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とある公爵令嬢の生涯  作者: ゆう
メトロ学園と新たな出会い
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15音楽

エステルの想いなど関係なく平和な学園生活を過ごすことは出来なかった。


本人には自覚がないのだが、さらに風当たりが酷くなる出来事が起きる。



メトロ学園の生徒は音楽の授業にも力を入れている。




どの学科も関係なく、この学園に入学したものは楽器が扱えなくてはならないのが暗黙の了解となっていた。



「それでは番号札が同じの人と一緒に組んでくださいね」


音楽教師に言われ、生徒達は札が同じ人の元に向かう。



(誰とかしら)


キョロキョロと見渡すと…



「私とだ」


「はい?」


同じ番号札を見せられる。



「奇遇だな」


(何故…)



エステルはこの時ほど自分のくじ運の悪さを望んだ。



「よろしくエステル」


「はっ…はぁ」


正直ヨロシクしたくない気分でいっぱいだった。


学園にいる間、極力関わりたくないと思っていた相手と早速関わることになるんて最悪だった。



「君と話したいと思っていたんだ」


「はっ…はぁ」


エステルは二度と会いたくなかった。



「だが、君と話す機会が無くて」



内心願ったりだと思っている。



「まさかこんあチャンスが巡って来るなんて」


厄日以外の何者でもない。



「ミューズに感謝しなくては」


「そうですね」


笑顔を浮かべながら内心で舌打ちをする。


感謝なんてしたくない。

ミューズは自分に試練を与えているのでは?と思わざるを得ないのだから。



幸いにも今の授業は合同ではないのが幸いした。



(白の騎士と二人きりなんて殺される)



前世でも人気を二分するほどだった。

国内では親衛隊がいる程の人気で、後に社交の場では貴族の令嬢、夫人にも言い寄られる程だった。


一夜だけの相手になって欲しいと望まれるぐらいだ。


見目麗しく教養高く物静か。

無口というわけではなくとても穏やかな性格だった。



騎士の鑑と言っても過言ではない。



(いや、ペアになったと言っても不本意よ)



どうせ正式に組むことになったわけじゃない。



今日だけ辛抱すればいいと思い気しないようにする‥‥


「‥‥‥‥」


そう、気にしなければいい。



「‥‥‥」



なのにさっきから何故か凝視されている。


(なんなの?)



どうして見られるのか。



「ハインツさ…」


「どうか名前でお呼びください」


「いっ、いえ」



どうして親し気に接してくるのか。

これ以上近づきたくないので丁重に断りながらきっちり指慣らしをする中、視線の先には…



「音外れているぜ?」


「流石下品な男は楽器の弾き方も知らねぇのか?」



奥の方で悪戦苦闘しているサブローとルークは一緒に組んでいる生徒にダメ出しをされている。



二人がミスをするたびに陰口を囁かれている。


(わざとミスを煽っている…)


ルークの専攻楽器はチェロなのだが主旋律のバイオリンのピッチが速すぎて合わせられずにいる。


同じく苦戦を強いられているのはトランペットのサブローだった。



二人が下手なわけではない、むしろ正確なリズムを刻んでいるが主旋律のバイオリンが下手な所為で合わせられないのだ。



不協和音が奏でられ耳障りな雑音が響き他の生徒も陰口を言う。



「まぐれで受かったからこうなるんだ」


「耳障りな音色を」


クスクス笑う声が聞こえるエステルは沸々と怒りが芽生え弦を抑える手に力を込めてワザと音を外し。



ギギギギッ!!



「「「ぎゃあああ!!」」」


ワザと酷い音を奏で、陰口を言っている生徒の耳元で雑音を響かせる。



普通の耳なら耳障りな音で済むが、絶対音感を持つ人間にとっては耐えがたい音だ。



例えるならば鏡を爪に引っ掻くような音だ。




「あら?失礼。少し間違えましたわ」


「いっ…耳が」


なに食わぬ顔で酷い音を出しながら再度繰り返す。




ギギギッ!!



「やめ…」


「ごめんなさい。緊張して手元が狂いましたわ」


にっこりと微笑む。



その笑顔はとても黒かった。



解っていてしているの挑発的な態度をとりながらこれ見よがしに酷い演奏をする。



(悪夢に魘されなさい)



耳が良すぎると難点なのは不協和音も耳が潰れる程酷い音に聞こえる。


(まぁ、あの二人には聞こえないようにしているけど)


ルークとサブローは何があったか解らない。




(あの馬鹿…)



ただしユランにはバレバレだったのに本人は気づいていなかった。


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