれてしまう。それくらいなら死んだ方がマシかもしれない)
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※本編はすべて全年齢です / 物語の終盤にR18を予定していますが、本編とは逸れたところで番外編として(R18公開可能サイト等で)公開する予定です
※文章はすべて自作ですが、専門知識の相談や助言に一部AIのお力を借りています
※10年以上前に二次創作として書いた作品を一時創作として書き直しました
※ほかの小説投稿サイトにも投稿しています
#3 / 第一部 第一話「ナイスチューミーチュー!」(下)
一学年に十クラスある。一組から三組はスポーツ推薦クラスで、四組からは成績順にクラス分けされ、数が増えるごとに成績優良度が上がっていく。入試で主席を取ったオレが在籍するのは当然、十組だ。
オレは十組の前に立って、ドアに貼られたコピー用紙を頼りに自分の席を確認した。
一番左の列の一番前。「十王」という自分の苗字を考えれば、どうやら五十音順の並びではなさそうだ。
示された座席へ腰を下ろし、机の上に腕を組んで頭を載せる。すでに疲労困憊だ。代表の辞の際、壇上で浴びた全校生徒からの好奇の目線に、もうオレのHPは至極僅かになっていた。
生徒が全員者席し終わると、担任と思しき男が入ってきて、黒板に「柳井猛」と名前を書いた。その風体は名前から受ける印象ほどの雄々しさはなく、ごく一般的な中肉中背で、剛毛のスポーツ刈りに少しだけ白髪を混じらせている。歳は四十を少し過ぎたくらいか。黒と茶色の斑模様の眼鏡もかけている。
担任の男らしい「猛」という名前が羨ましかった。西洋風の容姿に加え、「聖那」なんていう中性的な名前も、女子に間違われる悲しき一因なのだろう。いっそのこと改名してやろうかな、たとえば太蔵とか、隆盛とか、すね夫とか……などと取り止めもないことを思案しながら、無意識のうちにまた椅子をギィギィさせていた。
そのギィギィしていた椅子を、何者かの手がぐっと後ろから抑えて静止させてきた。驚いて後ろを振り向く。座席表によれば、そこには「神峰亜希」という生徒がいるはずだった。
「……ダニエル電池の仕組みはわかるのに、椅子の座り方はママに教わらなかったのか?」
神峰亜希は、先刻の「抗生物質」だった。ちなみにダニエル電池とは入試の理科に出た問題の一つである。
「ダニエルって誰? 君のお父さんの名前?」
オレは空とぼける。
「それを言うならお前だろ、」神峰亜希は常に溜め息混じりだ。「俺は純日本人だ」
余談だが、オレの父の名前はマッティ・ユハニ・ヴィルタネン。覚えなくていいですよ、皆さん。おそらくもう二度と出てこない。
「ところで、この席順ってなんの順番?」
「入試の成績順」
神峰亜希はこちらの問いかけにあっさり答える。余計な贅肉の一切ない、骨格だけみたいな話し方だった。
席順は入試の成績順。ならば、彼は二位だったということか。
「でも初めだけだそうだ。あとは席替えするらしい」
と補足してくれる。なぜこんなにヤマ高のことに詳しいのか謎だったが、あとから聞いた話によれば彼の姉がここの卒業生らしい。
「入試の成績順か。なら、どうしてオレが君の前なんだろう。補欠合格なのに」
式典中に面罵されたことへの意趣返しのつもりで、試しに言ってみる。別にもう気にしてもいなかったが。
「だからそれは──申し訳ない。弁解の余地もない」
ダビデ像よろしくの美顔で若者らしからぬ話し方をする彼に、思わず噴き出した。
「反省した?」
「井の中の蛙ということわざを肌で体感したのは初めてだ」
「蛙ちゃん、大海デビュー」くれぐれも、溺れるなよ。「オレという大海は広いぞ」
「溺れるどころか、蛙は海に至ったら数時間で死ぬ。両生類は基本的に淡水棲だ」
冗談なのか本気なのか判断しかねる言い方が笑えた。死んじゃうのかよ、とオレが肩を揺らすと、神峰亜希が初めてうっすらと口元を綻ばせた。このまま蝋で固めればすぐにルーブル美術館へ納品できそうなほどの、完全無欠の微笑といえた。
神峰亜希とは馬が合いそうだ。良い友達になれるかもしれない、と感じた。
そう、「友達」だ。
まさか彼と友達を越えたホニャララの関係になるなんて──その時は夢にも、本当に夢にも思っていなかった。
【第一話「ナイスチューミーチュー!」 完】




