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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

星が美しい夜の話

作者: 桜芽鵺葉


写真館に少女はやってきました。

写真館というのは、写真をとる施設のことです。部屋を選びそこでカメラマンが写真を撮影してくれる施設です。


少女は家族4人で写真館にやってきました。

どこかの会社の社長をしている父、それとは別のどこかの会社の社長をしている母、少しだけ年上の姉、そして少女の4人です。父と母が受付で手続きをしている間、少女は姉と部屋の一室で過ごしていました。


部屋はこれから撮影に使われるので、少女と姉は飾り付けを勝手にしているのです。少女は、誰も見ていないので、やりたいようにやりたいことをやってしまいます。


姉は部屋に真っ白な薔薇を植えて、壁も床も天井も全て白薔薇まみれに飾り付けました。

少女は真っ白な部屋には真っ白な白馬がふさわしいと思い、近くの競馬場から白馬を捕らえて部屋に飾りました。白馬は以前は競馬場のエースでしたが、もうお爺さんになってしまったため、早く走ることができません。なので、少女に必要とされることが嬉しくて、決めポーズで部屋にかっこよく飾られています。

少女は、白馬だけでは映えが足りないと判断し、近くの森から熊を捕らえて部屋に飾りました。ちゃんと部屋に見合う白い熊、白熊です。少女はその調子で白い動物をたくさんたくさん捕らえては部屋に飾りました。部屋は真っ白な動物でいっぱいになります。


少女と姉は部屋に入り切らなくなってしまったので、階段で上に上がることにしました。

階段は気まぐれで、気分によってはへこんだり、でっぱったり、自由に蠢いています。少女と姉は階段と話しながら彼ら一段一段の気持ちを考えて上に登りました。そして最後まで登ったところで星を手にしました。白く輝く美しい星です。


少女は星を抱えて、写真館に戻りました。

動物たちはもう部屋から居なくなってました。

少女は真っ白な星を抱きしめ、家族4人で写真撮影をしました。


うたた寝をしながら少女はその思い出を反芻しました。

あれは10年も前のことでしょうか。

少女がまだとても幼かった頃の思い出です。


少女は18歳になり、恋人と神社でデートなるものをしていました。神社では今日神様が祭りにやってくるからと、少女の祖母がデート場所に勧めたのです。


少女はうたた寝から目を醒まして隣の恋人を立ち上がらせ階段まで連れて行き、微笑んで階段から突き落としました。

階段の気持ちを少女はよくわかっているつもりです。

階段たちは突然やってきた餌に歓喜して我先にと少女の恋人に喰らい付きます。少女の恋人は階段たちに喰われてしまいました。少女はくるりと向きを翻して、祭りにやってくる神様を迎えます。


水色の布をかぶった使者たちを引き連れて、神様が神社にやってきました。神様は男か女かわからないながらも美しい存在感を放っていました。

神様の周りの使者たちがふわっと消えました。


少女は椅子の上に立ち、神様を見下ろします。

そして少女は黒い丸い箱を神様に投げつけました。

箱は神様の足元にぼとりと当たりました。


「お前、なにをしているの?」


少女は酷く気分を害しました。

神様の頭に箱を投げつけたかったのに、神様の足に当たったのです。神様を見下ろしながら攻め立てます。


神様は驚いた顔で、でもこの少女を怒らせないように考えて答えました。


「ごめんなさい」


「いいわ」


少女は黒い四角い箱を神様に投げつけました。

神様の頭に当たり、神様がよろめいて転びます。


「開けなさい」


「はい」


少女の言葉に従い、神様は黒い四角い箱を開けました。

中にはクッキーがたくさん入ってました。


「そっちじゃないわ」


「はい」


少女の言葉に従い、神様は黒い丸い箱を開けました。

中には星が入っていました。

かつて白く美しく輝いていた星。


それが、真っ黒なペンキで汚されていました。

神様は泣いてしまいました。

真っ白な星は神様の命より大事な輝きでした。


少女は、誰も見ていないので、やりたいようにやりたいことをやれました。

そうして、少女は幸せになれました。



End.


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― 新着の感想 ―
[一言] 幼い頃の写真館の思い出がとても遠く…切ないなと思っていたら、今も変わらずに好きなことを好きなようにして生きている姿を見て安堵しました。 こういう清々しい女の子が大好きです。白馬や白熊をとらえ…
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