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とある公爵令嬢の生涯  作者: ゆう
巻き戻った時間
20/53

20噂

その頃社交界で噂が流れていた。

言うまでもなくエステルとクロードのことだった。



「ねぇ、聞きまして?」


「何ですの?」


「クロード殿下がエステル様にダンスを申し込んだとか」



噂好きな令嬢はヒソヒソ話す。


「夜会ならまだしも無礼講のサロンでなんて…」


「社交辞令ではなくプライベートでということですわね」


夜会で踊るとき社交辞令で踊ることもあるのでプライベートでダンスに誘うことは好意に繋がると判断した。


「でも、エステル様はカルロ様と婚約していたのでは?」


「それがどうも違うみたいなのですわ」


「どういうことですの?」



話を持ち出した令嬢が言い放つ。


「実は婚約者なのはヘレン様らしいですわ」


「そうでしたの?」


「母が聞いたらしいのですが、カルロ様がヘレン様に懸想されたので婚約者を置き換えることになったみたいで」


「まぁ、姉の婚約者を奪ったんですの?」



他人の不幸は蜜の味で令嬢達は面白おかしく噂をする。



そこに本人が現れる。



「やっぱり噂は本当みたいですわね」


「ええ…よく平気ですわね」


冷ややかな目を向ける令嬢や他にも好奇な視線を向ける令息や夫人も多く、居心地の悪さを感じていた。




「何…さっきから」




ヘレンは好奇の視線に晒されて居心地の悪さを感じていた。



視線が合うと逸らされてしまう。



「何ですの?」


「お母様…」


不安げな表情をするヘレンにジュリエッタは安心させるように抱きしめる。



「ねぇ、聞きました?あの噂」


「本当に親子そろって怖いですわ」


今度は夫人たちが噂をする


(何の話?)


ジュリエッタは平静を保ちながら耳を傾ける。



「堂々と姉の婚約者を寝取るなんて…怖いですわ」


「夫人も平気でしているんじゃない?親子そろって淫らですわ」


「もしかしたらフレッツ侯爵ともよろしくしているのではなくて?」


下世話な内容を聞き絶句する。


(なんですって!)


これ以上の屈辱はない。

フレッツ侯爵が女癖が悪いのは有名だが、その妾の一人と思われるなんて屈辱だった。



「あのクロード殿下がダンスに誘うぐらいですし」


(なっ!)



サロンでクロードがエステルをダンスに誘ったことを知らなかったのでさらに驚く。



「聞けばカルロ様に宣戦布告したようですわ。情熱的ですわね」


「女は愛される方が幸せですし?」






さっきからチラチラ見られていた理由が解り怒りを覚える。



「けれどよく考えれば、エステル様は聡明な方よね」


「ええ、音楽の才能にあふれ控えめですもの」


嘲笑う夫人達に不愉快な思いをするがここで大声を出せば笑いものにされるので耐え忍ぶ。



(どういうこと!!)


養子縁組の話はまだ公にされていないのに、夫人達の口ぶりからすればバレている。



拳を握り唇を噛み締めるジュリエッタは震えていた。



「お母様…痛い」


無意識にヘレンの手を握る力が入り痛がっているのにも気づかなかった。




「アルスター伯夫人!」


「フレッツ侯夫人」


「どういうことですの…カルロとエステル嬢が婚約破棄とは」



真っ青な表情をして問いただすのはカルロの母親のフレッツ侯爵夫人だった。



「社交界では噂になっていますわ…カルロとエステル嬢が婚約破棄になると…それにエステル嬢が養子と」


「噂に過ぎません」


「ですが…」



火のない所に煙は立たない。

もし噂通り婚約破棄にでもなったらフレッツ侯爵家は大変なことになる。


フレッツ侯爵家は多額の借金を背負い、アルスター公爵家に支援してもらわなければ破産してしまうのだ。


もし、万一でもエステルとの婚約が破棄されたらどうなるか。

婚約を結んだ意味がなくる。



「ただの噂に過ぎませんわ」


「ならいいのですが…」



二人の不安は消えることがない。



こんなにも居心地の悪い夜会は初めてで、ヘレンも顔を俯かせていた。



「カルロ…」


「僕がついているから」


泣きそうな表情をするヘレンの手を握りしめるもカルロの手は震えており、まるで自分に大丈夫だと言い聞かせているようだった。








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