13話 文化祭、終戦
YOU diedは砕けた瓦礫の上で膝をつき、血を吐きながらも必死に立ち上がった。
だが歩こうとした瞬間痛みで視界がぐらつき再び瓦礫に手をつく。
「くっ……」
(クソ……骨……いや内臓か……?まともに歩けねえ……)
身体の至る所から血を流しながら翔馬が立ち上がり、ゆっくりと歩き始める。
(...…来る....…!体制を何とか...….整えねえと...…!)
YOU diedはそれを睨みつけようとするが──
どれだけ睨んでも、胸の奥に響くものが消えない。
(なんでだ……こいつの目……似てやがる……)
翔馬が目の前に立った。
そして、何のためらいもなく手を伸ばした。
「……立てよ。
もう戦うとかじゃなくてさ……お前、死に急ぐなよ。」
YOU diedの心臓が跳ねた。
「.......は?テメェ……舐めてんのか。」
YOU diedの顔は強がるように歪む。
「勝負は……これからだろうが……俺は……俺はまだ...!」
その言葉を言い終わる前に口から血が噴き出る。
「ゴハッ……!ゴホッ……!ハァ……ハァ……クソ……クソ!」
「何となくだけどさ……お前別に戦い好きじゃねえだろ」
悔しそうに地べたに突っ伏すYOU diedに再び翔馬は告げた。
「何でお前がそんな事したのかは分かんねえけど....お前がまだ......罪を償う気があるなら.....この手を取れ。」
「……」
── 信じて.......俺の手を.......
何度も何度も思い出す最悪な記憶。
あの時。
あの時信じていれば。
あの手を取っていれば........
何か変わったのだろうか。
「……俺は人殺しだぜ」
「……殺したからだ。」
翔馬は痛みに耐えながらYOU diedに言う。
「絶対に逃がさない……罪を償って……ちゃんとやった事にケジメをつけるんだ。」
「……」
ドクドクと脈打つ心臓の鼓動の音。
同時に優大は思い出していた。
(あいつだけだった……)
──優大!お前も来いよ!
小さい頃から人見知りで学校で馴染めず、ずっと家に篭っていた優大を唯一誘ってくれた。
──無理だよ……俺、足遅いから……
──関係ねえよそんなの!鬼ごっこってのはな、足の速さじゃ無くて逃げ方なんだぜ、俺が教えてやるからさ!ほら!
(あいつだけが……)
差し伸べられた手を見る。
「けっ、いけすかねえ……ヒーロー野郎が。」
震えながら、ゆっくり手を伸ばす。
「言われなくても........もう逃げねえよ。」
指先が触れかける。
ズブッ……!!
瞬間。
YOU diedの腹を、後ろから鋭い手刀が貫いた。
翔馬の手が宙で止まる。
「……え」
YOU diedは目を見開き、ゆっくりと下を見る。
腹から生えた“第三者の腕”。
そして背後からあざ嗤う声。
「今更変われるとか思ってんじゃねえよ、お前みたいなクズが」
振り返れないYOU diedに、その声の主が顔を寄せる。
何野四天王の一人、抹殺斗だった。
右手には、YOU diedの部下、左・腕の片腕を鷲掴みにしている。
「……あ……?」
YOU diedの瞳が揺れる。
抹殺斗は腹に刺さった手刀を少しだけ捻った。
肉が裂ける音がした。
「がっ……!!抹っ......抹殺……斗……!!」
「お前……何感傷に浸ってんだよ。
逃げ?償う?……笑わせんな」
YOU diedは苦しみながら、震える声で問う。
「……サメ……は……?」
抹殺斗は首を持ったまま、無表情で答えた。
「殺したよ、当然だろ。
あいつらは駒だ、お前もな。」
YOU diedの表情から血の気が引く。
「ふっ……ふざけんな……!おっ……俺だけで……いいだろうが……あいつらは……関係ねえだろ!」
「全部中途半端なんだよ、生き様全部。」
抹殺斗がYOU diedの頭を掴んだ。
「蒼の気もろくに使いこなせず何野四天王の一人を名乗るなんてさ……フッ……笑わせんなよYOU died。」
「ッ……!うぅ……!!抹殺斗!!!」
YOU diedは最後の力を振り絞るように小さな拳銃を生成した。
「死ねぇぇぇぇぇぇ!!!!」
翔馬が叫ぶ。
「やめろ!!!」
抹殺斗は冷たい笑みを浮かべた。
「YOU died。」
パン!!
弾丸は空を切りYOU diedの腹から勢いよく手が引き抜かれる。
「ゴハッッ……!!」
YOU diedは顔を歪め拳銃を地面に落とし、自らも倒れた。
「おい!」
翔馬は必死に支えるように手を伸ばす。
YOU diedは今にも消えそうな声で、翔馬に囁いた。
「……亜里野……」
翔馬は戸惑いながらも答える。
「馬鹿、喋んな!今田野を連れて来るから……!」
YOU diedは首を振る。
そのまま翔馬の手に触れ、光が消えていった。
翔馬は声にならない声で彼の名を呼んだ。
抹殺斗は左・腕の腕を投げ捨て、翔馬に向けて冷たく笑った。
「さて……ゴミ掃除も出来た事だし……帰るか」
翔馬の拳が震える。
「......テメェ......待ちやがれ!!」
だが翔馬が立ち上がった瞬間──
「うぁっ.....!?」
地面が、視界が急速に歪み翔馬は地面へ叩きつけられた。
「限界か、まあ3人がかりとはいえ祝福を覚えて一ヶ月そこらでよくやったよ。」
抹殺斗が何処かへ歩き出す。
「またな、元気になったら殺し合おう。」
「待て……止ま......れ……」
パトカーと救急車のサイレンが鳴り響く。
翔馬とYOU diedは瓦礫の中で眠りについた。




