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迷走  作者: まほろば
18才7月
2/29

それは…2



知性が姿に滲み出てるって感じで、みゆきみたいに中嶋君を彼氏にしたいと思ってる女の子は多かった。


背は高いし、二重だし、外見いいのに優しいし、中嶋君の彼女って大切されて幸せだろうな…。


広太が中嶋君の半分でも優しかったら、きっとこんなにはならなかったよね。


ゆうこちゃんの付き添いみたいな流れで、源太の親友の広太と知り合ったけど、ゆうこちゃんと源太は2ヶ月で別れてしまった。


無口な源太がきつくなった所に広太から告られて、限界だったゆうこちゃんから別れを切り出した。


その時も、親友の彼女のゆうこちゃんに告った広太が信じられなかったのに、2年の終わりでまたゆうこちゃんと源太がよりを戻したから、また再開した。



再開とは少し違うかも、普段は学年が違うから顔を見なかったし朝会や購買で見掛けても当然無視だった。


そんなだったから4人で出掛ける回数が増えても、私は殆んど源太とも広太とも喋らなかった。


卒業間近に、ゆうこちゃんと源太には内緒で、こっそり広太から呼び出された。


私がつまらなそうだってゆうこちゃんと源太が気にしてるって、迷惑そうに言われた。


「親友応援できないのか」

って私が悪者みたいに広太に言われて腹が立った。


「俺達が卒業までの1週間だけ、俺と付き合ってる振りしろよ」


馬鹿だよね…あの時きっぱり断ってたら、広太とキスしないで済んだかもしれないんだよね。

その後の事だって…幼かった自分の未熟さに叫びだしたかった。


急に目の前が中嶋君のシャツの色になった。

…何で(汗)

あ…泣いてる。

泣いてるのは自分なのに中嶋君に隠して貰うまで気付かなかった。


……。

自分気付くの遅すぎ。


優しいね。

こんな時言葉で慰められたら惨めでホントに死にたくなると思う。


黙って隠してくれた中嶋君の優しさに、もっと涙が出て止まらなかった。


ありがとう。

…ごめん。

…ホントごめん。



講義がやっと終わって、私と中嶋君はノロノロと最後に教室を出た。


前を行くゼミ仲間が振り向いてもいいように、中嶋君のズボッと被れる帽子を貸して貰っていたから、泣いた後のみっともない顔は中嶋君にも他の同級生にも見られなくて済んだ。


やっと小さく

「ありがと」

を言って駅への近道の通路を曲がろうとしたら

「アイス食おう」

って左の手首を捕まれた。


「…食べたくない」

弱く左手を引き戻そうとしたら、なお引っ張られた

「俺独りじゃ入りにくいだろ、付き合え」

一瞬、みゆきの顔が浮かんで学食を見たら

「勘弁しろよ、臭くてアイスが不味くなる」

「え?…」


足が止まった私に

「匂いフェチじゃないんでね、プンプンじゃなくてほのかにでお願いしたい」

それで…。


ムッとした中嶋君の横顔に、学食での疑問の答えを見付けて、つい苦笑(笑)


笑ったらアイスも食べれる気がしてきて、逆に中嶋君の手を引っ張った。


アイスのお店でトイレを借りて、顔をじゃぶじゃぶ洗ったら気持ちまでスッキリした。


店の壁に花火のポスターを見付けて指差せば、中嶋君の眉間になぜかシワが寄って、ため息の後大袈裟に肩をすくめられた。



不思議に思って、もう一度花火のポスターを指すと

「向こうの学校の奴と行く約束したらしい」

と、花火のポスターにボクシングのポーズでパンチを繰り出す真似をした。

「残念だね~」


話の流れで中嶋君の彼女の話しになって、高2からの付き合いで交際2年目とか、彼女は中嶋君と同じコンピューター関係ではなく薬剤師の大学に行ったとか、彼女を思う中嶋君の口調は暖かくて、聞いててつんと胸は痛んだけど気持ちはほんわかと温められた。


