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ある日、超能力に目覚めましたが、そんな事より彼女ができました。  作者: 明日栄作
第一章。彼女は、超能力と共にやってきた。
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金曜日の「また明日」

優花(ゆか)が転校してきて、数日後の放課後の話でございます。

他の生徒達もちらほらと歩いている放課後の帰り道を、今日も村川と二人きりで歩いている。


あの日から俺と村川は毎日一緒に帰っている。


村川とは学校でもぼっち同士ほとんど一緒にいるから、クラスメイトの視線が痛い。


まあ、この前転校してきたばかりの女の子とクラスの目立たない奴が親しげに話していたら、そりゃあ気になるのもわからないではないけどな。


「気になっていたんだけど、誠くんは人の心の声を聞けば、友達くらい簡単に作れるんじゃないかしら?」


村川はぼっちの俺を心配しているのか、唐突にそんな事を言ってくる。


「確かに出来なくはないけど、学校みたいな人が集まる場所だと、どれが誰の心の声かわからない事があってな、その中から俺と友達になりたいと思ってる人を探すのは難しいんだよ」


それに、もし見つけたとしても俺が『友達になろう』と、相手に急にそんなこと言っても素直に了承するとも思えない。


「誠くんの能力も私の能力と一緒で、便利なだけではないものなのね」


「そうだな、一日中片耳に耳栓をはめてないとうるさくて授業に集中出来ないし、村川とも会話もまともに出来ないだろうな」


「それは大変そうね。でも、誠くんこの前授業中に寝ていたじゃない」


「だ、だから眠れたんだよ! 耳栓で心の声が聞こえてないから」


「でも、寝ていたら心の声どころか先生の声も聞こえないんじゃない?」


「いや、別にうまいこと言おうとしなくていいからな」


「……チーズケーキ」


「いや、美味いものも言わなくていいから」


てゆうか、美味いものでケーキって分かりづらくて、一瞬素で戸惑ったよ。


「……満員電車」


「いや、せまいものも……って、なんだよこれ!?」


さっきから俺達、ずっと二人で何してんだよ!


俺が大声を出してツッコんだことで、周りの生徒達の視線が俺達の方を向いていた。


けれど、そんな周りの視線を気にした風もなく村川は会話を続ける。


「誠くんって明日は暇だったりするの?」


「いや、だから自分が始めたくせに急に飽きるなよ……」


お前がすぐ飽きるような会話に、巻き込まれるこっちの身にもなってくれ。


「それはもういいから、暇なの? 忙しいの?」


「明日は暇だけど、それがどうかしたのか?」


てゆうか、友達のいない奴の土曜日が忙しい方が珍しい気もするんだけど。


「暇なら一緒に映画を観に行かない? 明日は私が観たい作品は席が空いてたから集中して観れそうよ」


「そうなんだ。特に予定もないからいいけど、なんで俺?」


村川と好きな映画の話などした事がないので、誘われた理由が分からず聞き返すと


「この街に誠くん以外の友達なんていないからに決まっているでしょう?」


村川からはとても涙ぐましい答えが返ってきた。


「お、おう、そうか、じゃあ一緒に行くよ」


てゆうか、俺よりお前が友達作れよ。


大人しくしてれば、外見は普通に可愛い女の子って感じだし、友達くらいすぐできるだろ。


「じゃあ? 別に無理強いをしてるわけじゃないから、嫌なら行かなくても大丈夫よ」


「いや、行きたいです! 一緒に行かせてください!」


「誠くんがそこまで言うなら、一緒に行きましょうか」


「いや、おかしいだろ。なんで誘ってきたお前が偉そうな態度になってんだよ……」


「え? 今何か言った?」


「いや、言ったよ」


それにもし俺がここで言ってないって言っても、無理があるくらいには、喋ってたよ。


「とりあえず、誠くんも行くってことでいいわね?」


「ああ、もうそれでいいよ」


正直、この会話が終わるならどっちでもいいよ。


「まあ元気出して誠くん、明日観る映画は面白い筈だから、ね?」


「俺から元気をなくした原因のお前に、それを言われても釈然としないけどな」


「まあ、その話は置いておいて、行くと決まったなら時間と、待ち合わせ場所くらいは決めておきましょう」


「そうだな、明日になってから慌てるのも嫌だしな」


「そうよ。明日になってからダラダラと時間のことや、待ち合わせ場所について話してるうちに無駄な時間を過ごすのは避けたいわ」


「ああ、そうだな。それは俺も避けたいな」


確かに、そういう時って時間を決めた人が全然準備してなかったり、寝坊したりするんだよな。


それで待たされてる方は、別に俺達だけで行きたいほどではないから、あいつ来るの待つかとか言って。


待ってから十分とかそんなに怒れない時間で来るからモヤモヤして終わるってことがなくもないからな。


「誠くんも、今日は夜中にゲームなんてしたりしないでね」


と、村川は笑顔で言っていたが、村川の瞳だけは明らかに俺のことを威圧していた。


「ははは! す、するわけないだろう?」


「そうよね、そんなことするはずないわよね」


「そ、そんなの当たり前だろう」


よって、今日やるはずだった現在作っているアイテムのレア素材収集は後日にせざるを得なかった。


その後、俺達は待ち合わせの時間と場所を話し合い、各々の家に向かう分かれ道で別れの挨拶を交わす。


俺は「じゃあまた明日な」と、いつもと違う金曜日の別れの言葉に少し嬉しさを感じて、自分の家に向かって歩きながら、明日のことを考える。


それにしても、村川が観たい映画どんなのだろうか?


意外とアクションとかホラーとかが好きだったりしてな。


それか字幕版の外国の映画とかだったら寝てしまいそうな自信しかないな。


もしも、恋愛物だったら周りにカップルばっかりで友達と行くにしてはかなり気まずそうだよな……


「……あ」


俺は村川が友達であるということからすっかり重大なことを忘れていたが、この時やっと気付いた。


休日に男女二人が映画を観に行くという、側から見たら勘違いしかされなさそうなミッションに、自分が挑もうとしていることに。

最後まで読んで頂いた方、ありがとうございます

次回はこれより面白いモノが書けるように頑張ります!

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