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迷走  作者: まほろば
18才7月
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それは…


エブリスタに最初を少し書いた

お話です


ストーリーは出来上がってますが

書き手が年を取ったので

キャラの精神年齢も

それなりに上がるので


『不器用な…』

みたいにラストが微妙に

変わるかもしれません


元はハッピーエンドの話なので

成就するよう

頑張ります





それは、何でもない友達の問い掛けだった。


「ねぇ、広太(こうた)くん転勤でもしたの?」

「え?、転勤?広太が?」


突然の話しに、つい隣で食後のコーヒーを飲んでいたみゆきをきつく見返してしまう。


お昼休みの学食は八割方席が埋まっていて、あちらこちらで会話が飛び交っていたから、私の跳ね上がった声に驚いたのは隣のみゆきだけだった。


「…え、違うの(汗)」


自販機のコーヒーを飲み掛けた姿勢で、彼女はナチュラルメイクの顔を私の方へ向けてきた。


華奢で可愛らしいみゆきは、こうしていても周囲の視線を集めていて…。


ぼんやりみゆきの顔を見ていたら…瞬間雷に撃たれたみたいにある可能性に気付いた…。



私には何でもない振りしてたけど…もしかしたら…。

私を迎えに着たんじゃなくて、好みのタイプを探しに来てたのかも…。


だからコンパって言ってあったのにあの日も来て、みんなのアドレス聞いたりしてたのね…。


…そっか、だから電話しても迷惑そうだったんだ。


そっか…。

きっと前にも居る…。


すぅーっと、体から血の気が引いてるのに、何故だか可笑しくて笑いだしてた。



「広太とは中学の先輩後輩、あいつ転勤したの?」


数えながら指を折って言った。


「広太とは…、先月の初めに会ったきりだわ」


さらりとそう言えた自分に自分で驚く、電話もメールも来なくなってもう一月以上…。


気持ちの奥底に、もう先輩後輩よりもっと遠い存在になって欲しい私が居た。


「それなら転勤してても知らないわよね~」


疑問が解けたのか、みゆきは最近よく自宅のある駅で広太に会うと話してくれた。


………。

偶然を装おってみゆきに近付くつもりなんだね。


ぼんやりそんな事考えていたのに

「広太くんて…どかた、さんよね」

みゆきの妙に遠慮するような口調に警戒して頷けば

「どうしてみずきとあの人が知り合いなのか、みんなで不思議がってたの」


「…不思議って?」


私と広太じゃ釣り合わないって言いたいの?

私が田舎者だから?