そんな話の途中で同じゼミの仲間が店に入ってきて

自然に会話に混ざった。

「うんうん、中嶋君の彼女はみわちゃんて言うのね」


「自分の事は話したがらない中嶋君でも、みずきには堂々とノロケるのか」

ははは…(汗)


店を出る頃になって、中嶋君がしてくれた彼女の話しは中嶋君流の慰め方だったんだって気が付いた。


呆然と中嶋君を見たら頷きと笑顔が返ってきて

「話したくなったらいくらでも聞くから」

って私と同じ目線に屈んだ彼に頭を撫でられた。


そう言って貰えたけど…。

ホントに誰かに話すには凄く勇気が必要で、ごちゃごちゃ過ぎて何一つ言葉に出来なかった。



一度話しそびれてしまえば改めて話すのも何と無く変だから、なおその話題には触れないようにするし、初めての前期試験も目の前だったりで、嫌でも提出物の調べ物や試験勉強に追われた。


前期の試験やレポート提出が終わったら7月も終わりになってて、高校より少ない夏休みにガックリした。


これじゃあ海に行く前に夏が終わりそうだけど。

海に行きたいー。

って気持ちももうないから

いっか…。


そう言えば、高校の卒業式の次の日。

高校で出来た友達のあやみとまさこと、賢也(けんや)(ゆう)と広太と私の6人で海へ行ったなぁ。


泳げなくても晴れてたから人が多くて、途中広太とまさこが居なくなってみんなで探して…。

一番に広太を見付けた時

「よく見分け着いたな」

って賢也に驚かれた。


あれからまだ4ヶ月も経ってないのにね…、もうずっとずっと前みたいに思えるよ。


後からまさこに

「広太君苦手、ふざけてだろうけど『2人で消えようか』なんて言うんだよ」

って言われた時は、まだ内心『まさか』って思ったりしてて、馬鹿だよね。


広太はちゃらんぽらんだけど、そこまで最低じゃないはず…とかあの頃はまだ思ってたもの。



夏休みになって一番に始めたのは掃除。

私のアパートに残ってた広太の私物を、一纏めにしてゴミ袋に入れた。


勝手に人の私物を捨てるのは悪い気もしたけど、読み終わった週刊誌や旅行用の歯磨きセットや使い捨ての100円ライターとかだから、逆に送り返したら重い女とか見られそうで嫌だった。


ふと…。

この部屋に初めて誰かを入れたのも広太だった。

なんて気付く。


思えば始めの引っ越しからトラブルだったから可笑しくて1人で笑った


源太と広太が卒業して、私の生活も中学の3年後半までは穏やかだった


遊ぶのに忙しくて、両親の間に離婚の話が出ていたなんて、父親が家を出るまで知らなかった。


母子家庭になっても、お母さんは主任になってたから生活には困らないし、元から父親は殆んど家に居なかったから、私の生活は何も変わらなかった。


その暮らしが変わったのは

高校3年の夏。


離婚してから付き合っていた男性と母親が再婚する事になって、離婚の時と同じ事後報告。

今回は暫く2人で暮らしたいから、私に独り暮らしして欲しいと言うおまけ付き。


その秋から、月々の生活費とおこずかいが銀行に振り込まれる生活が始まった。



それまでも独り暮らしみたいなもんだったけど、ホントに独りになったらやはり寂しかった。


そんな時に母親の処から同窓会の通知が転送されてきて、メンバーも見ないで◯付けてた。


同窓会で久し振りに会ったゆうこちゃんは源太と別れて、今は同じ高校に彼氏がいるって話してくれた。

その時、広太の話も出て、喧嘩で退学になった話と家出して友達の家を転々としてるって聞かされた。


「聞いたのは去年だから、今は知らないけどね」

ゆうこちゃんには中学の時の広太の嘘を話してあったから、ゆうこちゃんの言い方もキツくて容赦ない。


ゆうこちゃんがどうしても広太を許せないのは

「ホントに形だけじゃ源太とゆうこに疑われるから、キスさせろ」

って無理矢理キスした事…。





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