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万能強奪で餌付け無双 ~Fランクの俺、封印されていた神話級美少女を助けたら「最強のツガイ」として溺愛されました。邪魔する勇者や聖女は、家族みんなで美味しくいただきます~  作者: 式条 玲
第一章 異世界転生者と神話の暴食姫

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第2話:封印された神話の暴食姫


 スライムを処理した後、俺は洞窟(どうくつ)の奥へと進んでいた。

 道中、何度か魔物の気配を感じたが、今の俺には視界に頼らずとも周囲を感知出来る手段を得ていた。天井に張り付いていた巨大なコウモリ――【ブラッドバット】を見つけたのは僥倖(ぎょうこう)だった。


 【対象:ブラッドバット】

 【強奪可能スキル:超音波、魔力感知、吸血】


 俺の目には、あいつが「飛ぶ宝箱」に見えていた。俺はスライムから奪った【酸弾】を(はな)ってコウモリを地面に叩き落とし、暴れるその体に容赦(ようしゃ)なく手を触れた。


『――スキル【魔力感知】および【超音波】を強奪しました』


 生温かい血液を(すす)ったような、鉄錆(てつさび)の味。

 魔物のスキルだから、不味(まず)いのか、(ある)いはスキルというものが、総じて不味(まず)いのか。

 コウモリが動かなくなるのと同時に、俺の視界が(ひら)けた。

 周囲に(ただよ)う「魔力の流れ」と、()ね返る「音の波」が、地形を3Dマップのように脳内に描画(びょうが)しているのだ。


「……ん? なんだ、この流れは」


 【魔力感知】が、異常な反応を捉えた。

 ダンジョンの最奥から、(けた)違いの魔力が奔流のように(あふ)れ出している。

 スライムやコウモリのような泥水めいた魔力ではない。もっと純粋で、濃密な……。


 まるで、そこに「魔力の太陽」があるみたいだ。

 俺はその匂いに惹かれるように、足を速めた。


 やがて、空気が一変した。

 腐臭(ふしゅう)と湿気に満ちていた洞窟が、(なめ)らかに整えられた人工的な石畳(いしだたみ)へと変わる。

 そして最奥の広間に足を踏み入れた瞬間、俺はその光景に息を飲んだ。


「なんだ、これ……」


 広大なドーム状の空間。


 その中心に、巨大な紫水晶(アメジスト)の塊が鎮座していた。


 いや、ただの水晶ではない。


 水晶の中には――ひとりの少女が閉じ込められていた。


 月光を()んだような銀色の髪。透き通るような白い肌。

 豪奢(ごうしゃ)漆黒(しっこく)のドレスを(まと)い、両手を胸の前で組んで眠るその姿は、この世のものとは思えないほど美しく、そしてどこか禍々(まがまが)しかった。


 俺の視界に、警告色のような赤いウィンドウが浮かび上がる。


【対象:神喰らいの魔神の封印】

【ランク:神話級(ミソロジー)

【強奪可能:封印術式の構成魔力】


「神話級……?この紫水晶(アメジスト)が封印術そのものということか……?」


 表示された文字に冷や汗が出る。

 だが、俺の視線はすぐに、封印の奥にいる少女のほうへと移った。


【対象:シルヴィア】

【種族:月蝕の神喰らい(エクリプス・イーター)(封印状態)】

【強奪可能:???(測定不能)】


 測定不能のエラーが出るほどの化け物。関われば死ぬ。俺の生存本能がそう警鐘を鳴らす。

 だが、その寝顔はどこか寂しげで――かつて社会の歯車として使い潰され、孤独に死んだ自分と重なって見えた。


「……こんな暗い場所に一人きりじゃ、目覚めが悪いよな」


 俺は無意識に、水晶の表面に手を触れていた。

 助けようと思ったわけじゃない。ただ、その美しさに触れたかっただけかもしれない。


 だが、俺のスキルは「極上の獲物」を見逃さなかった。


『――神話級結界【絶対封印アブソリュート・シール】を検知』

『ユニークスキル【万能強奪(スキル・テイク)】を発動。術式構造を解体、および捕食を開始します』


 バキィッ!! と高い音が響いた。


 俺の手が触れた場所から、魔法陣を構成する光の文字が、俺の手のひらへと吸い込まれていく。

 数百年、あるいは数千年もの間、彼女を縛り付けていた絶対的な鎖が、俺という「捕食者」によって咀嚼されていく。


「ぐ、ぁ……ッ!?」


 熱い。痛い。全身の血管が膨張する感覚。

 体が爆発して肉片にでもなってしまいそうだ。

 だが、俺の脳髄(のうずい)を駆け巡ったのは、死の恐怖ではなく――極上の陶酔(とうすい)だった。


 甘い。

 とてつもなく甘く、濃密で、芳醇(ほうじゅん)な魔力の奔流(ほんりゅう)

