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亜里野ストーリー  作者: 与志野 音色
1章 神界高校、文化祭編
5/13

5話 文化祭準備


部活動が終わり、生徒たちの姿が消えた神界高校。

外灯が体育館のガラス窓をぼんやり照らし、薄暗い影を伸ばしていた。


その体育館の中で、三つの影が潜んでいる。


「本当にあの時、殺さなくてよかったんですか?

あいつら……全然私らに付く気なかったですよ。」


サメが自身の影の中から顔を出した鮫を撫でながら言う。


YOU diedはつまらなそうに笑った。


「いいんだよ、あいつらの祝福はまだ未完成だ。

蒼の気の扱いなんて概念レベルでしか理解してない。今殺すより、調教して使えるコマに育てた方が得だ。」


言葉の最後に、YOU diedはニヤリと笑った。


「待ってろ抹殺斗……コマが揃ったら真っ先にお前を潰してやるよ」


その不気味な笑い声は暗い体育館に響き渡った。


だがその笑い声を、校舎の屋上の柵にもたれかかった男が冷めた顔で聞いていた。


「馬鹿が……だからお前らは蒼の気すらまともに扱えねぇんだよ。」


つぶやくと、男は屋上のドアを開け、スタスタと校舎の中へ消えた。


3日後。


神界高校から自転車で20分ほどの総合病院。

入口に翔馬と与志野の2人が立っていた。


「行くぞ、与志野」

「ああ」


2人は受付を済ませ、田野のいる103号室へ向かった。


部屋に入ると、ベッドで起き上がっている田野が、弱々しく笑った。


「よお、亜里野……与志野……来てくれたんだな。」


ほぼ全身に包帯。

見るだけで胸が締め付けられる姿だった。


「ひでぇなこれ……ここまでやるかよ……」


「ハハ……これでも運が良かった方だよ……あいつら完全に殺しにきてたからね」


翔馬はお見舞いの品を机に置きながら申し訳なさそうにつぶやいた。


「悪かった田野……お前がこんな目に遭ってる時に助けに行けなかった。」


すると田野は、明るく笑う。


「ははっ、気にすんなよ。

それにこんな傷……治そうと思えばいつでも治せるから」


与志野が目を丸くする。


「治せる?どうやってだよ?」


田野は笑って手をかざした。


「まだ見せてなかったな、俺の祝福……」


田野の背後に青白い光が集まり、一人の少女が現れる。


「my only girlfriend(俺だけの彼女)」


驚愕する2人。


少女が包帯にそっと触れた瞬間、じんわりと光が広がり包帯の下の傷がみるみる塞がっていく。


「俺をサポートする祝福さ。

物を運んだり、守ったり、治したり……攻撃はできないけどな、けっこう便利だろ?」


「便利だけど……なんで襲われてすぐ治さなかったんだ?」


翔馬が驚きながらも尋ねる。


「意識が飛んでる状態じゃ、発動が安定しなくてね。」


なるほど、と2人が頷いたところで田野がお見舞いの袋の中身を見て顔を歪ませた。


「っておい翔馬!お前見舞いの品……料理用のラップじゃん!」


田野がツッコみ、与志野が額を押さえる。


「お前……まだそのセンス治ってねえのかよ」


「悪い……便利かなって……」


「 便利だけど病室で使う場面ないでしょ!」


「お前この前も青木先生の誕生日のプレゼントにラップ選んでなかったか?」


病室に、久しぶりに明るい声が響いた。


笑いが一段落すると、田野は表情を引き締めた。


「さて……本題だ。」


翔馬と与志野も、自然と背筋を伸ばす。


「YOU died一派の祝福についてだ。」


2人は息を飲んだ。


「YOU died一派はまず主力のYOU died、そしてサメ、左・腕の三人組だ」


「何か……全員変な名前してるよな」


与志野が首を傾げる。


「YOU diedの祝福は無から武器を生成する能力、サメは影を泳いだり、影を泳ぐ鮫を生み出せる能力、そして左・腕は相手の左腕を自由自在に操れる。」


翔馬が身を乗り出す。


「一番やばいのはYOUdiedだろ、学校内で平気で銃火器使ってきたし……完全にイカれてる。」


田野は重たい顔つきで言った。


「YOUdied達もあるが...…問題は他の何野四天王に勘付かれて漁夫の利を狙われる可能性だ。」


病室の空気が変わる。


与志野が低く問う。


「YOUdied以外の何野四天王って事か?」


田野はうなずいた。


「YOUdied一派だけなら1ヶ月猶予があるなら勝ちの目はあるかもだけど...…あいつらが出てきたらかなりやばい。」


翔馬は拳を固く握った。


「そいつら……一体何者なんだよ」


「YOU diedと同じく修羅場を潜り抜けてきた奴ら……抹殺斗、否定者F、無闘の三人だ。

はっきり言って実力はYOU diedと同格……いやそれ以上かもしれない」


「めちゃくちゃ強そうだな……じゃあなるべくそいつらに勘付かれ無いようにやるしかないか」


与志野の言葉に田野は小さく笑う。


「だな、ほぼ不可能だけど。」


「それでもやるしかねえ。」


翔馬の声は震えていなかった。


与志野も静かに立ち上がる。


「文化祭まであと三週間。

 死ぬ気で鍛えるぞ。」


病室の窓から、夕暮れの光が差し込む。


その光の中で、三人の決意は静かに、しかし確実に燃え始めていた。


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