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ある日、超能力に目覚めましたが、そんな事より彼女ができました。  作者: 明日栄作
第一章。彼女は、超能力と共にやってきた。
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映画上映中のトイレは、運命の分かれ道

お出かけ回の続きです。


それにしても、ずっと喋ってますね。

他愛もない話をながら歩いて、俺たちはようやく本来の待ち合わせ場所である、駅前に到着した。


今日はまだ始まったばかりだというのに、この時点で、すでに疲れていた。


そんな俺とは対照的に村川は先程の事など、もう忘れたかのように顔から笑みを浮かべている。


いや、まだ俺の足の痛みは鮮明に残ってるんですけどね。


「それで、なに駅に向かうんだ?」


そんな心の嘆きは全く顔に出さず、俺は目的の駅に向かう為の切符を買おうと──


先に切符を買って戻ってきた村川に聞いた。


「ああ、切符なら今ちょうど誠くんの分も買っておいたから渡しておくわね」


そう言って、村川は財布から切符を二枚取り出すと、一枚を俺に差し出してきた。


「いや、そんなのわるいだろ。切符代いくらだ?」


「いえ、ほんとに大丈夫よ。けど、あなたが本当にわるいと思うなら、これは貸しにしておいてくれない?」


「貸し?」


「ええ、そこまで無理なことではないけれど、私がお願いがある時に貸しを返すということよ」


「いや、普通にお金を返すでよくない?」


村川がなにを考えてるのか、耳栓をして能力を封じている俺には分からない。


だけど、コイツに貸しを作ることがめんどくさい事になるのはなんとなく分かる。


「いえ、お金で返すという事なら私は絶対に受け取らないと誓うわ」


「いや、そんなこと誓わなくていいからお金を受け取ってくれ……」


そう言って、俺が差し出した硬貨を無視して村川は、俺の顔を睨みつけている。


さて、これはどうしたものか、村川の言うとおり貸しにするか、力尽くでもお金を返すか、貸しもお金も返さないのか。


一つ目は明らかに怪しいにおいがするし、二つ目は今から一緒に過ごすからには、ここで揉めるのは少し避けたい。


そして、三つ目に関しては例え村川がなにも思わなくても、ここでなにもせずにいるのは俺が釈然としないわけで。


「考え込んでるところわるいけれど、早く行かないと上映時間に話に合わなくなりそうよ」


一人で思考を巡らしている俺に電光掲示板を指差しながら村川が告げる。


「いや、お前がお金をさっさと受け取ってくれたら早く行けるけどな」


「とりあえず、その話は電車に乗ってからにしない?」


「いや、もう決めた」


というか、結局これしかなかったのかもしれないな。


「どうするの?」


「今度、貸しを返すよ」


結局、俺はなんの変哲もない、友達を信じるという選択肢を選ぶことしか思いつかなずに、村川の思い通りの答えを選んだのだった。


電車に乗って数分後、隣町についた俺達はそこから更に十分ほど歩いて、ようやく目的地である映画館にやって来た。


「やっと着いたな」


「そんな大げさに言うほどのことではない気がするけど、まあ、そうね」


俺は映画は小学生の頃、両親に連れられて、その時流行ってたアニメの映画を観にきて以来で、正直なにをどうするのかすらわからない。


中に入ると村川はなにやら機械の画面をタッチして操作していた。


しばらくして、村川がなにかの紙を手に持って戻ってきた。


「なんだそれ?」


「なにって券に決まってるでしょう? これを買わずにどうやって映画を観るのよ」


当然のように語る村川の言葉に俺は愕然としていた。


今の時代映画のチケットは、自動販売機でドリンクを買うように機械の画面を数回タッチしてお金を払えば買えるらしい……!?


「俺が映画を観に来ていない間に、そんなことになっていたのか……」


「いや、そんなに驚くほどのことじゃないと思うけれどね?」


「まさか、友達がいないことでこんな事にも気付けないなんて……」


「それはただ誠くんがインドアのだけだと思うけれど…… というか、そろそろ券を受け取ってくれないかしら?」


そう言って、村川は先ほどの駅の時と同じように俺に券を差し出してきた。


「おい、まさかこれも……」


「貸しにしておいてくれるかしら」


「やっぱりかよ」


「でも、別々に買うより私が二席分買った方が早いでしょう?」


「それはそうだと思うけど、じゃあチケット代のお金を受け取ってくれよ」


「それは拒否するわ」


「えぇ」


はあ、コイツほんとめんどくさいなぁ。


さっさとお金を受け取って、話を終わらせてくれよ。


「あまり時間もないし早く決めてくれないかしら」


「いや、俺がずっと言いたい事をお前が言うのやめてくれる?」


「誠くんが言わないから、私が言っていいのかと思って」


「うん、そんな早い者勝ちみたいなルールはないぞ?」


時間がないと言っておきながら、どんどん話が脱線している気がするのは気のせいだろうか。


「ああ! もう貸しでいいから、チケットくれ」


「最初からそうやって素直に受け取ればいいのに」


そう言って、村川は俺に映画の券を差し出した。


そういえば、今日観る映画のタイトルを俺はまだ知らなかったけれど、村川から受け取ったその小さな紙には「善処します」というタイトルが書かれていた。


うわぁ、見事にどんな映画かわからねぇ。


「なあ、これってどんな映画なんだ?」


「善処する話なんじゃないかしら」


いや、そんなこと聞いてねぇよ! ていうかそんなこと聞かなくても一目瞭然だわ!!


「いや、そういう事じゃなくてさ、どういうジャンルなのかと思ってさ」


「それは観てればわかると思うわよ。 ほら、そろそろ上映時間だし私達も向かいましょう」


「お、おう、そうだな」


結局、村川は映画の内容は全然教えてくれなかったけど、俺は村川が楽しそうならそれでいいのかもしれないと思ってしまっている。


それから係員に券を見せて、入場口を通る。


自分の券に書いてある番号が記された扉の部屋の入って、決まった席につく。


上映までの間の映画の予告が流れたり、上映中の注意事項などが流れていた。


「おお、久しぶりだからなんか少しワクワクしてきたな」


「そうね、その感覚はわかるわ」


村川はスクリーンから目を離さずに俺の問いに答えている。


俺もこれ以上話しかけるのはわるいと思い喋るのをやめて、辺りを見渡したが村川の言っていた通り客の数は少ない。


だけど、ここに居る人達のほとんどが男女二人で観に来ている。


つまり、もっとも怖れていた恋愛映画を女友達と観るという、俺にとって一番避けたかった状況になっているようだ。


俺が一人でどんどん焦っている中、ついに今日の目的である映画が始まった。


俺は最後に村川がどんな顔をしているか気になり隣をちらっと視線を向ける。


すると、村川は映画が始まったという高揚感からか、少し緊張しているような余裕のない表情をしている気がした。


まだ始まったばかりなのに、村川は相当この映画が好きなんだな。


さて、どんな映画なのかは未だにわからないけど、村川がここまで真剣な顔をする映画がどんなものなのか少し楽しみだ。


俺はそんな期待を胸に前を向き、さっきよりもスクリーンに集中して画面の中の物語を楽しむ事にした。

最後まで読んでくれた方ありがとうございます!

次はもっと面白いものが書けるように頑張ります‼︎

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