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亜里野ストーリー  作者: 与志野 音色
2部神野ストーリー1章 神界トーナメント編
68/68

68話 固定


「下界人の意地ってやつ見せてやるよ。」


観客が息を呑む。


『お、おおっと!!

無闘、まだ戦意は失っていない!!』


司会の声が闘技場に響く。


その瞬間、右歩は無闘の背後に回り込んでいた。


「見せてもらおうか……下界人の意地ってやつを」


無闘は咄嗟に躱わそうとするが右足が固定されて動けない。


ドガッッッ!!!


重い一撃が無闘の背中に叩き込まれる。


「ウッ!!」


蒼鎧を使って防御はしているものの無闘は多少のダメージを受けた。


逃げようにも右足が地面に吸い付いている。


右歩は間髪入れず攻撃を仕掛け、神の気を纏った拳が無闘の顔面を狙う。


(……来る!!防御――)


だが、その瞬間。


スッ。


右足にかかっていた“重さ”が消えた。


「……っ!?」


無闘は反射的に体を捻る。

拳は頬をかすめるだけで、背後の空気を叩いた。


ブォッッ!!!


「な……!?」

「今、動いたぞ!?」


観客がどよめく。


『おおっとォ!?今のは回避だ!!右足動いたぞ無闘!!』


司会が声を張り上げる。


無闘は着地しながらわずかに口角を上げた。


再び、無闘の右足が重くなる。

床に縫い止められる感覚。


(……解除された)


一瞬だけ。

本当にほんの一瞬。


(常時じゃねえ……!)


右歩は動じない。


だが、その視線がほんの僅かに鋭くなった。

無闘は確信した。


(クールタイムがある)


祝福は万能じゃない。


発動 → 固定 → 解除

その隙間が確かに存在する。


(短いが……ゼロじゃない、一瞬のクールタイムの間に一撃入れるしかねぇ……!)


蒼の気が静かに研ぎ澄まされていく。


右歩が再び踏み込もうとするその時。


無闘の視線が床ではなく

右歩の足運びそのものを捉えていた。


(来る……)


祝福が解ける“次”を。


だが、その瞬間。


神の気が爆発的に噴き上がり、

右歩の身体が残像を引いた。


「!?なっ――」


無闘が息を呑む間もなく、


 拳。

 肘。

 膝。

 蹴り。


四方八方から同時に叩き込まれる。


ドドドドドドン!!!!


「ぐぁっ!!?」


『は、速い!!連続攻撃だァァ!!右歩、先程の攻撃は本気じゃなかった!』


司会の声が追いつかない。


右歩の祝福が断続的に発動する。


固定、解除、固定。


「……くっ!!」


無闘は受け流そうとするが足が止められ、体勢が崩される。


腹に一撃。


ドゴォッ!!!


「ぐおっ――!」


背中に衝撃。


ドガッ!!!


視界が反転する。


床に叩きつけられる前にさらに拳が落ちてくる。


『右歩、容赦がない!!クールタイムの隙を消す連打だ!!』


観客席が狂ったように沸く。


(クソ……!ダメだ、防御を……!)


右歩は淡々と告げる。


「俺の祝福を見切ったつもりか?」


無闘の右足が再び縫い止められる。

逃げ場はない。


神の気が無闘の全身を叩き潰す。


ドドドドドドドッ!!


まるで嵐の中に立たされているかのような暴力。

無闘の身体が何度も宙に浮かび、叩き落とされる。


(やはりな、奴の受け流しは無制限では無い……力とスピードで押し切ればいける!)


「……っ、は……!」


蒼の気が揺らぐ。

呼吸が乱れる。

視界が赤く滲む。


『無闘、完全に押されている!!これが七天神候補の本気だ!!』


右歩は一歩下がり、最後の一撃を構えた。


「クールタイム……その弱点は俺もとうに気づいている。」


その言葉に感情はない。


「過去にも俺の弱点を見切り、適応しようとする愚か者は何人かいた……不可能だったがな」


神の気が極限まで圧縮される。

闘技場全体が悲鳴を上げた。


「身体能力と祝福……この2つを上回らない限り俺を倒す事はできない」


無闘は膝をつきながらも――ゆっくりと顔を上げる。


口元が僅かに歪んだ。


「ゲホッ……痛えな……」


血の混じる息を吐きながら呟く。


蒼の気が再び灯る。


追い詰められたはずの無闘の目に恐怖はなかった。


あるのは――闘志だけ。


「MODE反転……」


同時に右歩の神の気が、臨界まで高まる。

闘技場の空気が悲鳴を上げた。


(奴の気の流れが変わった……好気!)


次の一撃。

それは確実に無闘を仕留める角度だった。


――その瞬間。


無闘は受け流しの構えを解いた。


司会の声が裏返る。


『無闘、構えを捨てたァ!?』


(諦めたか……!どちらにせよ逆転は不可能!)


蒼の気が逆流する。


身体の内側で、

今まで抑え込んでいた何かが――反転した。


「ハァッッ!!!」


右歩の神の気が炸裂する。


ドンッ!!!!


一瞬の凄まじい衝撃。


音も、光もすべてが遅れて追いつく。


右歩の拳が真正面から無闘を捉えていた。


だが――


「……な……」


言葉にならない声。


右歩の身体が紙屑のように宙を舞う。


次の瞬間。


ズドォォォン!!


闘技場の床に深いクレーターが刻まれる。


右歩はその中心で血を吹き、動かなくなっていた。


神の気が霧散する。


固定の祝福ももう発動しない。


完全な――戦闘不能。


一拍の沈黙。


そして。


『これは……』


観客席が言葉を失う。


司会が震える声で叫んだ。


『し、勝者――!!勝者はァァァ!!』


『下界チーム!!無闘ッ!!』


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