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大陸は古来から魔術師が王から雇われてドラゴンを討伐して国を守ってきた。ドラゴンを討伐する毎に多額の報酬を得て王に仕えた魔術師は貴族と呼ばれて建国当初から国を支えてきた歴史がある。
現在は魔術師としての影響力を強めるために他国の人間と政略結婚を繰り返したり、家門を途絶えさせない為に養子を迎えることをしていたため現在では貴族で魔術を使える者はほぼいないが国境を日々守ってくれている。
15年前突如、山一つ分ともいわれる大きさのドラゴンが多数出没し街を襲った時も歴代最大ではと思われるほどの巨大ドラゴンを前にして貴族の騎士団が頑張ってくれたおかげで大陸のおよそ四分の一は壊滅で済んだのだ。
そんな魔術師達に腐敗貴族と一喝したのがリノ=ヴェルフェリング。
リノ=ヴェルフェリング公爵は現在のゼノン国王の弟にあたる人物で元々は側室から誕生したゼノン王子よりも正妻から誕生したリノ公爵の方が王位継承位の順位が高く、生まれた時からリノ公爵が次期国王と決まっていたが政争に負けてゼノン王子が王に就いた。2人は仲が悪いことで知られている。
貴族に喧嘩を売ったことで大陸の上流国民に嫌われているためとあるギルドでは多額の懸賞金の依頼があったと話題になった。
彼は魔法が効かない体のギフトを悪用して貴族に紛争を仕掛けて魔法なんてものはないと一瞥。
一族を血祭りにし、段位を取り上げる生粋の魔術師嫌いとしても知られているため貴族に嫌われている。
自身も資源発掘や民間軍事に携わる一方で資源開発や武器製造をしている一家などに無償で段位を与えどんどん大規模な企業を増やし、軍事力を高めた。最新の武器を試したいからと言って老舗の大手武器屋に大砲を発射して店を全壊させた話は魔術師達を震えあがらせた。
兎に角魔法というものを一切信じず、国内最強とも言われる黒衣の部隊は魔術に一切屈しない。
何かと新聞の一面に取り上げられれば王と不仲の。で始まり建国当初から居座る魔術師達に王位から引きずり落とされたのが気に食わなかったのだろう。でおわるのがリノ=ヴェルフェリングのニュース記事で定番化している。
(王と不仲の公爵は目の前にいる大魔術師候補の私を殺してもおかしくない、建国当初から居座る魔術師達に王位から引きずり落とされたのが気に食わなかったのだろう。)
逃げよう。ゼノン王子に公爵と接触した情報が流れれば両者の敵になってしまう。
イベリアにとっては最早悪魔と呼ぶにふさわしい男を恐る恐る見上げると
血祭りにする冷酷人間とは思えないほどやつれていた。
白い肌に濃い紫のクマやあの冷血が泣きはらしたのだろうか?目の回りが赤い。
見ていて痛々しい。なと思ってしまった。
なんだか逃げれそう。否、罠か?
罠だとしてここまで小賢しいと手段を択ばない姿勢が余計に恐ろしい。
イベリアがシーツを引っ張り距離をとると公爵は慌てたように手を掴んだ。
「イベリア、まって」
「無理ですっ!」
本当に待ってほしいのか?割れ物を触るように手を握って指の腹で撫でてくる目の前の男は今でも泣き出しそうな顔をして蚊一匹も殺せない弱弱しい子犬のようだった。