家宝は寝てMATE!
ガタン
朝9時。眠い目をこすりながら少し遅い朝ごはんとして、缶コーヒーを自動販売機にて110円で購入。そしてカポッとプルタブを開け、まるでひとっ風呂浴びた後のコーヒー牛乳のようにゴクゴクと一気に飲み干す。
……苦い。
だが、目は覚めた。
実家を離れて早数年。このたった数年で俺にとっては『朝ごはん』という時間は失われているといっても過言ではない。こんな朝早くからご飯を作るなんて正気の沙汰ではない。本当に実家の母さんには感謝しかない。まじで。
だが今日の俺はいつもとは違いお腹に、いや、全身に確かな満腹感を感じながら一歩一歩大地を踏み締めてアルバイト先へと向かっている。
そう、愛する愛する超絶美人天使もとい全人類の推しこと榎本李梨沙が!作ってくれたのだ!朝ごはんを!うん、朝ご飯を!ASAGOHANN!Breakfast!Sushi!Soba!Woohoo!!!I LOVE JAPAN!!!
……ケフンケフン、とにかくだ!朝起きるとテーブルにはゲテモノ料理ではなく、しっかりと美味しそうな和食が二人分作ってあったのだ!そしてその横には
『急にこんな事になってごめんなさい。私は用事があるから先に帰るね。またご飯をもっていくからその時はよろしくね 李梨紗』
といった内容の書き置きも添えられていた。はい、家宝。
「……ふぅ」
えぇ。……ゆうべはお楽しみでしたよ、本当に。
俺は気付いたら寝ていたらしく、ピロートークも残念ながら曖昧にしか覚えてはいないが、あの書き置きは間違いなく家宝にしよう。うん、家宝。額縁もいいものを購入だ。まぁ、もうすでに携帯の写真フォルダの300枚分くらいは、書き置きをあらゆる方向から撮ったもので埋まっているけどな!
期せずして推しとお泊まり会が実現する事になるとは……まさに夢のようなひと時だった。えへ、えへへへへへへ。おっと、よだれが。
…………うん。さーて、いいかげん現実と向き合うか。
「……あのーーー、君はいったいどうしたというのですかい?エリーさん」
「? どうしたとは?」
質問に疑問をもったのか、俺の左腕に巻きついたハーフ美女 東城・K・エリーは首を少しかしげ、世間一般的にあざといと言われるような表情をこちらに向ける。
「いや、さっきから横を通る人に確定と言っていいほどチラ見されてるんだよ、主に男性から」
「ん?それが?」
「うーん、なんて言おうか、うん!とりあえずさ、僕から離れよっか♡」
「え、イヤですけど……」
わー、すっごい嫌そうな顔して拒否られた。彼女のあまりの密着度に俺の左腕は彼女の二つの大きな島にサンドイッチ状態だ。
あまりの挟まり具合に横を通る人(主に男性)がチラチラ、いやガッツリ見てくる。羨ましいという文字が後ろに見えるようだ。羨望というより、妬みだな。
「はぁ。よくわかんないけどもうすぐ店につくからさ、店長とか優里に誤解されるよ?」
「それなら大丈夫です!優里には友達のところに泊まると言って来たし、店長はどうでもいいデス!」
「店長が泣くぞ……というか、友達のとこっていってこの状態で来たら100%特殊なお友達と勘違いされるからさ。離れよう、うん、今すぐ」
「特殊?special?え?何が悪いんですか?いいじゃないデスカ!やったーじゃないデスカ!」
「必ずしも良い特別ではないの!世間一般的にはダメってなる人もいんの!だからこういう事は彼氏……付き合っている男の人にやってあげな。勘違いされちゃうよ」
そういってドヤ顔を決め込みながら、左腕に巻かれた彼女の腕を優しく解く。
うん、決まった。昨日良いことがあったからか、いつもとは違って心に余裕があるぞ。これぞ俗に言う大人の男。
……ぷ。ゴホン!まぁ、それはさておいきっと昨日の言動を見る限り、エリーは異国の間違った知識を身につけてしまっている。これからの彼女のためにも正しい常識を教え込まなければ、いずれ悪い男にあれやこれやされてしまうやもしれん!
そう心の中で考えていると、解かれたはずの左手にもう一度綺麗な白い腕が絡まる。
はぁ、全くエリーちゃんったら困ったちゃんなんだから〜
「あのな、エリー……」
「……別に、いいですから。早くいきましょう」
そう言うと少し朱に染まった頬を隠すかのように顔を逸らし、大地を引っ張る形で彼女は勤務先へと歩を進めた。
……ん〜〜おもってたんと〜チ〜ガ〜ウ〜〜〜。
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