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ある日、超能力に目覚めましたが、そんな事より彼女ができました。  作者: 明日栄作
第一章。彼女は、超能力と共にやってきた。
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いつも通りの風景

映画を観た後は、感想を言い合うもの!


そういう回です。

映画のスタッフロールも終わり、少しの沈黙の後。


「そろそろ、私達も出ましょうか」


と、立ち上がった村川が俺の方を見て何事もなかったかのようなに話しかけてきた。


「お、おう」


俺は慌てて立ち上がり、早歩きでさっさと歩いて行く村川の後を追い映画館を出た。


外に出ると、映画を観ている時から腹が減っていた事を思い出す。


「あ、あのさ映画も観た事だし、感想とかの話も兼ねて昼飯で食べに行かないか?」


「そうね、ちょうど私もお腹が空いたと思っていた所だし行きましょうか」


さっきの事もあるし、今すぐ帰りたいと言われてもおかしくなかったが、村川は普段と変わらぬ口調で俺の提案に同意してくれた。


「この辺だと……」


そう言って、俺は昼食を食べられそうな店を探そうと辺りを見回していると


「近くに、ファミレスがあるみたいよ?」


と、スマホの地図アプリで調べた周辺の地図が映った画面を俺の方に向けて、村川がくすくすと笑いながら言った。


その後、村川の近くのファミリーレストランに行こうと言う提案に同意する。


地図で見た道に従って、俺達は映画館から徒歩十分程度の所にあるファミリーレストランに向かって歩いて行く。


休日のファミリーレストランにしては、店内の混み具合はそこそこで、愛想の良さそうな女性店員に「何名様ですか?」と聞かれた。


なので、こちらも笑顔で「2名で」と答えると、背中に鋭い視線を感じつつ席へと案内された。


案内された席は隣のテーブルに人は居らず、落ち着いて話が出来そうな壁際の席で内心ホッとした。


ファミレスに来ることはあまりない俺がメニューを見て何を注文するか悩んでいると、村川が何かを訴えるように力のこもった目で、こちらを見ている。


しばらく無言で見つめ合った後、村川が「はあ」と不満を隠そうともしないわぜとらしいため息を吐く。


「そろそろ私にもメニューを見せてもらっていいかしら?」


と、ニッコリと顔だけの笑顔を作り、前に突き出した手で手招きをしてメニューを催促している。


「お、おう、すまんすまん」


俺はようやく村川の言いたい事を理解した、と言うかハッキリ言われたのだから当然なんだが。


俺はメニューをパタパタと揺れる村川の手のひらに置いてやる。


それから、しばらく村川はブツブツとひとり言を言っていたかと思うとメニューを俺に差し出した。


「どうも、それで誠くんはもう決まった?」


俺はメニューを受け取ると、一瞬もう一度開くか迷ったが、結局そのまま元あったテーブルの隅に置いた。


「おう、俺も決まってるぞ」


そう告げて、俺は店員さんを呼ぶ為、テーブルの呼び出しボタンを押す。


すると、ピンポーンという音が鳴り、五分ほどで気怠げな男性店員が注文を取りに来てくれた。


「はい、ご注文お決まりでしたらどうぞ〜」


「えっと、ハンバーグセットを一つと……」


自分の注文を言い終えた俺は、村川に目配せして自分の注文が終わった事を伝える。


すると、このタイミングで自分にまわってくると思わなかったようで、虚をつかれて目を見開いて「私!?」とでも言いたげな表情で驚いている。


「え、えっと、それじゃあ私は……チーズケーキとコーヒーで」


それを聞いて、今度は俺が驚くいて思わずボソッと「少なっ!?」と声に出してしまった。


村川が注文を告げると、店員は「かしこまりました〜」と言った後に、注文を繰り返して店の奥へと去って行った。


いくら女子でも昼食にそれは物足りないだろう。


村川はダイエットでもしているのだろうか?


