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とある公爵令嬢の生涯  作者: ゆう
メトロ学園と新たな出会い
35/53

2.入学式

(あの程度の魔法ならたいしたことないわね)



自分の魔法が跳ね返るなんてどれだけ間抜けなのかと思ったが、ちゃんと魔力が制御できなければああいう目に合うのだ。



「あっ…あの!ありがとうございます」


「いいえ、私が気に入らなかっただけです」



勝手にしたことなのでお礼を言われることはなかったが少年は頭を下げてお礼を言う。


「僕は、ルーク・インディーズと申します」


「エステルです」


咄嗟に名前だけ名乗ってしまった。



「あの…騎士科の方ですよね?」


「ええ、貴方もですよね?」


「え?」


インディーズ家は剣術に優れた一族と聞いている。


「はい…」


「よろしくお願いします」



爵位からしても苛められる理由が解らなかったが、他人の事情に口を挟むことはしたくないので深く聞くことはしなかった。




「おーい、お前達も騎士科だろ?」


「はい」


「そうですが…」



二人に声をかけたのは二人よりも少し年上の少年だった。


「お前等新入生だろ?俺はユランだ。よろしくな!」


随分と馴れ馴れしい男だった。

少しチャラ男という雰囲気が否めなかったが素直なルークは挨拶を交わす。



「ルーク・インディーズです」


「エステルです」



「おう!よろしくな!」


バシバシと二人の背中を叩くユランに驚く。

純粋な貴族生まれであるエステルは例外を一人置いてこんな風に接してくる人は初めてで驚いた。



「それにしても、今年は結構荒れそうだな」


他人事のように言うユランだつたが、エステルも同じだった。


「荒れていようが私達には関係ありません」


「言うな…」


「やることは一つですので」


堂々とするエステルにユランは笑みを浮かべる。


「さっすが、百人斬りしただけあるな」


「何ですそれ?」


「入試の時に実技で先輩を千切っては投げ、千切っては投げ無茶苦茶やっつけてただろ?」


噂とは本当に恐ろしいもので、飛躍して広まっていた。



「少しばかり相手を戦闘不能にしただけです。第一相手が勝手に倒れたんです」


「おいおい、魔力が少ない先輩に覇気を放った直後に木刀で真剣を真っ二つにした癖に良く言うよ」


「たまたま剣が錆びていたんです」



騎士科の入試では実技試験としてあらかじめ用意された現役の騎士と戦うことになっている。


合格基準は試験官が決めるのだが、エステルは現役の騎士を完膚なきまで叩き潰した。



「あれには俺もビビったぜ」


「エステルさん、魔力も強くて剣術も素晴らしいなんてすごいです」



ルークは目を輝かせる。

先程の一件もそうだがルークはエステルがただモノではないと感じていた。



「訓練すればこの程度はできますよ」


「いや、無理だろ!どうやったら木刀で真剣を真っ二つにできるんだよ」


ユランが突込みを入れるがエステルは真面目だった。



「気合の持ちようです」


「どんだけだよ!」


「同じ一撃でも気合が入っているかそうでないかでは異なります」



言っている意味は解る。

ただできるかどうかは別だったのだが、何とも言えなかった。



「入学式が始まりますね」


「やべ!」


「急がないと‥‥」


このままでは遅刻をしてしまうと思ったルークは慌てだすがユランがエステルの肩を組む。



「とりあえず急ごうぜ」


「ええ…」


戸惑いながらも嫌な感じはしなかった。

人との関りになれていないエステルはこんな風に気軽に誰かと接することに慣れていなかったが悪くないと感じた。








「諸君、入学おめでとう」



大勢の生徒の前でお祝いの言葉を述べる学園長。


「今日から皆、共に競い、学び、協力し合って多くのことを学んでください」



大勢の拍手が聞こえ、数名の生徒が前に出て花火が打ち上げられる。



「わぁー!!すいごい」


「朝なのに花火だ!」



魔法科の生徒が魔法で花火を打ち上げお祝いをした後、司会進行をしている上級生が告げる。



「新入生代表、前に」


「はい」


エステルはすぐに前に進み壇上に上がる。



「えっ…女子?」


「しかも騎士科だって!!」



周りはざわめき好奇の視線に晒される中エステルは気にすることもなく新入生代表として挨拶をし、入学式は終わった。




「エステルさん、代表だったんですね」


「まぁ、妥当だよな」



ルークは驚いていたが、ユランはあらかじめ予測していたので特に驚くことはなかった。



「女が騎士科ってマジかよ」


「ありえないだろ…」


予測していたのは生徒代表と言うことだけではなく、周りの反応もだった。



「女の癖に…」


解りやすすぎる嫉妬の感情に気づきながら先程言った言葉が現実にならなければいいと思った。







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