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とある公爵令嬢の生涯  作者: ゆう
巻き戻った時間
12/53

12集う者

友達もいなかったエステルは不思議な気持ちだった。


(前世では一人だったのに)





不思議だった。

家にいても外にいても常に孤独だったのに今は周りに人がいる。



(やっぱり、少し変わっているわ)



前世でヴィオラは病気で亡くなり、エステルは祖父母の元に身を寄せているが伯父夫婦の養女には迎え入れられていない。


エステルの後見人となるはずのヴィオラが急死しその後釜に収まったジュリエッタだが、既にその可能性は消えている。





この時点で大幅に変わっている




(でも…まだだわ)


完全に流れが変わったわけじゃない。

侯爵家の養女になっても正式に跡継ぎとして国王に伝えていない。



フレッツ侯爵家からすれば伯爵令嬢との婚約よりも侯爵家との婚約の方が利益があるし、このまま黙っていれば公爵の地位が手に入るのだから婚約は続行したいはずだ。



ここで問題なのは勢力のバランスが崩れることだった。

国の決まりでは寵妃の子供が王位継承権を得ることはないが、万一にでも王太子が亡くなれば覆される。


現在正妃が産んだ子供の中で王子はエドワードだけで後は王女だけだった。


王妃の後ろ盾となっているのは宰相で反対勢力はプロイセン公爵だった。


寵妃であるモントワール侯爵夫人もエドワードを推しているのだが、ギリギリのバランスを保っている所にさらに公爵家が介入となれば危険だった。



(元両親はプロイセン派…婚約が続行されたら危険すぎるわ)


カルロを次期王に据え、背後から操り国盗りなんてされたらとんでもないことになる。


(なんとしても止めなくては…)



ただ気になったのはクロードのことだ。


(クロード殿下どうなのかしら?)


見たところ二人の関係は悪いとは思えないが、表向きだということも考えられる。


前世で裏切りや裏工作を平気でする人間がいることを知ってしまったのでエステルは慎重だった。


(仮面の裏を見なくては)



一つでも選択を間違えれば最悪の結果に繋がってしまう。



「ちょっと…聞いているの?」


「え?」


「アンタ、やっぱり聞いてなかったのね」


眉を吊り上げるミシェルに謝るが、さらに怒られてしまう。



「何でアンタはすぐ謝るわけ?」


「申し訳ありません」


「だから…」


イライラするミシェルにエステルは自分の行動がイラつかせているのだと思った。



「馬鹿じゃないのアンタ」


「はい」


「返事してんじゃないわよ!」


どうしてミシェルは謝ると怒るのかと、エステルは理解に苦しんでいた。


(今度から会話術を学びましょう)


人とのコミュニケーションが解らないエステルは邸に帰ったら会話術を読んで勉強しようと思った。



「本当にむかつく女ね!」


「申し訳ありません。次からはもっと気をつけます」


ただ自分の非を謝るしかないエステルだったが、ミシェルが怒っている理由は解らない。



「それで話の続きだが、次の番が来たら俺達でアンサンブルをする」


「え?」


「本当に聞いてなかったな…まぁいい」


楽譜を渡され、既に決定事項だった。



「俺達四人で参加だ」


「え!僕もですか!」


「ああ、ミシェル。お前もいけるな」


「はっ…はい!!」


ミシェルは天に登るような気持だった。



「私とクロード様の愛のプレリュード」


「ん?」


今、変な言葉が飛び通った気がしたが聞き間違いだと片付ける。



「ですが、兄上…僕では足手まといに」


「やれ」


「クロード殿下」



王太子に対しても俺様なクロードにげんなりする。



(なんて乱暴なのかしら)


楽譜を受け取り譜読みをしようとしたが、奪われる。


「お前はコンミスだ」


「は?私がですか!」


「クロード様、それは…」



ミシェルも思わず止めに入る。


「全体のバランスを考えた結果だ。行けるか?」


ジッと見つめられミシェルは…


(ああああ!!ダメぇぇぇ!)



憧れの人に見つめられミシェルは悶絶する。



(私の心臓がキュンキュンよ!)



既にミシェルは萌え死に寸前だった。



「終わったようだな…行くぞ」


「はい」



演奏が終わりエステル達は舞台に向かう。



大勢の観客の前で緊張するエステル。



「そのまま弾け」


「え?」


「お前の演奏をすればいい。他は気にするな」 


無意識に手に力が入るが、クロードが包み込むように握る。


「お前は一人じゃない…」



ドクン!


心臓の音が強く鳴り響く。



「舞台に立つのはお前だけじゃない俺達がいる」



一人じゃない。

その言葉に安心する。



(どうしてだろうか)



クロードはエステルの一番欲しい言葉をくれる。



「お前の音楽を聞かせろ」


「はい」



一人の人間として認めてくれる人。



妹の付属品としてではない。



エステル・アルスターを認めてくれたクロードの言葉を信じようと思った。



「はっ…早くしなさいよ」


「ああ、どうしよう。間違えたら」



虚勢をはるミシェルは膝ががくがく震え、隣で真っ青な表情をするエドワードも怯えていた。



(何だ…同じなんだ)


二人を見て安堵する。


誰もが緊張しているのだと気づき安堵する。



大丈夫。




絶対に大丈夫だと言い聞かせ、エステルはバイオリンを抱きしめた。




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