「お前、ダイエット中なのか?」


なんとなく気になって聞いてみる。


「なんのことか分からないけれど、それは私がデブって言いたいのかしら?」


と、殺意のこもった目で睨まれた。


「いや、落ち着けって、お腹減ってる割には少食だと思ったんだよ」


俺の言葉を聞いて、村川は納得してくれたようで睨むのをやめて、持っていたフォークを置いてくれた。


「別に少食というわけではないけれど、なんとなくお腹いっぱい食べたい気分でもなかったのよ」


「そうなのか、まあ、お前がそう言うならいいか」


と、会話が終わった所に俺たちが頼んだハンバーグセットとチーズケーキが良いタイミングでやってきた。


実の所たくさん食べたい気分じゃないというのは、俺の方も同じだ。


さっきの映画館での村川を見てから、その事ばかり考えていて、正直食事どころではない。


「食べないの?」


声をかけられて、思考の海に潜っていた俺が前を見ると、チーズケーキにフォークを刺した村川が心配そうにこちらを見ていた。


「ああ、わるい。少しボーっとしてた」


「そう、それならいいけど……そういえば、映画はどうだったかしら?」


村川はまだ何か言いたげだったが、その事とは違う話題を口にした。


「あ〜なんていうか、俺にはよく分からなかったかな」


「そう」


俺の正直な感想に、村川は自分から聞いたにも関わらず、さほど興味もなさそうに答える。


「てゆうか、あの話って結局ハッピーエンドなのか? それともバッドエンドなのか?」


このまま、会話が終わるのも釈然としないので、今度は俺の方から聞いてみた。


「それについては、意見は別れそうだけど、誠くんはどっちだと思ったの?」


が、村川は俺の質問を曖昧に答えると、質問を返してきた。


「俺は、喉の奥にこびりつくような後味の悪いハッピーエンドって感じたな、村川は?」


「紛う事なきバットエンドだと思うわね、私は」


即答だった。


俺が言い終わるや否や即答で、村川はそう言った。


「そうか?  確かに別れはしたけど主人公は最後幸せそうだったじゃないか」


「ええ、主人公は確かに幸せそうだったわね。自分が好きだった人が思ってたのと違ったから早々に諦めて別れた後に昔の女に慰めてもらって、程々に幸せにそうだったわ」


「お、おう。だろ? じゃあなんで、あれがバッドエンドなんだ?」


俺がそう言った瞬間、村川から凄まじい怒気を感じて、息を呑んだ。


「なんで? そんなの自分が好きな人と付き合って別れておいて、何事もなかったかのように違う女に乗り換えた男が幸せそうなのよ? 守ろうとしていた物を何一つ守れていないのに、もうどうでもいいことのように笑っているのよ? これのどこがハッピーなの?」


うわぁ、そりゃ好きなモノの話だし、仕方ないけど、有無を言わせないという圧が凄いな。


「わ、わかったから、少し落ち着けよ」


迫力に押されつつもなんとか村川をなだめる。


「そうね、ごめんなさい。ほんの少しだけムキになってしまったわ」


少し言い過ぎたと自覚しているのか、村川は顔を赤くしている。


「お、おう。意見なんて、人それぞれだしな!」


そんな、村川を気遣った俺の言葉は……


「ええ、そうね。誠くんもそういうまともな事が言えたのね、少し関心したわ」


と、一瞬で調子を取り戻した村川によって、台無しにされるのであった。


「いや、俺はいつもまともだよ!  おかしな事を言う張本人が被害者を装うな! 黒幕は何時だって、お前だ!」


俺の渾身のツッコミを受けて村川はくすくすと、笑っていた。


その楽しそうに笑う顔は、村川にしては幼さを感じる無邪気な笑顔で──


そんな表情を見ていると、悪い気がしない俺も、大概なのかもしれないな。

最後まで、読んでいただきありがとうございます。

次はもっと面白いものを書けるよう頑張ります!

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