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とある公爵令嬢の生涯  作者: ゆう
メトロ学園と新たな出会い
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16気高き薔薇

音楽の授業でささやかな仕返しをするものの、ちゃんとした場ではばっちり演奏したエステルに誰も文句は言えなかった。




「わぁー…すごい」


「エステルさんはバイオリンもすごかね」


またしてもしてやられたと言う表情をするクラスメート。



特にヒューバートは睨みつけるような視線を向けるも完全に無視をして演奏を終える。


「何ですか?」


「エステル、貴方は天邪鬼な方ですね」


「はい?」


アクセレイは苦笑しながら言い放つ。


「態々恨まれるような真似を…友人の為とは言え」


「なんのことです?」


「本当に不器用な方だ」



言っている意味が解りかねるエステルは苛立つ。



「貴方は本当に不器用で律儀な方だ。そして誰よりも気高くも哀しい人だ」


「何を言っているのか解りません」


不器用という点では否定しない。

器用に立ち回れないからこそ前世では守りたいモノを何一つ守れなかった。



ずっと蔑まれて生きて来た。

苦痛に耐えて生きながらも気高さを捨てないで生きるのが意地だった。



「気高き白薔薇のような方だ。貴方は」


「白薔薇?」


「ええ、決して汚れることのない高貴な薔薇。貴方に最も相応しい花です」



白薔薇のような美しさなど持ち合わせていない。

何より薔薇のような気品を持ち合わせているのだろうかと思う。



「私は…」


「貴方は全身を棘で覆い隠していいますが、その棘も貴方の魅力ですよ」


気障な台詞を吐きながら差し出された一輪の薔薇を差し出す。


「ごきげんよう」


そのまま静かに去っていくアクセレイに唖然とする。



「おーいエステル!」


「エステルさん帰りましょう!」


「何か食ってくばい!」



三人がエステルを迎えに来たので咄嗟に薔薇を隠す。



(一体なんだったの?)



何故アクセレイはあんなことを言ったのか解らない。



考えても仕方ないの無いことだと思いながら考えることを止める。




「それにしてもさっきの演奏、爆笑だな」


「悲鳴ば聞こえたとね」


「ええ、どうしたんでしょう」



二人は何が有ったのか知らない。

エステルが仕返しをしたとはつゆ知らずだ。



「お前等…」


「なんでもありませんわ。参りましょう」


ユランが余計なことを言う前に口止めをしてその場を後にする。



(ん?)



立ち止るユランは誰かに見られている気がした。



「どうしたんですかユランさん」


「いや、なんでもねぇ」


一瞬気配を感じるもすぐに気のせいだと思い三人の後を追ったが…




「勘の鋭い男だ」


物陰から姿を現せた少年は舌打ちをした。




「エステル・アルスター」



気配を消しながらそっと盗み見する。



「さてどう動くか」


無表情の少年はエステルの背中を見つめながらその場を去る。




窓から抜き抜ける風が枯れの黒髪を靡かせていた。






所変わって…




「あの女!またもや俺をコケにして!」


「自業自得だろうよ?アンタ本当に馬鹿だね」


「ケケケッ!馬鹿だ!馬鹿!」


「やかましい!」



背後にはまた増えた幽霊。

幽霊にまで馬鹿にされ笑われる男、ヒューバートは現在裏庭でブツブツ文句を言いながら新たな作戦を企てていた。



「今度こそあの女を!」


「止めておきな、どうせ上手く行かないんだから」


「そうだよ、真面目に勉強した方が身のためだ」


「そうそう。馬鹿だし」



フワフワ浮きながら二言目には馬鹿呼ばわりをする幽霊にブチ切れる。


最初こそは恐怖心でいっぱいだったが慣れとは怖いもので、恐怖心も消えていた。



「ええい!疫病神が!!」


「ははっ!私達は死んでいるから剣なんて無理だね」


「学習しな」


ただし受ける屈辱は倍増していた。






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