感情ジェットコースター
*梨花視点
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いきなりでびっくりした。いや、そんなのお姉ちゃんにまとわりつくクソ野郎と思ってるに決まってんじゃん!
あんな下心丸出し野郎が隣に住んでたらお姉ちゃんが心配で夜も寝られんよ!
悔しいけど、前に確かめた反応から見てお姉ちゃんは隣人の千堂のことが好き。
それは悔しいけど、紛れもない事実……まじで悔しいけど!
だからこそ、少しほわほわしたところがあるお姉ちゃんをあのクソ野郎から守るためにも、こうやって何度も何度も休日返上で通っているんだ。絶対あいつ、お姉ちゃんが少しそれっぽい雰囲気出したら襲いかかるもん。そんな、ありとあらゆるゲスを煮詰めたような目をしてたもん!(実際はチキって襲えない)
そんな想像ができてしまうほど……癪だけど、あいつにメロメロなお姉ちゃんだ。正直いつ付き合いました報告を受けても良いような心持ちではある。だけど、今の質問はなに?「どう思ってる?」って、どういうこと!?もしかして、来る度に質問しすぎてあいつの事を嫌ってるのがばれた?それとも未来のお義兄さん前提のやつ!?それだけは絶対に嫌なんだけど!!!!
……考えてもわからん。よし、にごすか。
「んー、私はあんまり話したことがないからよくわかんないかな。お姉ちゃんから見たらどんな感じなの?もしかして、彼氏だったりする?」
我ながらこの切り返しは良くないか?私の主観的意見は隠しつつ、お姉ちゃんと千堂の今の立ち位置を聞き出すことが……
「……私、昨日彼の部屋に泊まった」
……
…………
……………………
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……………………………………………………………………………………は?
んんっ!?え?あ?ど、ど、どういうこと!?
お姉ちゃんから見たあいつの印象と関係を聞こうとしたのに、なぜか衝撃の事実をぶち込まれたんだけど!あと、なんでそんなにやってやったでぇ!みたいな顔してるの!?意味わかんないよ!?
「えーと、お姉ちゃん?」
「それに、一緒に寝た」
「お姉ちゃん!?!?」
「朝ごはんも作った」
「ちょ、ストップストップ!」
い、一体何が起こってんの?あいつの事を話すといつもとろけた顔なのに、今日はなんというか危機迫っているという顔だ。それに、何故かあいつと関連した行為を自慢するかのように……どしたん!?
「どうしたのお姉ちゃん、何かあった?……あ、もしかして昨日あいつに何かされたの!?」
「え?あいつって大地くん?昨日は、特に、何も、されなかった、わ……」
「お姉ちゃん……」
……えー、何もされなくてなくて落ち込むんかい。あ、まさか、泊まったのに何もされなかった焦燥感から暴走状態になってるの?そんなに好きなの?あいつが?一体どこにそんな魅力が……
ここは踏み込んで、ここまで好きになったきっかけを聞いてみるか。そして、お姉ちゃんがあいつの変なところにひっかっていたら私が止めれば良いし、もし本当に良い人なのであれば私だってこれ以上野暮なことは、しない。多分。
「まぁ、それはさておき。お姉ちゃんって千堂さんのこと、好きでしょ?」
「えっ!?」
……この時は軽い気持ちだった。
「見てればわかるよ!好きなんやろ〜?」
「え、そんなに!?ま、まぁ、好き、かな〜?」
……本当に軽すぎたのだ。
「わかるわかる。で、どんなところが好きなの?」
「大地くんの好きなところ?えーっとね……」
過去に戻れるのならこの時の私をぶん殴ってやりたい。
まさか、まさか、まさか、ここから7時間以上ノンストップで惚気られるとは思ってはいなかった…………
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「って感じかな〜、それでね〜……」
「あ、あぁ、うん。千堂さんかっこいいね……ほんと……あ、お姉ちゃん少しお手洗いに行っても良いかな……もうすぐ16時になりそうだし……」
「え、ほんとだ!?ご、ごめんね、こんな時間まで。じゃあお昼ご飯も作ろうか?何か食べたいものはある?」
「いやー、ないかな……」
やっと私の声が耳に入ってくれた……まじで、まじで軽い気持ちで聞くんじゃなかった。ざっと数えて50回以上は途中で止めようとしたけど、聞く耳を持ってくれなかった。もう最後らへんは、ほとんど一人で喋ってたし……
途中から脱線して純度100%の惚気語りマシーンと化してはいたが、肝心のお姉ちゃんと千堂の話は聞けた。結論から言うと、結構ええこと言うやんというのが本音だ。正直、本当にあいつが?と思うところはあるが、まぁ合格といって良いだろう。惚気は疲れたけど……
でも、そうか。よく考えたら、あんな美少女のお姉ちゃんと一夜を共にしたにもかかわらず手を出さない誠実さ、そしてお姉ちゃんが惚れた優しさ。結構、私が理想としていたお姉ちゃんの彼氏像とぴったりではないか。
……もう認めるしかない。彼なら、千堂さんなら、私の大切なお姉ちゃんを任せても良いのかもしれない……うぅ、やっぱりそう考えると少し、いやかなり寂しい!
でもそれ以上に、お姉ちゃんが幸せそうで嬉しい!あんなに頑張ってたお姉ちゃんだからこそ、絶対に幸せにならないといけないんだ!
居間へ戻ると、お姉ちゃんはまだ料理をしていた。後ろ姿も綺麗。本当に自慢のお姉ちゃんである。
「……ねぇ、梨花?」
お姉ちゃん観察をしていると、背を向けたままそういってお姉ちゃんが話しかけてきた。
「んー、どした?」
「それでね、梨花は、その、大地くんのこと……」
ピーンポーン
「あ、えと、はーい」
そこまで言いかけるとお姉ちゃんは料理の手を止めて慌てて玄関へと向かった。
一体何を言おうとしていたんだろう?でも、良いなー千堂さんは。私が男性なら絶対お姉ちゃんと付き合いたい。千堂さんが本当に羨ましいよ……
そう考えながら、テレビを見ていたら居間への扉が開きお姉ちゃんが入ってきた。
だが、その顔は先ほどまでの惚気全開の楽しそうな表情ではなく、まるで能面かと思わせるような、なんとも言えない表情へと変わり果てていた。
「ど、どしたのお姉ちゃん」
一体この短時間に何が……?そう考えていたら、お姉ちゃんは口を開き
「……大地くんとエリーさんが腕を組みながら……部屋で、ヤルって……部屋で……ヤる……?」
そう呟きながら、お姉ちゃんは奥のベッドへと消えていった。
エリーさん?腕を組んで?千堂さんが部屋に連れ込んだ?ヤる?????
頭の中は一瞬でクエスチョンマークだらけになったが、確実に言えることはあるよね。
前言撤回。あいつ、絶対に許さん!!!
次回投稿日はTwitterで報告します。
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