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記憶の絵本  作者: 霜月鈴
序章
8/19

7.入学前日に

毎日更新したかったのですが、叶いませんでした。亀のように書くのが遅いですが、完結まで投稿するつもりです。よろしければゆっくりお付き合いくださいませ。

魔法学校入学1日前。今日は朝からそわそわと落ち着きがないミラであった。そんなミラを見てカーターは町の散策を提案し、2人は時計塔に行くことになった。時計塔の中は観覧できるようになっており、最上部から見えるバシレウスの街並みが人気の観光名所だ。今日は天気が良いからか、観光目的でやってきた人で溢れかえっている。昨日列車から見た景色を今度は上から眺めることができるため、ミラは楽しみに順番を待っていた。


「こんなに待つなんで聞いてないわよ。」


「お嬢様。もう少しで順番です。あんなにも、入学前に学校が見たいと仰っていたではありませんか。」


するとミラのすぐ後ろから不機嫌そうな声が響いた。声の主はミラと同じ年くらいの少女で、その少女を初老の男が宥めているようだ。ミラは学校という言葉に反応し、弾んだ声でカーターに尋ねた。


「学校ってもしかして魔法学校のことかな?」


「ええ、そうですよ。ここからなら学校を見ることができます。」


「ここからならって?」


カーターは、本当は展望台からあれが学校だと言って驚かせたかったのですがと言って笑った。ミラがさらに学校について追求しようと声を出したが、先程の少女によって遮られてしまった。


「あら、貴女。魔法学校に興味があるのかしら?」


ミラとカーターが振り向くと、強気な目が興味深そうにミラを見ている。


「うん!明日からそこの学生になるの。」


「まあ!私もそうよ。素敵な偶然ね。」


彼女はにっこりと笑ってミラに手を差し出し、アメリア・ホワードよと名乗った。ミラもアメリアの手を握り返して、ミラ・ブラウン。よろしくねと返すのであった。


丁度ミラ達のいる集団が展望台へ向かう階段へ案内されたため、ミラとアメリア、その後ろから初老の男とカーターという順番で上ることになった。階段は古いものなのか、所どころに削れた痕がある。この時計塔は、教会として使われていたものを作り替えたのだと案内の人が言った。そんなに古いものなら、隠し部屋とかありそう!と楽しそうにミラとアメリアが話していると、それは魅力的ですねと案内の人はにこやかに答えた。カーターはそんな3人を静かに見ていた。


「ここが最上階、展望台への扉です。」

案内の人がそう言い、扉を開けると開放的な空間が広がっていた。4人は展望台の端まで歩き、各々がその景色を見た。そこには規則正しく並んだ、美しい街並みが広がっていた。


「やっぱりバシレウスの町は綺麗だね。……ねえ、アメリア。学校はどこかな?」


「貴女、どこを見ているのよ。学校は上よ。」


「上?」


「だって魔法の学校よ?普通の場所にあるんじゃ面白くないじゃない。」


アメリアの指さす方向にミラは目線を向けると、空に土が浮いてた。正確には要塞の様なものがその土台となる地面ごと空に浮いているのだ。魔法学校はなぜか天気の良い日しか見ることができない。今日こんなにも人で賑わっているのは、そんな魔法学校を一目見たい人が多いからだ。


「あの空にあるのが学校なの!?信じられない!」


ミラは興奮して身を乗り出した。村を出てからまだ2日というのに、色々なことに驚かされてばかりだ。あんな場所でこれから生活し、あんなにも凄いことができる魔法を学ぶことができるのかとミラは興奮と期待で胸が一杯になった。隣にいるアメリアも瞳を輝かせて、学校を見つめている。


「ここから見る学校はやはり良いですね。これを見てしまったら誰しも魔法使いに憧れてしまいます。……あれは、憧れの象徴ですよ。本当にずるい見せ方をしてくれるものです。」


カーターは目を細めて言った。魔法使いになれる人はごく僅か。それなのにその力をまざまざと見せつけてくるものだから、魔法使いも人が悪い。空に浮かぶ魔法の要塞に、1度も心惹かれぬ者はいないだろう。

あれは、資格のある者にしか踏み入れることができない奇跡の場所だ。そして夢をいくつも喰ってきた恐ろしい怪物だ。


「カーターさん、魔法使いになりたかったの?」


「昔は憧れましたね。でも、私はもういいのです。十分夢を見させて貰いましたから。」


そう、十分に夢を見させてもらった。心が震えてやまない、そんな夢を。

カーターは一瞬遠い目をしたが、すぐにいつもの柔和な笑顔に戻りミラを見た。そしてカーターはミラに、貴女の成長を楽しみにしていますよと声をかけた。



一行はしばらく景色を楽しんだ後にアメリアの用事があるということで、その場でまた明日と声をかけて別れた。別れ際にアメリアが話し足りなそうな顔をしていたのが、ミラは同じ気持ちだと嬉しくなった。素敵な出会いも出来て、今日もとてもいい日だなと思うミラであった。


町を散策した後にカーターの家に帰り、部屋に戻るとプレゼントの箱が置かれていた。ミラは驚いてカーターの元に行きこれ開けていいの!?と尋ねると、もちろんですと返答があったため、勢いよく包装紙を破いた。中には綺麗な花紺青のコートとベレー帽、紺碧の海のような青いワンピース、御空色の上衣に白縹地のスカートのワンピース、黒いハイソックス、黒いオックスフォードシューズ、茶色の革鞄が入っていた。


「魔法学校の制服です。青を基調としたデザインで可愛いですよね。」


ミラは嬉しくて服を優しく抱きしめた。ちょっと着てみてもいい?とカーターに言い了承を得たため、ミラは自室に戻り着替えた。今まで着たことのない上質な布で作られていることが、手触りでよく分かる。袖を通すだけで背筋が伸びた感覚がする。鏡に映る自分の姿も、普段の何倍も大人びて見えるように感じる。この服も魔法みたいだわとミラは思った。そしてカーターに全ての服を着て見せ、どれも素敵だと好評を貰ったミラであった。


「ミラ。遅くなりましたがこれが私からの入学祝いです。おめでとうございます。」


カーターは両手ほどの箱をミラに手渡した。中を開けると、シーリングスタンプとワックス、クリーム色の便箋が入っていた。エミリーやリースに手紙を書けるようにこれを選んだと、少し恥ずかしそうに話すカーターにミラは満面の笑みを浮かべた。


「ありがとう、カーターさん!私、いっぱいお手紙書くからね!おばあちゃんにも、リースにも。もちろんカーターさんにも!嬉しい!」


カーターは、私にも書いて欲しい気持ちが透けてしまいましたねと、さらに恥ずかしそうに口と鼻の間に手を置いた。そんなカーターの様子が珍しくてミラは可笑しそうに笑ったのであった。

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