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あれから、新作の『ブラックジャック』の評価を検索した。


少ないながらも長文で、参考にしている人が沢山いた。


大体は、まずまずで、でも、ここが違う、本家の方が凄い。と言う内容だった。

昔の絵は最高で、そこからどう違うかを解説していた。

少年紙の拍子にブラックジャックが載っていた。

でも、私は違うと思った。

21世紀になって、昔、世話になった少年紙の表紙を飾る絵を、Gペンとポスターカラーで描いたような、そんな絵を手塚先生は描くだろうか?


私は手塚先生にあったことはない。

私の頭にいるのは、当時の大人にインプットされた聖人の手塚治虫である。

私のお父さんの理想のインテリなのだ。


昭和の理想の知識人の姿そのものだ。

だから、自分が一番先端に居たいと願っている。

最先端のツールを使い、誰も見たことのないシックな色合いと質感。

憧れずにいられない、特別感のある素敵な衣装…


今の少年紙を騒がせる、作家と肩を並べても見劣りしない子供たちの憧れの最先端…


Gペンとポスターカラーで描いたような、昭和風味の表紙絵なんて。


子供時代、竹下夢二をお婆ちゃんに自慢された事を思い出した。

確かに、きれいではある。でも、限られたおこずかいを差し出してまでは欲しいとは思わない。

あれは、お婆ちゃんの好きな絵。そう思った。


お婆ちゃんの好きな漫画…


少年誌に久しぶりに載ったブラックジャックをそう呼ばれたら、先生、きっとがっかりするだろうな…


私は思ったけれど、違う考えの人も沢山いる。

感想の中には、漫画の線の太さまで気にする人がいたんだもん。

大雑把な私には、ため息しか出なかった。


そうして、こんな熱心な読者が作品を守ってらしたのだと思うと、とても、改変なんて無理だと絶望的になる。


それでも…私は改編したい。手塚治虫の…昭和の職人魂で、最先端のツールを使って、最高の作品を!


自分で挿し絵を描こうとして気がついた。

本当は、先生たちはもっと描けるけれど、諸事情であの表現にしたのだと。


戦争で、日本は一度、国がつぶれたのだ。

借金とやけ野原、そして、1ドルは360円くらいした。

技術も無かった。ボールペンのインクに黒が登場するのだって、戦後の話なのだ。

土管で暮らす人が漫画で登場するけれど、それも、全くのフィクションではない。

空襲で焼けた東京から始まる物語なのだから。


こんな時代から生まれたんだから、貧しい子供にも手が届くように、印刷や紙質なんかの経費は減らさないといけない。

絵の表現だって、出来るだけ印刷しやすい分かりやすい線で、ページ数を増やさないように沢山の情報を詰め込む必要があった。


あんな、1ページを丸々一コマを使うなんて、随分と後の豊かな時代の表現になる。


もっと描ける、描きたいものがある…


今、この豊かな時代なら、もっと、もっと、こんな事をしたい!


私の心の手塚治虫は叫ぶのだ。それは、多分、私の父の心の叫び、でもあるんだと思う。



とはいえ、あの感想を見ていて思った。

公式の人達は、改変なんて出来ないと言うことを。

それは、商業作家も同じだと思う。

余程でなくては、改編は叩かれるのだ。


改変すると言うことは、古いファンに見限られる事を前提に考えないといけないんだろう。

そして、それば、新しいファンを獲得する努力をしないといけない、と、言うことだ。


それは…真面目にやるのは、1からものを作るより、長く大変なことのような気がして…頭が痛くなってきた。


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