お手上げ
続き書きました!
今回は帰り道で愛してるゲームをしていた話の続きの話です。
よろしくお願いします!
月曜日の帰り道で、我が彼女の村川優花の愛してるゲームとかいうふざけた遊びに付き合ったせいだろう。
あの日から優花の態度が少し積極的になってきていて。
そのせいか、俺は最近寝つきが悪くてあまり眠れず、今朝の寝起きは眠気を引きずった最悪の気分で目が覚めた。
とりあえず、気分が悪くても時間は待ってくれはしないので、俺はのっそりと起き上がって部屋を出る。
階段を一段一段降りていると、朝ご飯の匂いがここまで届いてくる。
食欲をそそる匂いに自然と腹の虫が鳴る。
と、階段を降りきる一歩前に、玄関で両親が二人揃っていつもの服装とは違いお洒落をして立っている。
「ふぁぁ、父さん達どっか行くの?」
あくび混じりに聞いた俺に呆れ顔になる父。
「あのなぁ、昨日言っただろ? 明日は結婚記念日だから有給取って母さんと温泉に行くって」
そういえば、そんな事言ってた気がするな。
俺が風呂上がりにソファーで、ゲームをしている時に『明日からしばらく家を空けるから戸締まりはしっかりしておけよ』とかなんとか。
「しかも、二泊三日よ! うんと羽伸ばすわよ〜」
久しぶり……でもないけれど、はしゃいでる母を見ているとこっちまで楽しい気分になって微笑ましくなってくる。
「ああ、そういえば私たちが家を空ける事優花ちゃんにも言っておいてあげたからねぇ、あんたも楽しみなさいよ」
前言撤回、このニヤニヤした笑顔のせいで俺の気分が地に落ちた。
ゲームや惰眠で過ごすという俺の三日間のスケジュールは始まる前に終わってしまった。
「てゆうか、ほんと何してんだよ。学校の連絡網を悪用するんじゃねえよ」
「連絡網? 昨日、普通にメールで伝えたわよ?」
は? おいおいおいおい、マジかよ。
母と彼女がメル友とか嫌すぎるだろ、それなんの恨みがあってやってんだよ。
通りで優花が作って来た、弁当の中身が俺の好物ばかりな訳だ。
アイツ、わざわざ予知夢で母さんから彼氏の好物聞いて弁当作ってたのかよ。
「……父さん」
俺は子犬の様な潤んだ瞳で、すがる思いで父さんの顔を見つめる。
「まあ、ほどほどにな」
サッと、父さんは俺から目を逸らした。
「裏切り者ぉぉ!」
両親を見送った後、俺は作ってあった卵焼きを電子レンジで温めて同時に味噌汁も温めようと火をかける。
はあ、でも、本当にまいったな。
優花と二人で家で過ごすとか、考えただけで嫌すぎるし怖すぎる!
ん? というか優花はすでにこの事を知っている筈だよな? なんでアイツ、俺に言わねんだろ。
そう考えた時、俺の頭の中にはドヤ顔で俺が驚いているのを眺める優花の姿がはっきりと見えた。
「はあ」
そんな俺のため息に反応したのか電子レンジから、チーンと小気味のいい音が聞こえた。
それからご飯をよそって、味噌汁を汲んでから電子レンジから卵焼きを取り出して席について、少々温めが足りなかったぬるめ味噌汁をすする。
口に出汁の優しい味わいが、口に広がっていく。
その余韻が消えきらない内に卵焼きとご飯を交互に口に運ぶ。
ぶっちゃけ、ゆっくり朝ご飯食べてるほど時間はないのでかきこむ勢いで残りのご飯を平らげる。
その後、歯磨きをしている時に我が家のインターホンが鳴った。
急いでうがいをして、玄関の扉を開ける。
「おはよう、誠くん」
「おう、おはよう」
優花と朝の挨拶を済ませて、家の鍵を閉めてから家を出る。
「ちょっと、なに一人ですたすた歩いてるのよ?」
「え、早くしないと遅刻するぞ?」
俺のとぼけた態度には触れず、優花は徐ろにこちらに手を差し出してきた。
手を握れという事らしい。
やっぱり、誤魔化せなかったか。
出来れば、通学路では遠慮してくれるとありがたいんだけどなぁ。
「どうしたのよ? 今更、躊躇なんてしても無駄なんだから早く楽になりなさいな」
「へいへい」
俺は観念して、優花の手を握って歩き出す。
「ふふ、誠くんの手って、本当にあったかいわね」
優花はご満悦の様で、口元をふにゃふにゃにして強引に指と指を絡めてくる。
表情に似合わず、力強え!
「優花が楽しそうで、俺は嬉しいよ」
「ええ、私も嬉しいわ。もうこの手を離したくなくなってしまいそうなほどよ」
「うーん、それは流石に離してくれよ? 授業中とか不便でしょうがないし」
優花は少し真面目な顔になって
「……言われてみればそうね、私の場合利き手を繋がれているからノートも取る事が出来ないわね」
良かった。俺の彼女にはまだ理性が残っていたようだ。
曲がり角を曲がると、視界の先に俺たちの通う西南高校の校門が見えてきた。
優花は名残り惜しそうに、最後にぎゅっと手を握ってから俺の手を離した。
「ここまで同級生達の視線に耐えてくれてたお礼に、流石にクラスメイト達の前では勘弁してあげるわ」
俺は言い訳をしようとしたが、諦めて苦笑いで白状する。
「あ、バレてたのか」
「誠くん、さっきからキョロキョロし過ぎで相当怪しい人みたいになってたわよ」
くすくすと、口元を抑えて笑う彼女は不覚にも可愛いと思った。
なんだかんだで優しいんだよな、俺の彼女は。
「でも、まあ悪くはないからさ」
俺は自分の言おうとしてる言葉が、むず痒くて、少し無愛想な言い方になってしまう。
「帰り道でもまた頼むな?」
「?」
「えっと、だから、手を繋ぐの帰り道でも頼むなって」
「ああ、お安い御用よ。愛する彼氏の頼みならね」
優花はそんな真っ直ぐな言葉を、俺から目を逸らさずに言ってのけた。
俺はいきなりの言葉に少し逸らしてしまったけど。
「それに今夜は、お家デートもある事だしね」
と、微笑みながら当然のように彼女から放課後にデートの約束をねじ込まれた。
「あ〜」
俺は先に校門をくぐって、駆け足で下駄箱へと向かう優花の背中を見つめて思う。
そうだった。
俺の彼女って、なんだかんだで容赦がないんだよな。
そんな優花の後に続いて、下駄箱で靴と内履きに履き替える。
俺、今日もあまり眠れなそうだなぁ。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
次回からまたラブコメらしい話を書いていくと思います。
なので、よろしければ次回もお付き合いください。