10寮母
寮に入るも灯りが消えていて不気味だった。
「とりあえず灯りを…」
ピチャッ!
「わぁ!」
雫が落ちて驚くルーク。
「なんね!」
「すいません!」
過敏に反応するルークにサブローも慌てる。
「お前はビビり過ぎだろ?」
「あ…」
「何だ?」
エステルは声を出すがユランは前を見ずに歩いて行く。
「へ?」
頬に何か当たった。
「わぁぁぁ!!」
蜘蛛の巣にぶつかり驚く。
「俺は蜘蛛がダメなんだ!!」
「わぁぁ!蜘蛛が落ちてきました!」
「ジッとすると」
「ひぃぃぃ!!」
蜘蛛がひょっこりを顔を出す。
普通の蜘蛛ならまだ小さくていいが、ここは魔法学校。
サイズも普通の大きさではなくかなり大きい。
「こっちを見てます」
「ユラン、モテモテたい」
「嬉しくねぇよ!女の子ならまだしも」
蜘蛛に好かれて嬉しい訳もないのだが…
「ユラン、彼女は女性よ?」
「は?」
「よかったわね、魅力的な体つきよ?貴方の大好きなボンキュッボンよ」
ずいっと蜘蛛を抱き上げ近づける。
「ぎゃああああ!」
「エステルさん、根に持ってますね」
「それよか、素手で持てると?」
サイズは子犬ぐらいある。
普通の蜘蛛の倍の大きさだが、エステルは普通に触っている。
「結構可愛いわ」
「シャー!」
足を動かす蜘蛛を可愛いと言うなんて信じられないユランは、できるだけ距離を保つが。
蜘蛛は口から糸を吐いた。
「どわー!!」
ドタン!!
糸で拘束される。
「あら?貴方を気に入ったみたいよ?」
「嬉しくねぇよ!」
「女性に恥をかかせるのはいけないわよ」
ズイッと差し出す。
「わぁぁぁ!」
「シャー!!」
蜘蛛はユランを追いかけて行く。
「無理だ!!」
どうしても蜘蛛だけは無理だと叫び去っていく。
「アホたい」
「ユランさん…」
全力で走って行くユランを哀れな目で追いかける。
「私達は先に向かいましょう」
「えっ…待ってください」
「エステルさん、ランプたい」
「ありがとうございます」
ユランを放置し先に進んだ。
「僕、ここに住む自信ないです」
もはや外観だけでなく中身も幽霊屋敷だった。
美術品のオブジェなども雰囲気をだして、怖くて仕方ない。
「本当に幽霊が出たらどうしよう」
「魔法の学校たい。可能性はあるとよ」
サブローの言葉にさらに不安を抱く。
「まぁ、悪さをしないなら問題ないでしょ?」
「そうですけど…」
二人の後に着いて行こうとした時だ。
「いらっしゃーい」
パッと灯りが着き胴体だけ現れる。
「わぁぁぁ!!」
ルークはサブローに抱きつく。
「胴体が…胴体がありません!!」
「なん?」
ランプを照らす浮いている顔。
「歓迎するよ」
「どうも」
サブローはランプを持ちながら挨拶をする。
「あの、貴方は?」
「ここの素敵な寮母さんのマジョリカだよ」
「今日からお世話になります」
ぺこりと頭を下げて挨拶する。
「よろしくー。じゃあほかの子にも挨拶してくるかね」
そう言いながら顔だけフワフワ浮かせながら去っていく。
まだ怖くて震えているルークはサブローにしがみ付いている。
「彼女は魔女のようね」
「ん…」
きっとあの姿も魔法に違いないと思ったが、ユランは大丈夫だろうかと思った矢先。
「ぎゃあああああ!!」
その先で悲鳴が聞こえた。
「哀れユラン」
「ご愁傷様たい」
暗闇の中一人で悲鳴をあげるユランはその後も恐怖と戦わされる羽目になった。
所変わって南部の銅クラスこと青銅寮。
「ほらほら掃除しな!!」
「何で寮にも同じ幽霊がいるんだ!」
真っ青な表情のヒューバートは寮でも掃除婦につき纏われていた。
ピッタリくっつかれて嫌がるも、ヒューバートが嫌がられば嫌がる程、喜ぶ幽霊だった。




