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ある日、超能力に目覚めましたが、そんな事より彼女ができました。  作者: 明日栄作
第一章。彼女は、超能力と共にやってきた。
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出会ったのは、初対面の友達。

書き出したばかりの若輩ですが、面白いモノを目指して書きました。


どうぞ、読んでみてください!

ゴールデンウィークも終わり、憂鬱な学校生活が始まった、五月初旬。


二日目の放課後。


夕陽が赤く照らすいつもと変わらない帰り道を、俺はいつもと違い一人寂しく歩いている。


昨日までならこの帰り道を気の合うクラスメイトと一緒に歩いていた。


「ん?」


そんな風に一人で感傷に浸っていると、前から視線を感じた。


天の川の様に透き通った綺麗な黒髪を揺らす、知らない学校の制服を着ている女の子が道の隅に立っている。


目が合うと、女の子はこっちを不思議そうに見つめてきた。


もちろん俺の知り合いにこんな可愛い子は居ないので、彼女の視線の意図が俺には全くわからない。


とはいえ、人見知りとまではいかないまでも自分から話しかける勇気と行動力など持ち合わせていない俺は、その子の前を何食わぬ顔で通り過ぎた。


しかし、どうやら彼女の方は俺に用事があるようで、勇気と行動力を引っ提げて、後からついて来ている。


さすがに、このままずっとついて来られても困るし、俺は仕方なく後ろを振り向いた。


いきなり振り向いた俺を見て、彼女は肩をびくっと震わせていた。


「あの〜」


「私に、なにか用ですか?」


「いや、こっちのセリフなんだけど」


「えっ、話しかけてきたのはあなたじゃないですか?」


彼女はこの人なに言ってるの? というような表情で首を傾げている。


初対面の人を、こんなにめんどくさいと思ったの初めてだった。


今日はほんと変なことばかり起こる一日だなぁ。


「……えっと、さっき俺の方を見てた気がするんだけど、気のせいかな? それとも俺達どこかで会った事あるかな?」


「あなたは占いって信じる?」


彼女は俺の質問を無視して質問を上書きする。


「占いって、朝のテレビとかで流れてるヤツか?」


「ええ、そういうのよ」


「まぁ、良い事言われたら記憶に残る程度かな。そういう君は、どうなんだ?」


「私は……信じたいと思ってるわ。なら、あなた今日の運勢を見ていないのね」


彼女の言う通り俺の星座は最下位だったので深く見ていない。


「あなたの今日の運勢は最低最悪」


俺、朝からそんな酷いことを言われていたのか、見なくてよかった。


「ラッキーカラーは水色ね」


「残念ながら、それも身につけてはいないな」


俺が手を開いて全身に水色の物などない事を証明する。


「大丈夫よ。あなたのラッキーカラーはここにいるわ」


と彼女は自分の胸に手を当てて宣言する。


「……えっと、どこにも身につけてなくないか?」


彼女のつま先から頭まで、隈なく見たけど彼女も水色の物なんて身につけてはいなかった。


「どうしてもと言われたら考えるけれど、出来ればこれをお披露目するのはまだ待って欲しいの」


彼女は顔を赤く染めながら、制服の胸元をキュッと握り締めた。


「あ……」


彼女の言葉の意味がを理解した俺は、一瞬思考が止まる。


え、なんで見ず知らずの女の子とこんな事になってんだっけ。


もう訳がわからん。


彼女は斜め上をボーっと眺めている俺の、後ろから歩いて来ている俺と同じ西南高校の制服を着た男子生徒をチラッと確認する。


「さっきのあなたの質問に答えるわ。……少し、歩きましょう?」


と言って、返事を待たずに先に歩き出した。


彼女の態度が気になったので、俺は大人しくついて行く事にして、彼女の背中を追って歩き出す。


しばらく歩いた彼女は人気のない公園を見つけると、その公園のベンチに腰掛けた。


俺だけ立っているのも変なので隣に座り、脱線してしまった、さっきの質問をもう一度投げかける。


「それで俺とお前は、どこかで会ったことがあるのかな?」


「ええ、今日はその時に親切にしてもらったお礼を言いに来たの」


「えっと、ごめん。ちょっと覚えがないんだけど……」


俺は記憶を遡るがこんな綺麗な子を助けた覚えはなかった。


というか、助けていたら忘れるわけがない。


「ええ、あなたは知らなくて、当然よ」


その時、俺には聞こえていた。


「もしかして、俺とお前って昔会ったことあるのか?」


「いいえ、初対面よ。この町にも一週間前に越してきたばかりだもの」


「じゃあお前……なんで俺の名前を知ってるんだ?」


そう、聞こえていた。


俺は、今朝目が覚めた時から他人の心の声が突然聞こえるようになっていた。


そして、この子はさっきから心の中で『吉田誠』という俺の名前を呼んでいる。


「最初に言ったじゃない、会った事があるって」


「えっと、昔会った事がないならどこで会ったんだ?」


「私が口で答えなくても、あなたには答えが聞こえているでしょう?」


確かに、この子の心の声は『夢で会った』と言っている。


でも、それよりも先に聞かなくちゃいけない疑問が俺にはあった。


「その言い方だと、お前は俺の能力の事を知ってるのか……?」


「ええ、知っているわ。でも、あなたが知っている以上の事は知らない。能力の事はあなたから聞いた事だから」


「俺に聞いたって、お前の夢の中の俺が、お前に自分の能力の事を言ったって事か?」


「そうよ、あなたは私に色々な事を教えてくれたわ」


彼女は急に恥じらいながら俺から目を逸らしたが、俺には彼女の心の声がはっきり聞こえている。


「転校初日に学校案内した事を変な言い方すんな!」


危ないところだった、心の声が聞こえてなかったら、『転校生と付き合うとか滅びろ!』と彼女の夢の中の自分を呪うところだったぜ。


それにしても、さっきからこの子が言ってる事はなんか色々とおかしい。


だけど、この子の心も同じ事を言ってるから嘘は言ってないみたいなんだよな。


「でも、なんで俺の事を知らないお前の夢に俺が出てきて、お前が知らない事なんて言えるんだ?」


「それは私が、予知夢を見る能力を持っているからよ」


「予知夢?」


「そう、私は毎週日曜日の夜、これから一週間、自分に起こる事を夢で見るの。その夢で明日あなたに会うと知ったのよ」


「そうか、お前が嘘を言ってないのはわかった。でも、いくらなんでもそんな話をいきなりされて、はい、そうですかって信じられるわけないだろ」


「それは、どうして?」


「そりゃ誰だって、初対面の人に『私は超能力者です』って言われたら普通はこの人はおかしな奴だなって思うだろ?」


「ええ、確かに普通はそうなるかもしれないわね。でも、今のあなたはもうそのおかしな人じゃない」


「……え?」


「だって、あなたは人の心の声が聞こえるのよね? それはあなたがおかしな奴と言った人と同類じゃないかしら?」


「だって、今のあなたはもう超能力、いえ、聴能力者だからよ」


確かに、彼女の言う通りかもしれない。


俺はもうすでに普通じゃない能力を持っている。なのになぜそれが、他人に起きてないと言える?


