表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/67

第7話:共犯者(パートナー)


 バクスたちをりにして、俺たちは深層しんそうからの帰路きろについていた。

 行きは荷物持ちを演じていたが、帰りは違う。

 おそい来る魔物は、俺の【剛力】による一撃か、シルヴィアの影によって瞬殺しゅんさつされる。俺たちはピクニックのような足取りで階層かいそうを戻っていた。


「……ふぅ。そろそろ限界か」


 中層ちゅうそうあたりまで戻ったところで、俺は立ち止まり、こめかみを押さえた。

 ズキズキと脳が痛む。

 バクスから奪ったユニークスキル【音速加速ソニックアクセル】。やはり、こいつは少し「クセ」が強すぎた。


「カナメ様、顔色が真っ青ですわ。そろそろ『排出パス』してしまいましょうか」


「ああ、頼む。オークの脂身とバクスのスパイスが混ざって、最悪の食い合わせだ。吐きそうだ」


 俺たちは人気の少ない小部屋に入り、腰を下ろした。

 シルヴィアが俺の胸に手を当てる。


「では、いただきますね。……んっ」


 宿屋やどや以来、二度目となる口づけ。

 シルヴィアのくちびるが重なり、俺の体内から暴れ回るエネルギーが吸い出されていく。

 相変わらず、脳の中身を直接撫でられるような奇妙な感覚だ。


「……ん……ふぅ……」


 くちびるはなしたシルヴィアが、恍惚こうこつとした表情でほほめた。


「凄い……。これがユニークスキルの味……。濃厚のうこうで、ピリピリして……最高です」


「味わってる場合か。とにかく。……ありがとう、だいぶ楽になった」


 頭痛が引いていく。これで一安心だ。


 そう思って立ち上がろうとした俺を、シルヴィアがせいした。


「待ってください、カナメ様。……この『音速加速ソニックアクセル』と、さっき食べたオークの『剛力』。風味が似ていますわ」


「風味?」


「ええ。これなら、お腹の中で混ぜ合わせられるかもしれません。……試してみてもよろしいですか?」


 シルヴィアが上目遣いで尋ねてくる。

 ――スキルの合成。

 昨日の夜、宿屋で彼女から、スキルを合成が出来るという話を聞いてはいたが、試すのはこれが初めてだ。


「ああ、任せる。失敗しても文句は言わないさ」


「あら?ご安心くださいませ。別に材料にしたスキルがなくなるわけではございませんわ。スキルとは物体として存在しているわけではございませんから。()()()()の融合でございます」


「なんだかよく分からないが、とにかく頼むよ」


「ふふっ、腕によりをかけますわね」


 シルヴィアが両手を組むと、彼女の手の中で赤と青の光が混ざり合い、紫色のスパークを放ち始めた。

 彼女の体内という「」を使って、二つの異なるスキルを融合ゆうごうさせる。

 暴食の眷属(プレデター)でも最上位の個体でしか出来ない芸当げいとうらしい。

 俺が【万能強奪スキル・テイク】して、シルヴィアが【融合ゆうごう】させる。

 これこそが、彼女と俺だけの「共犯者」としての力。


「美味しくできましたわ、カナメ様」


 シルヴィアの手のひらには、まるで宝石のように輝く光の球体が浮かんでいた。


 さっきまでの荒々(あらあら)しい「生肉」のようなスキルとは違う。甘く、芳醇ほうじゅんな香りがただよってくるようだ。


「……あーん、してくださいますか?」


「おいおい、流石さすがに一人で食べることくらいは出来るさ」


「いけませんっ!王子様(おうじさま)のお口にわたくしが運ぶことこそが、一番のスパイスですから」


 俺は苦笑くしょうし、彼女に言われるがまま、その光を口に含んだ。

 舌の上で転がした瞬間、けるように喉の奥へとすべり落ちていく。


 ――美味うまい。


 バクスの薄汚うすぎたな執念しゅうねんや、オークのけもの臭さは綺麗きれいサッパリ消え失せている。


 あるのは純粋に濾過ろかされた、上質な魔力の旨味だけ。

 これぞまさに、至高のフルコースだ。


「……軽いな」


 さっきまでの、脳を万力まんりきめ付けるような重圧がない。  俺が捕食った時よりも、強い魔力を感じる。

 恐らくシルヴィアの魔力も合わさったことにより、スキル自体の威力は上がっているはずなのに、負荷ふか激減げきげんしている。


「ええ。バクスの手癖てくせといった『不純物ノイズ』は、わたくしがすべて消化しておきましたから」


 シルヴィアがぺろりとくちびるめる。


「今のそれは、純粋じゅんすい魔術式まじゅつしきとして圧縮・最適化された状態です。これなら、カナメ様のメモリを圧迫することもないでしょう?」


「なるほど……。ただ排出パスするだけじゃなく、『調理』もしてくれるってわけか」


 奪ったままの「生のスキル」は不味くて重いが、シルヴィアを通せば「栄養」だけを美味しく摂取できる。それどころか、シルヴィアの魔力で元のスキルよりも()()()を高めてくれる。

