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ある日、超能力に目覚めましたが、そんな事より彼女ができました。  作者: 明日栄作
第二章。彼女は、恋人に手加減をしない。
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夢じゃない

続きを書きました。よかったら読んでってくださいませ。


今回はくだらない雑談をしながら彼女の手作り弁当を二人で食べた話の続きです。

彼女の手製の弁当を米粒一つ残さずきれいに平らげた所で、ちょうど昼休みが終わりの鐘が聞こえてくる。


教室へと戻って、次の授業の準備をしつつも食欲を満たした後に求めるのは睡眠欲だというかのように、まぶたが重くなり残念ながら、これ以上の抵抗は俺には無理そうだ。


ここは後の授業のことも考えて、一旦寝ておいた方が良いというのが賢い判断だろう。


俺は机に置いた腕を枕にして、そっと目を閉じた。


そこから授業中、数学の教師が唱える眠りの呪文効果も後押しして、十分と経たずに眠りについた俺が、次に目を覚ましたのは放課後の教室。


どういう訳か、他の授業の記憶はない。


ここは見た目だけが同じだけの、別の教室なのか?もしかして俺が寝過ごしたのか?


「そんな間抜けな顔していなくても、あれからずっと寝ていたわよ」


「あーだろうな」


視線を向けた窓の外には、茜色に染まる空が見えた。


時間はすっかり夕暮れ時である。


「……帰るか」


「そうね」


引き出しの中身を鞄に詰め込み早々に準備を済ませて、教室を出た俺達は階段を降りて下駄箱に向かう。


「誠くんって、午後の授業って受けたことあるの?」


「それくらいあるに決まってるだろ?今日はたまたま眠気が限界だっただけだよ」


「夜更かしはお肌の天敵よ?」


「別にお肌の心配はしてないけど、そうだな。今日はすぐ寝ることにするよ」


たぶん、無理そうだけど。


元々の夜更かしの理由となったのが、目の前に居る村川優花が彼女になった事が原因だからな。


今朝の奇行のせいで、明日も朝から寝不足は避けられそうにない事が、この時点からすでに確定していた。


余計な話をしたせいで、今朝の出来事が脳裏によみがえって、後悔と安堵の入り混じるなんとも微妙な感情を持て余していると……


「うん?」


俺の下駄箱の中に一通の手紙が入っているのが見えた。


なんだこれ?今朝をこんなの入ってなかったのに、誰がいつの間に入れたんだ?


「どうかしたの?」


すでに靴に履き替えて、先に準備の整っていた村川が、肩越しに覗き込んできた。


「いや、なんでもないぞ?靴に石が入ってたんで出そうとしてただけだよ」


「そう?なら早く行きましょう」


「お、おう」


何故か咄嗟にポケットに入れてしまった、手紙の封を開けて、読む。


『急に手紙を送って驚かせてしまって、ごめんなさい。

だけど、私の胸の中にあるこの気持ちをもう抑えきれそうにないので、手紙で伝えることにしました。

私は吉田くんが日直になった時に重い物は全部一人で持ってくれて「女の子に重い物なんて持たせるなんて、嫌だしこれは運んでおくから黒板消すの頼んでもいい?」って言ってくれたよね?

それに、掃除の時間に他のみんながどこかに行っちゃった時も自分の場所の掃除は終わってるのにわざわざ一緒に手伝ってくれたよね?他にも私が困ってる時に助けてくれてほんとに本当ありがとね、私はそんな吉田くんが大好きだよ』


と書かれた手紙の差出人の名前が、『大好き』の下の辺りに綺麗な字で記されている。


村川優花、と。


俺は自然と、これを書いて下駄箱に入れた女の子に視線を向けていた。


村川は、俺の視線に気づいたのか、タイミングを元々心得ていたのか、声をかける前にすでに振り返っている。


お互い無言で、見つめ合う視線と視線だけがぶつかる。


先に静寂を破ったのは、やはりというか当然村川の方だった。


「えへへ、残念だったわね?ラブレターかと思ったかも知れないけれど、彼女からの感謝の手紙だったのよ!」


村川は照れ隠しなのかおかしなテンションになっている。


まあ、差出人はともかく内容は紛れもないラブレターにだったけどな。


「おう、でもなんでこんな回りくどく言うんだよ?感謝の言葉だったら直接言えばいいだろ」


「だって、今朝は結局私のせいで上手くいかなかったし、悪いとは思ってるけれど感情的になって痛いことしちゃう事だって少なくないでしょう?だから……」


嫌われないか不安だったって言うつもりだったのだろう。


「お前って……


諭す様に努めて穏やかで喋り始めた俺の言葉を村川は遮って、


「それもそう!村川とかお前って、私は誠くんって呼んでるのに、どうしては私の事は全然名前で呼んでくれないの?」


俺は一度、深呼吸をして仕切り直す。


「ゆ、優花は、馬鹿にしてきたり、殴ってきたり、振り回したり、急に不安がったり忙しい奴だな。でも、大丈夫だよ」


「どうして?」


「先に謝っとくごめん。でも、今だけは優花の思いしっかりと聞こえてる。だから言わせてくれ、俺も愛してるよ」


優花は泣き笑いの表情になって、言う。


「それは……ちょっとキモい」


「……え?」


分かっていても、一瞬心臓が、ギュッと締め付けれたような錯覚に襲われる。


「嘘。このまま死んじゃいそうなくらい嬉しい。でも、そうなっても良いかもってくらいに幸せ。あなたの分も生きていけそう」


「死んじゃうの俺かよ⁉︎」


そして、それは流石にどんなに幸せでも良いかもって思うな!


てゆうか、未来が見えてるのに、不安がるの早すぎだよ。


むしろ俺って、そんなに好きって気持ちが見えてないのか?と俺まで不安になってくる。


「今度こそ、ほんとに帰るぞ?」


そんな反省の意味も込めて、俺は少し強引に優花の手を握って歩き出す。


「ええ、そうね。帰りましょう、えへへ」


俺の彼女が聞いたことない笑い方で笑っているが、まあ、可愛いからいっか!


夕焼けに染まる校門をくぐる俺たちは今朝の気まずさなど、微塵も感じることはない。


強く握られたその手にしっかりとお互いの温もりを感じているから。


うん、嘘です。下校中、同じ学校の生徒達に嬉々の視線で見られ続けて、すっげぇ恥ずかしかったっす。


俺、頑張ったよね?

最後まで、読んでいただきありがとうございます。


ヒロインは自分の行動次第で予知夢で見た未来を変える事ができます。なので自分が見た未来の通りやろうとしすぎて失敗してしまうと、二人の関係も未来通りの関係になっているか分からなくなってしまうので、今回はこういう話になりました。

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