自分に起きた事が、他人には起きないとは断言出来ないし、もしかしたら俺以外にも能力が目覚めた人が居るのかもしれない。


彼女の言ってる事は正しいかもしれない。


最後のセリフとそのドヤ顔を除いては。


「わるかった。そうだよな、俺みたいな普通の奴にある日突然こんな能力が目覚めたんだ。お前に予知夢が見えたってありえないとは言えないよな」


「じゃあ私が言った事を信じてくれるのね?」


俺の言葉を聞いて彼女が安堵の表情を浮かべている。


「いや、それとこれとは話が別だ。今のはあくまで俺以外にも能力が目覚めた人間が居るかもという話で、お前が能力者かどうかは、まだわからなくないか?」


「え〜と、あなたには私の心の声が聞こえてるのよね?」


「ああ、だからお前が嘘をついていないのはわかってる」


「ということは、あなたは私の事を嘘でも冗談でもなく本気でヤバい事を言ってる人、と思ってるということでいいのかしら?」


彼女は明らかに不自然な笑顔で、拳を握りしめ肩を震わせている。


その表情はまるで、一歩でも踏み間違えれば爆発してしまいそうな地雷原だった。


「い、いや、そういうわけじゃないんだが、なにか未来を知っている証拠でもあればと思いまして……」


俺は彼女の起爆スイッチをうっかり踏まないように、慎重に言葉選んで説明した。


「証拠? 私は夢で未来を見れるだけだから、今すぐ出来る事なんて……あ、少し待ってくれる」


「お、おう?」


そう言うと彼女は自分のカバンからスマホを取り出して、なにやら操作している。


「これでいいわ」


「?」


彼女は操作が終わったらしく、スマホをカバンにしまった。


すると、俺のカバンの中でスマホがマナーモードの状態で震えてる。


「誰かから連絡が来たみたいよ。確認してみたら?」


「よくわかったな。でも多分どうでもいい通知だから気にしなくていいよ」


「いえ、あなたは今すぐその通知を見るべきよ」


「?」


よくわからないが、そこまで言うならとスマホをカバンから取り出し、ホーム画面を開く。


すると知らない人からメールが届いていたので、そのまま開いてみる。


【本文】こんにちは、あなたの目の前に居るものです


「これって……」


「届いた? 私が送ったメール」


「なんでお前が、俺のメールアドレスを知ってるんだ?」


「あなたに教えて貰ったからに決まってるでしょう? もちろんそれも夢の中の話だけど」


正直、俺の知り合いに前もって聞いていた、という可能性はゼロってわけじゃない。


だけど、その場合だと心の声で俺に聞こえているはずなのだが、彼女の心からは『信じて』としか聞こえてきていないから恐らく彼女の話は真実だろう。


「疑ったりして、わるかった。お前の能力の話を信じるよ」


俺はやっと、と言うべきか観念して白旗を上げた。


「やっとね、あなたって人の心の声が聞こえてるのに疑り深いのね」


「ああ、今朝目覚めたばかりの能力だから、正直まだ心の声が聞こえてるっていう事自体に慣れてないのかもしれないな」


確かに、心の声をもう少し信じていれば彼女を疑わずに済んでいたかも知れない。


そう考えるとやっぱり彼女にはわるいことをしてしまったな。


「あれ? そう言えばお前、俺と明日会うって言ってたけど、もう会ってるじゃん」


「ええ、本来は明日会うのよ。でも、お礼を言うために今日来たのだけれど、未来の友人にあそこまで疑われるとさすがに傷ついたわ」


彼女は「はぁ〜」とわざとらしいため息をついてる。


面倒くさいが、謝らないとさらに面倒な事になりそうだし、ここは謝っておくか。


「それは本当にわるかった、なにか俺に出来る事があれば言ってくれ」


俺は彼女の方を向いて、頭を下げた。