 数千年の時を経て熟成された最高級の神酒(ネクタル)を、喉の奥へ直接流し込まれているようだ。


「は、ぐ……ッ、ぁ……」


 許容量を超えた快楽に、背骨が震える。


 全身が焼き切れる寸前の熱量。だが、俺の【万能強奪(スキル・テイク)】は、そのすべてを一滴残らず飲み干し、俺の肉へと変えていく。

 コップ一杯の水しか入らなかった俺の器が、強引に湖サイズまで広げられていくような感覚。


 やがて、最後の一滴まで味わい尽くした時――水晶が音もなく霧散(むさん)した。


 支えを失った少女の体が、重力に従って傾く。

 俺は荒い息を吐きながら、慌ててその細い体を受け止めた。


「……ん……」


 長い睫毛(まつげ)が震え、ゆっくりと(まぶた)が開かれる。


 そこにあったのは、宝石のような紫色の瞳。

 眠りから覚めたばかりの彼女は、消滅した魔法陣と、飛散した紫水晶(アメジスト)、そして自分を抱きとめている人間(おれ)を見て、数秒沈黙し――。


「……(わたし)の呪いを食べたの?私を触っても平気なの?」


 鈴を転がすような、美しい声だった。


「……?ああ、特に痛みはないぞ」


「勇者たちが命がけで(ほどこ)した『絶対封印アブソリュート・シール』を、味わうように……跡形もなく?」


「あー……結果的にそうなったみたいだな。紫水晶(アメジスト)に触ったら、勝手にスキルが発動して」


 俺が弁解(べんかい)しようとすると、彼女は俺の(ほほ)に冷たい手を添え、至近距離で瞳を覗き込んできた。

 値踏みではない。それは、畏怖(いふ)と歓喜が混じったような、熱っぽい視線。


「嘘よ。ただの人間ごときに、あの膨大な魔力の塊は飲み込めない。触れた瞬間に魂ごと蒸発するのがオチだわ。(わたし)にだって食べれなかった神話の封印なんだもの」


 彼女は艶然(えんぜん)と微笑んだ。

 それは魔性の笑みでありながら、どこか求婚者のような甘さを(はら)んでいた。


「でも、貴方は平気な顔をしている。あれだけの『極上の味』を飲み込んで、なお(たましい)に余裕があるなんて……」


「……余裕なんてないぞ。死ぬかと思った」


「ふふっ、謙遜(けんそん)しなくていいわ。(わたし)には分かるもの。貴方、人間種に見せかけているけれど、(わたし)よりもずっと『上位』の捕食者でしょう?」


 彼女――シルヴィアは、俺の首に腕を回し、うっとりと身を(ゆだ)ねてきた。



「認めましょう。貴方様が(わたくし)の運命の王子様なのかもしれません。……我が主、御名(みな)をお聞かせ願えますか?」



「……カナメだ」


「カナメ様。……ふふ、素敵な響きです」


 彼女は婀娜(あだ)っぽく(ささや)くと、ゆっくりと俺から身体を離した。

 そして一歩下がると、美しい漆黒のドレスをつまみ、(うやうや)しくカーテシーをしてみせた。表情はどこか小悪魔的だった。


 どうやら俺は、とんでもない怪物の封印を「美食」として平らげ、あまつさえ封印されていた怪物から、「もっとヤバい怪物」だと勘違いされてしまったらしい。

 だが、体の中で渦巻(うずま)芳醇(ほうじゅん)な魔力を感じる。あの封印結界が、俺に膨大な魔力を与えてくれたのだ。


 ……この俺なら、本当にどんなやつが相手だって倒せるかもしれない、と。




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