第二十六章『エピローグ』
あれから気づけば朝になっていて、目を覚ますと心配そうに僕と本山さんの顔を覗いてくるゼミ仲間たちの顔があった。
なんで、こんなボロボロでいまにも崩れそうな建物の中にいたんだと訊ねられると、僕は探検をしてたら大雨が降ってきて、それで帰れなかったんだと言い訳をしておいた。本当のこと――いや、本当のことだったのかさえ、あやふやだったが、そんなことをいってもしょうがないと思ったのだ。
あとは若い男と女のすることだということで、それ以上の追求はなかった。
それから旅館に帰ると、慌ただしく帰る支度にとりかかった。
バスに乗るときは多くの村の人たちがやってきて見送ってくれた。そのとき、笑顔の相田美崎を見かけたことは補足しておくべきだろう。
それから僕はバスの中というわけだ。僕の隣には本山さんがいて、僕の右手を強く握りしめてくる。彼女は決して僕のほうを見ようとせず、始終俯いたままだった。
僕は神名村で起こったことを回想してみた。あれは本当にあったことだったのか、それともただの夢に過ぎないのか。それはわからない。
きっと、あの地は人間の常識の範疇外にあるのだろう。夢とか現実とかの境がなくて、そのあり得ない現象に対して、僕らに対処法はなく、ただ怯えるしかなかった。
結局のところ、現象とは理解することによってしか説明のできないものなのだ。つまり、理解できないモノに対して、僕らは無防備で、あまりに脆い。
ふと、本山さんの逆方向に視線を移す。そこには田森がいた。彼は手にペンを持って、今回の旅行についてのアンケートを書いている。
ふと、本山さんの握る手に一層の力がこもる。
バスにいるのは、僕のゼミ生の仲間たちだ。彼らは僕の日常そのものである。そのなかで、田森のペンを持つ手が不気味に震えていた。
―了―
読了お疲れさまです。
しばらく過去作品を投稿する予定ですので、縁がありそうでしたらまたお願いします。




