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 強風に煽られながらも公爵はじっとイベリアを見つめていた。


暗闇でよく見えていなかった鼻筋の通った作り物ののような綺麗な顔が月に照らされて思わず口からかっこいいと言ってしまいそうになる。なんでこんなにかっこいいんだ。


「イベリアと私は、、、。」


「いっ。やっぱりいいです。ごめんなさい。」


風の攻撃でびくともしなかった公爵が自分の落ち込む顔でたじろぐ姿を見て、自分が目覚めてから使ってきた魔術があまり意味を持たないことに気が付いた。こんなことは魔術師にとって屈辱的だ。

意味のない風の魔法をやめてそれからどうしようかな。


イベリアから魔法を取ったら何もない。この人の前で私は無能なんだと思うとイベリアは涙がこぼれた。


(私、また泣き虫イベリアだ。)


泣き虫イベリア。孤児院にいた頃から街の子供にそう呼ばれていた。

引っ込み事案な性格は施設の先生に面倒臭く思われて泣き止むまで三食抜きはよくある事だった。

たまに出る甘いお菓子も先生は私に内緒で食べていたのも知っている。

その事実にまた泣き虫になってご飯がもらえないから甘いのを嫌いになろうと思って

それから魔法の事ばっかり考えて頑張って、それからそれから。。


なんで嫌な事ばかり思いだすのだろう。



もしかしたら代償で良い思い出の部分が消えたせいで嫌な記憶が引き出しやすくなっているかもしれない、、。。


泣き出すイベリアに気を遣って距離をとっていた公爵は思わずかけよる。


「イベリア、どうしたの?どこか痛い?」


嗚咽で上手く話せず首を横に振るだけのイベリアに公爵は優しく宥めた。


「イヴ、落ち着くんだ。大丈夫だから。」


イベリアの身長に合わせて屈んだ公爵がポンと頭に手を乗せてよしよしと撫でてくるので呼ばれた事のないイヴという愛称の事実に驚き涙がピタリと止まった。


公爵はコップに水を灌ぐとまた再度イベリアから離れてイベリアと公爵の距離の丁度中間にある大きな窓の縁にコップとハンカチを置いた。


この人もこの人だ。どこまでも優しいからものすごくやりづらい。魔法が使えないのはきっとこのせいだ。


居たたまれなくなったイベリアは窓に向かって走るとコップの水をがぶ飲みして床にそっと置いた。


「あ、あの!もう私のことは忘れて下さい!」


そう言い残して、大きな月に向かって窓から飛び出した。


「は?!何言ってるんだ、イベリア!」


公爵はすかさず窓から飛び出していくエルダを捕まえようとしたがワンテンポ遅く、窓から外を見渡してもイベリアの姿はなかった。


とにかくここから東へ。


夜風が冷たいはずなのに思い出すたび公爵が触れた頭が熱く沸騰しそうになった。


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