目的の達成!
続き書きました〜
前回、主人公とヒロインがイチャついている最中に妹が帰って来て、気まずさ最高潮の話の続きです!
自分の部屋から閉め出された俺は、とりあえず室内に戻る事を諦めて、一階の浴室へと向かう事にする。
一階に降りると先ほどまで、スネて部屋に籠もっていた妹の安子が、リビングのソファに膝を抱えて座っていた。
バラエティ色が強くすでに大喜利大会へと主旨を変えているクイズ番組を、真顔で眺めながら氷菓子を口にくわえている安子に、俺は注意する。
「お前、風呂入る前から制服姿で、しかもそんな短い丈のスカート履いてなんつう格好で座ってんだ、シワになるぞ」
「別にお兄ちゃんが出たらすぐ入るし、こんな膝丈のスカートなんて今どき短くないから、お兄ちゃんの学校これより短い丈の人しかいないでしょ?」
「いや、そうゆう事じゃなくて、その丈のスカートを履いて、テレビの中のタレントさん達にお前の下着を見せつけてるその座り方をやめろって言ってんだよ」
「はいはい、ほんとお兄ちゃんあたしの座り方とかにうるさいよね」
「お前が他所で、そんな事やってたらこっちまで恥ずかしいからだよ」
「他所って言われても、あたしの学校女の子しかいないし、見られても特に困ることなんてないけど?」
「それでも、お前も一様女の子なんだから、ちょっとは恥じらいを持て」
「恥じらいは、兄の存在に全部使っちゃってるから」
「兄に恥じらいを全振りするな」
「別に全振りはしてないけど、元々カンストしてたし」
「もっとわるいじゃん! なにお前、俺への恥ずかしさカンストしてて、よく面と向かって話せるな、面の皮鉄仮面かよ」
「ダイヤモンドだけど?」
と、安子が訳のわからないマウントをとる。
「あー通りで最近、ごつごつして……」
「……あ?」
と、俺が言いかけた瞬間、座った目をした安子がドスの効いた声で睨みつける。
「ないと思ったよ! たまご肌ってやつだろそれ? いや〜さすがさすが!」
慌てて褒める俺の言葉に
「ちょっと褒めすぎだよ〜いくらほんとのことだからって」
ちょろ。ちょろすぎて兄としては逆に心配になってきた。
「あ、じゃあ俺はそろそろ風呂入ってくるから、そのまま寝るなよ?」
「寝ないって、久しぶりの家でお風呂入らず寝るとかありえないもん」
うちの風呂は特別広いとかそんなのないけど、やっぱ家の風呂が一番なのかな?
まあ、確かに寮の風呂って落ち着かなそうだし、たまには安子ものんびり湯船に浸かりたいとか思うのかも知れないな。
「そっか、じゃあ俺はささっとシャワーでも浴びて出てくるな」
「は? お兄ちゃんが入んないと意味ないんだけど」
「? 俺がさっさと上がった方が安子がゆっくり湯船に入れるだろ」
「いや、今のアレだった、言い間違えてた。お兄ちゃんも入んないと意味ないって言おうとして間違えてた」
「うん? そんな丁寧に言い直さなくても分かってるけど」
まあ、兄妹だし言い間違えなんて、普通に聞き流してたんだけどな。
「うっさい! さっさとじっくり湯船浸かってこいバカ!」
さっさとじっくりってなんだよ。
身体だけ湯船に置き去りして、気持ちだけで湯船とついでに身体も抜け出せばいいのか?