「ん〜そうね。じゃあ、私と友達になってくれるというのはどう? 元々それを言うために会いに来たわけだし」


「え、そんな事でいいのか? というか友達になるのが目的だったのかよ」


「だって、今あなたは他人の心の声が聞こえるようになってクラスメイト達に失望したから、いつもクラスメイトと帰ってる道を一人で帰ってるんでしょう?」


「え?」


彼女の言う通りだった。


俺はこの能力で、他人の心の声が聞こえるようになってから目の前で話してるクラスメイトの本心が聞こえてきて困惑した。


でも、別に悪口が聞こえてきたとかそういうのではない。


ただ、俺が特別だと思ってたモノが特別じゃなかったってだけの事だ。


たった、それだけの事で俺は偽りで塗り固められたクラスメイト達との関係を続ける事が出来なくなってしまった。


「でも、私はあなたの能力を知っているのだから、あなたに嘘なんてつくわけないでしょう?」


「ああ、確かにそうかもな」


「そうよ、だって私は嘘をついた事なんてないもの」


いや、それに関しては山ほどありそうなんだが……。


「そうか、その為に明日じゃなくて、今日会いに来てくれたのか」


そうだ。彼女が明日会うはずの俺にわざわざ一日早く会いに来たのは、俺に今日何が起こったのか予知夢で知っていたから、励ます為に今来てくれたのだ。


「なんのこと?」


と、彼女はわざとらしくシラを切る。


「いや、なんでもない。そういう事なら友達の件、お願いするよ」


俺は彼女へと手を出した。


彼女はその手を握って微笑んだ。


「ええ、もちろんよ。そういえば自己紹介がまだだったわね。私は予知夢千夜(よちむちよ)。よろしくね、吉田誠くん」


「おう、よろしくな。ってお前その名前嘘だろ! それ絶対能力ありきの名前じゃねえか!」


「ええ、嘘よ。私はそんな回文みたいな名前じゃないわ。本当の名前は村川優花よ」


「今の嘘必要なかっただろ……」


てゆうか、早速嘘ついてるよ……この女。


「ごめんなさい。そっちの方が能力者っぽいかなと思って、つい言ってしまったわ」


「いや、ついでで偽名を名乗るな、お前は詐欺師かなんかかよ!」


「そんな、人を恋の詐欺師だなんて、さすがに少し照れてるわ」


「いや、言ってないけど……」


さっきから全然人の話し聞いてくれないな。


さては、アホなのか?


「安心して誠くん、私は相手を選んでふざけるタイプよ」


「いや、別に安心はできねえよ」


てゆうか、その方が余計むかつくからな?


まだ、天然の方がマシだったよ!


「冗談よ。あなたの反応を見てるのが楽しくて、ついついふざけすぎてしまったわ」


そう言って、不意に微笑んだ彼女は、とても魅力的で俺は反射的に目を逸らした。


「お、おう。そりゃどうも」


「じゃあ、私はそろそろ帰るわね」


そう言われて、空の方に目をやるともう夕陽が沈もうとしていて、辺りは薄暗くなっていた。


どうやら、だいぶ話し込んでたみたいだな。


彼女がベンチから腰を上げて歩き出す背中に、俺は声をかける。


「おう、気をつけて帰れよ」


彼女はこっちを振り返ると「ええ、ではまた明日会いましょう誠くん」と言って、また歩き出した。


俺も「また明日な、村川」と言ってベンチから腰を上げ、村川とは逆の道へと歩き出す。


『また明日』そんな普通の挨拶を交わしただけなのに、これも彼女の『ラッキーカラー』のおかげか。


なんて、絶対思いたくないけど……


それでも、俺はさっきまでの暗い気分が少しだけ軽くなったような気がしていた。


最後まで読んでいただきありがとうございます!


明日はもっと面白いものが書けるよう頑張ります!

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