 やはり彼女は、俺にとってかせない共犯者パートナーだ。


『――スキル合成完了。オリジナルスキル【音速の重砲(ソニックキャノン)】を獲得しました』


 【音速の重砲】

 効果:音速移動の運動エネルギーを、攻撃力へと一転換して叩き込む必殺の一撃。


「すげぇな……。これなら、ドラゴンのうろこだって素手すででぶち抜けるぞ」


「ふふっ、わたくしの愛の結晶けっしょうですもの。大切に使ってくださいね?」


 最強の矛を手に入れた。


 俺は拳を握りしめ、確かな手応えを感じていた。


   ◇


 夕日が沈む頃、俺たちは【ルルデン】の冒険者組合(ギルド)に戻っていた。  ボロボロの服に、疲労困憊(ひろうこんぱい)の表情。いかにも完璧な見た目だ。

 俺たちはフラフラと受付カウンターへ向かった。


「あ、あれ? アンタたち……生きてたの?」


 昨日Fランク認定をした女性職員が、幽霊ゆうれいでも見るような目で俺たちを見た。


「バクスさんのパーティと一緒にダンジョンへ行ったって聞いたけど……バクスさんたちは?」


「……うぅ……」


 俺は拳を震わせ、涙声を作る。


「し、死にました……。深層で、魔物の巣(モンスターハウス)遭遇(そうぐう)して……」


「えっ!?」


「バクスさんが……『俺がおとりになるから、お前たちだけでも逃げろ!』って……最期さいごまで立派に戦って……!」


 俺の迫真はくしんの演技に、ギルド内がこおりついた。


 数秒の静寂(せいじゃく)の後、爆発ばくはつしたようなさわぎが巻き起こる。


「おい嘘だろ!? あの『疾風』が全滅だって!?」


「深層で魔物の巣(モンスターハウス)!? すぐにギルドマスターを呼べ!」


「騎士団にも連絡だ! Aランク冒険者たちが全滅するような魔物の巣(モンスターハウス)だ!もしかしたらダンジョン外まで魔物が溢れてくるかもしれねぇぞ!」


 ギルド中が蜂の巣をつついたような大騒ぎになる。

 当然だ。街の最高戦力が消えたのだから。

 受付嬢も顔面蒼白で立ち上がり、奥へ走ろうとする。


「ちょ、ちょっと待ってて! 今マスターを呼んでくるから、詳細な報告を……!」


「す、すみません……俺たち、もう怖くて……少し休ませてください……!」


「え? あ、ちょっ……!」


 パニックで指示系統が麻痺まひしている今がチャンスだ。


 俺はシルヴィアの肩を抱き、混乱する冒険者たちの隙間すきまって出口へと急いだ。


 誰も、Fランクの荷物持ちごときには構っていられない。


 これで「完全犯罪」の成立だ。


   ◇


 ギルドを出た頃には、すっかり日が落ちていた。

 喧騒けんそうが遠ざかる。夜風が心地よい。


 俺は大きく伸びをした。


「さて、と。これでこの街での用事は済んだな」


「ええ。バクスという大きな獲物も食べ尽くしましたし、そろそろ次の狩場へ?」


「ああ。騒ぎが落ち着く前にずらかるぞ。この街のダンジョンじゃ、もう物足りない」


 俺は夜空を見上げた。


 手に入れたのは、最強への切符と、最高の相棒。


 だが、これはまだ始まりに過ぎない。

 この世界には、まだ見ぬ強力なスキルを持った勇者や、魔王軍が蔓延はびこっている。


 俺の視界に、月明かりに照らされたシルヴィアのステータスが映る。


 その【強奪可能】の欄には、まだ『???』と表示されている部分が多い。

 俺が彼女のすべてを知り、彼女を満たせるほどの主になるには、まだまだ力が足りない。


「行くぞ、シルヴィア。世界中の理不尽ごちそうを、俺たちで食いくす旅だ」


「はい。どこまでもおともしますわ――わたくしの最強の王子様(おうじさま)


 俺たちは並んで歩き出す。


 二人の影が、月明かりの下で一つに重なっていた。



(『第一章 異世界転生者と神話の暴食姫』 完 )




【第一章 完結!】

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


明日からは毎日投稿になります!


第二章からは、いよいよ「最強の家族」の結成に向けて物語が加速します。

「ケモ耳の娘」や「口の悪い妖刀少女」など、魅力的な新キャラクターも続々登場しますので、絶対にお見逃しなく!


最後に、作者からのお願いです。


もし「面白かった」「続きが読みたい!」「書籍化してほしい!」と思っていただけましたら、 ページ下部(広告の下)にある【★】マークをタップして、評価をお願いいたします!


読者の皆様の「★」や「ブックマーク」が、ランキングを駆け上がるための唯一の燃料です。 【★★★★★】(星5つ)いただけると、泣いて喜びます!


引き続き、全力で更新していきます!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