12住人
アリスは辺境の地出身で平民だったが魔力が高くスカウトされたと聞く。
ただしこの世界で魔力が高いのは貴族が殆どだった。
時折平民でも魔力の高い人間はいるのだが、アリスの場合は親も魔力が一切ないのでかなり特殊だった。
「それで学園に?」
「はい、学園の方が推薦してくださって」
剣も握ったことが無い様な華奢な体に小さな手。
「では学部は魔法科ですか?」
「はっ…はい」
暗い表情をするアリスはこれからの生活が不安で仕方なかった。
何故なら周りは貴族が多いからだ。
他のかは平民が多いが魔法科は貴族しかいないのでアリスは異質な存在と見られる可能性が高い。
(何もなければいいけど…)
人のことを心配している場合ではない。
エステルはある意味、アリスとは違う意味で異質だ。
騎士は二つの役割がある。
国王に叙任されていない小領主を指す場合と、騎士団に所属している団員を指す場合。
その為学園内でも騎士は花形だった。
魔力は勿論だが、仁・勇・智のすべてが必要とされる。
魔法科では強い魔力が求められ、錬金術科ではより多くの知識が求められるが騎士科はそのすべてが望まれている。
その為騎士科は倍率は超難関と言われ。
受験資格は13歳からだが何度も落ちる者もいれば卒業できずに何度も留学する者も多かった。
(私も他人の心配をしている余裕はないわね)
留年している時間はない。
最短で卒業して王都に戻る為にも気を引き締めなくてはいけない。
「エステル様は貴族の方ですよね」
「ええ」
何故様づけにされることに疑問を抱く。
「貴族の方はもっと怖いと思ってました」
「見た目だけでは解りませんよ」
人間は誰もが仮面をつけている。
アリスはその恐ろしさを知らず、汚れが無いように思えた。
「すいません…」
「謝っていただく必要はありませんよ」
ただ無知だと言うわけじゃない。
愚かにも見えないが、少しだけアリスが心配になるエステルだった。
窓から見える夕焼けを見て少し寂しく感じる。
(こんなに静かな時間は久しぶり)
‥のはずが、そんな時間は長く続かなかった。
「こん眼鏡!俺ば馬鹿にしとるんか!」
「わぁぁぁ!待ってください」
「ねぶるなか!」
聞き慣れた声が聞こえ、すぐに駆け付ける。
「ぐらぐらこいた!!」
「ちゃんとわかる言葉を話してください」
サブローが怒鳴り散らし見知らぬ青年が胸倉を掴まれている。
「なんの騒ぎ?」
男四人が集まって喧嘩をしている。
「エステル!ちょうどよかった」
「声がこちら側まで聞こえていましたが」
「ん?貴方は」
(何でいるの…)
見慣れた人物を思い出し顔が引きつった。
(ジークフリート・オルガ…)
後に革命を起こした人物となる。
平民でありながらも宰相にまで上り詰めるが意見の食い違いで何度も貴族と対立関係になった。
(彼もここの生徒だったなんて…)
エステルが知らないだけでここにいる人間は後に革命に関わる人間ではないか?と思った。
「ああ、騎士学部唯一の女性ですか?」
顔を顰めるジークフリート。
エステルは既に学園で噂になっている。
「花形の騎士科に合格した天才…あげく出自はアルスター家の人間とくれば噂になりますから」
「…そうですか」
含みあるような言い方をされても今更気にも留めない。
「共同生活をするので必要最低限のマナーを守ってください」
「気に入らないならばお得意の権力を使えばいいのでは?」
やけに突っかかって来ると思ったが特に気にすることもない。
「この学園は完全なる実力主義…お忘れですか?」
「なっ!!」
氷のように冷たい表情で言い放つエステルは他意はなかったが見た目が冷たく見えるので誤解されやすかった。
完全に敵視されてしまったことにエステルは気づいていなかった。
ジークフリートは眼鏡をかけ直し舌打ちをする。
「ごめんちゃ…騒がしくするきはなかったちゃ」
「いいえ、あまり騒ぐと他の方にも迷惑になるので」
「勘弁してほしか」
さっきまで興奮していたがすぐ落ち着いたサブローは直ぐに謝る。
方言が飛び通い、エステル以外は何を話しているか解らなかった。
「もはやエステル以外解らないな」
「僕、語学の勉強を頑張ります」
「いや違うだろ!」
サブローの言葉を理解すべく努力しようと意気込むがユランは努力の方向が間違っていると指摘をする中静かな学生生活を送るのは不可能だと察したエステルだった。




