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とある公爵令嬢の生涯  作者: ゆう
メトロ学園と新たな出会い
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18学園の決まり

午前の授業はとても平和だった。


「今日は本当に平和ね」



「お前の目は節穴かよ!」


「そうですよ!グチグチ嫌味を言ってムカつきます!」


「殴るちゃ!」


本人はとても穏やかに過ごし読書を楽しむのだが周りはそういうわけには行かなかった。



「いいじゃない?実力のない人間は妬みを言うしかできないのだから」


「お前さりげなく鬼だな」


「事実よ」


明け透けな言い方にあきれ果てる。



「第一、今度の試験で何人退学になることやら」


「「うっ!」」


この学校では赤点を取ってしまえば退学にもなりかねない。


毎年騎士科は自主退学者も多いが、その大半が強制退学だった。



「どうしましょう!」


「赤札一枚で退学っちゃ!」


「逆にゴールドカードを取れば帳消しだから問題ないわ」


「お前な!ゴールドなんてそう簡単に取れるかよ!」



この学園のシステムではレッドカード一枚で退学。

イエローカード二枚で退学という厳しい処分を受けるのだが、イエローカードを入手した者には救済処置が行われる。




それはゴールドカードを獲得することだった。

条件はいずれかの分野で一番を取ることが義務づけられている。


ただしどの分野もゴールドカードの所持は一人だけとされておりかなり難しかった。



「ゴールドなんて無理です」


「俺も自信ないばい」


「つーか、普通にゴールド狙う方が無理だろ!」



ゴールドカードを得るのがどれだけ難しいかエステルは知らないが手札はあるだけぶんどる気満々だった。



「大体私を妨害している暇はないはずよ」


「…というますと?」


「自分の勉強をサボっている余裕があるとは思えないわ」


授業は常に予習復習をしておかなければ後々困る。

月に一度の試験と並行して中間試験と期末試験も行われるのだ。


騎士科は実技を優先されるが、試験は学科と実技で一つなので双方とも基準点を取れなくてはならない。



「そうなれば留年ですわ」


「言うな」


「事実です」


エステルの嫌がらせに必死になる傍らで自分の勉強をちゃんとしているとは言い難い。



「気になったちゃ…アイツは何で留年しとっと?」


「ああ…」


何度も試験に落ちまくっているヒューバートだが去年は試験に受かるも留年していると聞かされるも授業を見て優秀とは言い難い。



「アイツ去年乗馬で落馬して怪我して留年してんだよ」


「「「は?」」」


「しっかもアホなことに入学して一週間で留年」


笑えない話だった。

あれだけ偉そうに踏ん反り返っていたが、入学して一週間で留年なんて恥さらしだ。



「まぁ、アイツも一応下級貴族だから親が情報をシャットアウトしているらしいが、このユラン様にかかればちょろいぜ」


「程々にしておいてくださいね」



一歩間違えれば犯罪者にになりかねないと思い、表情が強張る。


「ストーキングのような真似をしないでくださいね」


「おいおい、蔑んだ目で見るなよ」


後でアリスに忠告をしておこうと思ったエステルは次の授業の予習を始める。



「そういや午後はマラソンだよな」


「僕体力には自信がなくて」


今日の午後の授業の体育はマラソンとなっている。

騎士たるもの基礎体力が基本なので持久力がないと話にならないのだが、サブローは心配する。



「エステルさん、大丈夫とね?」


「そうですよ!僕よりエステルさんが!」


「確かに男と同じメニューというわけには行かねぇが…」



剣術の担当教師は元第三騎士団団長を務めた人物で、騎士道を重んじている。


「万一女性だからってメニューを軽減したら馬鹿にされ風当たりがさらに厳しくなるな」


「でも、その逆でも…」


「他の奴がしかけてくると」


最悪の二択だった。

三人はいくら優秀でも体力までも男以上にこなせるとは思えない。



「どうしましょう!」


「エステルさん、その時は俺がなんとかすると」


何とかすると言われても文句を言う男子生徒を殴って黙らせる程度のことしかできない。



「問題ないわ」


パタンと教科書を閉じる。



「えっ?」


「あのなぁ!」


「大丈夫よ」



誰にも文句を言わせない。

男と女の体力差は仕方ないとしても、負けるつもりはない。



「特別扱いなんて冗談じゃない」


「だからってな…」



ユランは意地でも対等であろうとするエステルが心配になる。


(こいつ、馬鹿なのか?馬鹿なんだな!)



要領よく渡ればいいのに、態々辛い道を選択する。


意地の悪い方法を使っても根はまっすぐで優しい性格をしているので卑怯な手は一切使わない。



(こういう所、嫌いじゃねぇけど…)


世渡り上手とは言い難く、どちらかというと不器用にも見える。



(どうするか…)



外野を黙らせるのは簡単だが、それではエステルの風当たりを弱めることができない。


今のところ中立側の教師から評価を得ているが、保身的な貴族出身や成り上がりの立場の教師はエステルを敵視しているので何とも言えない。



(せめて中立側の生徒が認めればな…)


聴衆の声とは時に強く。

一人一人の権力者よりも力がある。


生徒一人一人が公平な目で見て、エステルをどう見るか。


(見る奴が見れば解るんだけどな・・・)


エステルが不正をしていない事実。

今も一人踏ん張っている根気強さも伝わるはずだが、現段階では難しい。



(どうなるか…)


午後の授業のことを考えながらどうすべきか思案するユランだった。





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