第3話
生憎、真っ昼間で、南半球では朧月が見えるのかな、なんて事をぼんやりと考えていた。友達もほとんどが大学に進学する。でも、私は高校卒業後に社会人になれる。肩書きはどうでもいいとは思わないが、それでもフリーターだって立派な社会人だと私は思う。でも、本当は給料を減らされてもいいんだよねと考えている。
桜を見ていると、今度来る時は彼氏と一緒に、朧月を一緒にベンチで眺めたいと思った。親友も友人もそれぞれ同じ大学を受験するそうだ。滑り止めの大学は違うらしいがランチタイムの時、その事を知った。
「一番賑やかそうな大学に進学したいと思ってさ」
「私も」
親友と友人は、案外価値観が似ているのかもしれないと思った。学校行事はいつもパスをしている。
高校二年の夏。私はエアコンが効いている店で、バイトをしていた。欧米の雑貨の方が店では上で、ネットでも上だ。アジアの雑貨も売り上げに十分貢献しているが。中学生の少女にも人気があるらしい。親友が親友の後輩に、PRしてくれたから、お小遣いで買える商品を買っている。中学生に上がってきたばかりだろうと思える。まだ初々しいカップルも、彼女の誕生日プレゼントを買いにくる。気軽に買える値段の商品のため、若い世代に人気がある。
ネットもいい感じみたいで、非常に需要がある店に成長した。たまに、男から誘われるけど「旦那がいますので」という言葉で、ご遠慮している。
昼食のため、旦那が店番につく。私はまずミネラルウォーターを飲んで、コンビニで買った冷やし中華を食べている。腹を満たして、少し横になる。パソコンの作業を少しずつ開店前に教えてもらっている。まだまだ作業は覚えられないが。パソコンが苦手で、どうもうまく使いこなせない。パソコンは中学校の時に、触って以来だ。
ブラインドタッチができるようになり、物覚えが悪い私を、根気よく教えてくれたため、私にもネットの注文や返品も、メールで注文してくるため、発注作業までできるようになった。
「意外と根気があるな」
「そうですね」
「敬語で話すなよ。気味が悪いぞ」
「ありがとう。後1年半で、卒業するから。フルタイムで働けるね」
「そっか。それは有り難い。ネットばかりではなく、直接来てくれるお客を大事にしたいからな」
「この先……」
「ん?」
「……バイトの給料は上がるの?」
「さあね。今の弔詞で行けば、50円アップしてもいいぞ。午前10時から夜の9時まで、働ければかなりの額になるぞ。俺も女の意見も取り入れたいし。統計で一番客の少ない木曜日を休日に変更しよう」
「妾でもいいんだよ」
「そんなご身分じゃないよ」
夏休みが終わる最後の日。太陽に空気が燃える夏。私は親友から久しぶりにメールが届いた。
「勉強疲れ。最悪。図書館で頑張っているよ」
「合格へのおまじないをかけてあげるから、大丈夫」
脈絡のないメールをこなしながら、受験生は大変だなと人事のように思った。
秋雨が降る。もうクラス中が成績に一喜一憂している頃だろう。私は屋根つきの少し遠い公園で、ずっと秋雨を見ていた。いつか、止む雨は、いずれ虹なって消えうせる。一人で考えたい時もある。春は近くの公園で、秋は小高い丘のある公園で過ごしている。桜の蕾は、寒々しくて見ていられない。だから、自販機すらないこの公園の、桜や紅葉が映えないこの場所に行く。
嬉しかった思い出ばかり思い出す。初めてバイトの面接を受けた時の事。あの時はがちがちの敬語だった事。親友と友人たちと美味しいスイーツを食べた時の事。色々思い出が凝縮している。その凝縮されたものを、いくら大切にしても、いずれ忘れる日が来る。それが時の宿命というのだろう。
いつか懐かしむようになるだろう。まだ学生生活の中間点だ。まだいい思い出が作れるはずだ。そう思うと、あの親友と友人の顔が浮かんできた。そしたら、雨が小雨になっていた。私は心の気分がすっきりして、この公園を立ち去った。




