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ある日、超能力に目覚めましたが、そんな事より彼女ができました。  作者: 明日栄作
第二章。彼女は、恋人に手加減をしない。
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手作りのお弁当

さて、今回は前回渡されたお弁当を食べながらイチャイチャする回ですね。



売店のおばさんに見送られながら向かったのは校舎の裏手にある人気がなく、周囲が木々で囲まれたベンチだけがぽつんと置かれた場所。


村川が、転校してくるまでは俺が一人で昼食を食べるのに丁度いいと通っていた場所だ。


「さっきから私の話、聞いてる?」


「聞いてる聞いてる、え〜っとウミネコとヤマネコの違いについてだろ?」


はあ、とウンザリした様子で村川がため息をつく。


「聞いてなかったなら、素直に言ってくれていいのよ? あと言っておくとウミネコって猫じゃないわよ」


「は? じゃあ魚なの?」


「鳥よ、カモメの似た鳥。猫の様な鳴き声だからウミネコっていうんだそうよ」


「へ〜、じゃあなんかウミネコっていうよりソラネコって感じだな」


「そこまでして名前にこだわるのなら、私ならまずネコの部分を変えるわね」


「なるほどな、じゃあ村川はどんな名前が良いと思うんだ?」


「そうね、名前はともかくとして話が逸れすぎて言い忘れていたけれど、私に言うこと何かない?」


「髪を……切ったのか?」


「だとしたら、それは二日前に言うべき言葉だと思うけれど?」


二日前。


俺は村川に誘われて、二人で映画を観に行った日。


その帰り際に村川から突然、好きだと言われたが、事前に偶然聞こえた彼女の気持ちを知っていた俺は、その気持ちを受け止め返事をした。


つまり俺たちが恋人になった日である。


「いや、待ち合わせで会っていきなり足を踏みつけられて、そんな所気にしてられる状況じゃなかったよ!」


「ええ、誠くん彼女が横に居るのに窓の外のお姉さんを褒めてたわよね?」


「横に居たって、窓の外眺めてる俺の席の横に他人の振りして立ってたんだろ……しかも、あの時はまだ彼女じゃなかったし」


「そうね、未来の彼女よ。これからも何かあったら過去である現在の私が報復するから気をつけてね」


そんなことを満面の笑顔で言われて、自分の彼女に一ミリもドキドキしない事ってあるんだなぁ。


まあ、いいや。


いい加減昼食の時間が惜しいからな。


そう思って、俺が耳栓を外そうとすると。


「それは外さずに、答えて」


「もう、よくないか? 俺まだ弁当一口しか食べてないから早く食べたいんだけど」


「え、そう? そうね、そこまで言うなら、もう食べましょうか」


そう言って村川の話は終わり、お弁当を小さなひと口で黙々と食べ始めた。


結局、何だったのか分からず仕舞いだけれど、村川はすっかり上機嫌なので、よしとしよう。


「それにしても美味いな。村川って意外と家庭的なんだな」


村川は案外こういう家庭的なのは苦手で、お店の惣菜パン手渡されながら「私が用意した昼食よ」とか言われるとばかり思っていたぜ。


「意外とっていうのが余計だけれど、お弁当なんて昼食前よ」


いや、それを言うなら朝飯前だろ。


それだとただの食いしん坊だよ。


「じゃあカレーは飲み物ってか?」


少しからかうつもりで、俺はあえて村川のわかりやすいボケに乗っかる。


「そうね、カレーは乗り物よ」


「いや、流石に乗るのは汚いだろ」


「カレーに乗りこなすわよ」


いや、すでにブレーキを踏むタイミングを逃したけどな。


まあ、カレーにブレーキは最初からないけれど。


「カレイを乗りこなすわよ」


とか言ってたら、今度は魚で走り出していた。


「頼むもうやめてくれ、お腹いっぱいだから、満たすならお弁当で満たさせてくれ……」


「ごめんなさい、急にヒラメいちゃったものだから、つい魔が差してしまったの」


と追い討ちのドヤ顔をする村川


「だからぁ!」


やめろって! 彼女の手料理を美味しく食べるのを本人が邪魔して誰が得をするんだよ!


陽の光はしっかりと、俺達の座っているベンチにも届いてる筈なのに、俺は体調も悪くないのに寒気で、俺の身体が震える。


その後、彼女の妨害に遭いながらもお弁当は無事美味しく食べ終わる事に成功した。


「ごちそうさま」


「はい、お粗末さまです」


こういう普通のやりとりは何だか妙に照れくさいけれど、不思議と悪い気はしないよな。


「この雰囲気だったら、もう一押しで今朝のリベンジが出来そうだけど……する?」


「しねぇよ!! バカ!」


俺の声を張り上げた全力のツッコミに、村川はくすくすと肩を揺らして笑っている。


ったく、色々台無しだよ……ほんとこういう会話されなければ、俺達はもう少し良い関係築けそうなもんなのにな。


まあ……悔しながら、この笑顔には声を張り上げた甲斐があると言えばあるとは思うけれどな。


そんな残念な逢瀬に、だけど少しの満足感を覚えた俺の耳に、昼休みの終了を知られる鐘が聞こえた。


「あ、そう言えばさ」


「ん?」


俺は既に歩き出していた村川に、後ろから声を掛けた。


村川は振り返ると、俺を見て真剣な表情で次の言葉を待っている。


「この前から練習しててさ、耳栓なしでも心の声のONとOFFができるようになってたんだよな」


対象的に種明かしでもする様な笑顔で耳栓を人差し指で摘んで振っている俺を見て



「うん、知ってるけど?」


と、村川は穏やかな小さな子供に向ける慈しむ様な笑顔で言った。


かくして、俺の能力の成長で驚かすという目論見はあっさりと看破された上に、更にカウンターを受ける結果となったのであった。


こういうのは知ってても、普通は驚くのがマナーだろ……

最後まで読んでいただきありがとうございます!

次はもっと面白いモノが書けるよう頑張ります!

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