「はいはい」
我が妹ながら、安子の騒ぎ出すタイミングはよくわからない。
妹も思春期だということか。
それにしては父さんや俺が入ったお風呂に入ることに、なにも文句を言わないのは偉いとは思うが。
まあ、上から目線の感想を言ってるけど、俺と一つしか年変わんないんだよな。
★
身体を少し熱いお湯で洗い流して、すでに少しぬるくなり始めた湯船に肩まで浸かって、疲れた身体が重力から解放されたように身体が軽くなった瞬間。
喉の奥から自然と、あぁ〜と声が出た。
今日は色々あったし妹と彼女の顔合わせは最悪のスタートを切ってしまった。
けど、それはこれ以上は悪くならない事として割り切って考えて、風呂くらいはゆっくりしようじゃないか。
そしたら部屋に戻った時には優花の機嫌も良くなっていることだろうしな。
そんなのんびりとしている俺の思考に、浴室のガラス戸を叩く音が割り込む。
「どうした?」
「ねえ、お兄ちゃんもう三十分は経ってるけど大丈夫?」
おっと、少しのんびりし過ぎていたらしい。
「ああ、もう出るからちょっと待ってな」
俺はすっかり冷めたお湯から出て浴室にあるリモコンの追い焚きのスイッチを押しながら答える。
「いや……あたしは大丈夫なんだけど、さっきからお兄ちゃんのスマホの通知音が浴室から流れ続けてるから、大丈夫かなって」
「……安子、今すぐお兄ちゃんの部屋に行ってくれないか?」
「うん、今のでお兄ちゃんの彼女がこわい人なのは分かった」
「そうか、じゃあ……」
「だからこそ、それはやだ」
そのまま、脱衣所から出て行く妹の足音を聞きながら俺は少し待って脱衣所に出た。
★
俺の部屋だけ重力が変わったのかと錯覚して、いつもより重く感じるドアを開く。
「随分長いお風呂だったのね?」
そして入るやいなやベットに腰かけている優花が、にっこりと笑顔で隠しきれていない怒気を漂わせながら俺に問いかける。
「ちょっとぬるくなってたけど、良い湯だったな」
あはは、と引きつった笑顔で、とりあえず場を和ませようと試みる。
「ごめんなさい、私が先に入ったから冷めてしまってたのね。今度からはちゃんと湯船の中”も”煮え立たせておくわね」
「いや、俺はぬるいくらいが適温だからあのくらいで丁度いいけどな」
「そうよね、だから彼女を自分の部屋に置き去りにして、数十分も悠々と浸かってられたんだものね」
「……いや、それに関してはすまなかった」
湯船に入って一息ついたら、そんなに時間が過ぎてるとは思わなくて完全に油断した。
「それで?」
「? いやだから申し訳ないよ」
「そうじゃなくて、申し訳ないと思うならできれば誠意が見たいのだけれど」
「分かった。じゃあ優花はベットで寝ていいぞ! 俺はリビングのソファで寝るからな」
「それが誠くんの、心が聴こえるあなたにとっての誠意なの?」
「ぐっ! そ、それは俺の能力はプライバシーに関わるからなぁ」
「じゃあ、私としても出来る限り自分のして欲しい事をやって貰いたいから、聴いてもらっていいわよ」
優花が自分の横を、ポンポンと叩いてここに座れと促す。
正直、聴く必要などなく優花がここで俺にして欲しいことなんて分かりきっている。
俺は自分の能力を起こして優花の心の声だけを聴く。
(妹さんの乱入によってお預けになったままのくちづけを所望します)
なんか表面上の態度と違って、すごくかしこまっているけど、俺の彼女は本当に怒っているのだろうか?
まあ、いいか。聴く前から分かってたんだし俺のやることはなにも変わらない。
「わりい、ちょっと聴こえなかったから……」
と、おどけようとした俺の顔を優花は鋭意な目つきで睨みつけて、続く言葉を喉の奥へと追い返す。
「ごめんなさい、少し聞いてなかったわ。実は少し焦ってしまった所為でこの未来は私も見えてないの、だからもう一度言ってもらってもいいかしら?」
「あ〜うん。ちゃんと聴こえたよ」
「じゃあ、してくれるのね?」
「あ! その前に歯とか磨いた方がいいよな?」
する前に、気づけてよかったと俺が安心していると。
「…………はぁ、もういいわ。好きなだけ磨いてから、ぐっすり眠ってね」
口を尖らせた優花が、こちらに顔も向けずに言った。
割と真面目に言ったつもりだったけどなぁ。
どうやら最後の起爆スイッチを入れてしまったらしい。
まあ、でもそれなりに気合も入れて来てくれたであろう彼女に土産話の一つも渡さずに帰らす訳にも行かないし覚悟を決めようか。
俺は真横でわざとこちらを向かないようにしている優花に顔を近づけ、そのまま口づけをした。
いきなりのことに驚いて瞬きを繰り返し戸惑っている様子の優花が、口元を手で覆って俺を見つめている。
「なんかここまでされて、今日を終わるのは忍びなかったからな。じゃあ俺もう眠くてしょうがないから……」
そう言って、急ぎ足でドアを開けた俺の背中に優花の呟いた声が届いた。
「…………え、頬?」
「おやすみ!」
そして、眠くて仕方なかった俺は翌朝優花が帰る時間まで、一睡もできなかった。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
なんとかイチャつかせられたかと思っているので、僕的には満足です!
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では、よろしければ次回もお付き合いくださいませ。