嫌でもそんな不安が私の脳裏をよぎっていた。


「広太くんって高校中退なんでしょ?聞いた仕事も3Kだし、彼氏にするには…ね」


……。

その広太と一時でも付き合ってるつもりでいた自分がピエロみたいで…切ない。


半分泣き笑いの顔をみゆきに向ければ

「それより中嶋(なかしま)君の事、みずきはどう思う?」

と突然話題を変えてみゆきが聞いてきた。



いきなりそう聞かれても

私の頭の中は広太で埋まってたから、直ぐには切り換えられなくて

「中君?」

なんて間抜けに聞き返したら、みゆきに笑われた。


同じ学部の中嶋(なかしま)君は、確か4年制の方の学生で、2年で卒業の私たちと専門課程意外は同じ講義を受けているはずだった。


中嶋君の入学式からの印象は、頭が良くて親切で、独りっ子の私には今までの誰よりも理想の兄貴像に近い存在だった。


確かバスケットが好きだと、最初の自己紹介で言っていたような…。


「中嶋君よくみずきの隣に座ってるわよね」


横を向いたみゆきの視線が壁の一点を睨んでいて、思わず背筋がゾクッとする。

迂闊に喋れない雰囲気に圧されて言い訳めいた話しか返せなかった。


「最初、出席番号順に座ってた時隣だったの、だからじゃない?」

「それだけかなぁ」


不満げな顔をこっちに向けて、みゆきは上目遣いに私を見てきた。


「確か中君は彼女いるでしょ、この前の歓迎コンパの時大声でノロケてるの聞いた気がするよ」



ご機嫌斜めの表情で頬を膨らませたみゆきは、プイッとそっぽを向く。


中嶋君の彼女の話しは、様子から察するにみゆきの耳にも入ってるはずなので、素知らぬ顔で口を閉じた。


広太の事が、みゆきとこんな話をしてても頭の片隅から離れない。

それでも、今更広太に何かを言う気持ちはなかった。


気まずい空気を洗い流すように、午後の始まりを知らせる予鈴が鳴る。


私は午後一も講義があるけど、みゆきは次は休講で、このまま学食の端でレポートを仕上げる予定とか

「またね~」


本鈴を合図にみゆきと別れて隣の棟の教室へ急いだ。


歩きながら

『初めて知り合った中学の時から、やっぱり広太は全然変わってないんだね』



そう独り呟いたら、やっと止まってた気持ちが今に追い付いていた。


泣きたくても喉に何か塊が詰まってて涙にならない。


苦しくて、手の甲を口に押し付けていたら、肩を軽く叩かれた。


「急がないと遅刻するぞ」


促すように、通路に立ち止まってる私の背中を中嶋君がそっと押してくれた。


押されてもどうしても足が前に出ていかなくてわ頑なに下を向いて唇を噛むしかなかった。



「帰りにアイス買ってやるから、歩け(笑)」


中嶋君は屈んで顔を覗き込んで来たけど、私がグイって顔を背けたらそれ以上顔を見ようとはしなかった。


しない代わり背中を圧す中嶋君の手に力が入って、抵抗しても体はのめるから嫌でも足が出て前にでて、嫌でも歩きだしてた。


中嶋君は入り口からパッと教室を見渡すと、空席が目立つ窓側の真ん中近くへと下を向いたままの私を引っ張って行った。


『ありがとう』

って言いたくても苦しくて声が出なくて、私は唇を噛んで頑なに窓の外へ顔を向けてた。


7月になった空は梅雨が明けなくてどんよりしてる。

まるで今の私みたいで、鬱陶しくて生きてるのさえ嫌になってた。


広太と知り合ったのは中学へ入ってすぐ。

親の転勤で福島の田舎から東京の都会へ出てきた次の年だった。


両親と東京へ引っ越してきて、直ぐ転校先の小学校へ連れていかれた。


6年での転校が珍しかったからなのか、方言なのか、私は転校した初日から、クラスの笑い者にされた。


話し方が気持ち悪い。

服がダサい。


最悪な1日になる前に、隣の席のゆうこちゃんが

「いじめよくないよ」

とサクッと助けてくれた。



方言は今でも時々出るけど、服装はゆうこちゃんが細かくアドバイスしてくれて、学校でもダサイとは言われなくなった。


両親が共働きで新しい洋服を買うお金も簡単に貰えたのが幸いしたんだと思う。


いくら新しい洋服を買うお金が貰えても、あの時ゆうこちゃんが友達として親身にアドバイスしてくれたから私は変われた。


ゆうこちゃんにどれだけ感謝してもし足りないくらい今でも感謝してる。


中学に入って、初めてお化粧も覚えた

それまでは大人だからお母さんは化粧をするんだって思ってて、化粧水や乳液さえ付けた事ない生活だったから初めてのお化粧は楽しいけどドキドキだった。


中学でも私を引っ張ってくれるのはゆうこちゃん。

そんなゆうこちゃんの初めての彼氏が…広太の親友。

それが、私と広太の知り合ったきっかけ。


源太(げんた)はルックスはいいけど無口で、お喋りで三枚目的な広太とは外も中も対照的だった。


ぼーっと思い出しながら窓の外を見てたら、ツンツン二の腕をつつかれて、視界を黒い名簿が遮った。


「◯したら寝ちまえ」


然り気無い中嶋君の口調に忘れてたはずの涙が今頃になって出そうになった。



名簿に◯を付けて、教壇から見えなそうな角度を探してたら、中嶋君がカバンを斜めに机に置いてくれた。


カバンに隠れるようにして組んだ腕に顔を乗せる。

そっと目だけで中嶋君を見れば、真っ直ぐ黒板を見てノートをとってた。


…広太はいつもいつも不真面目で、こんな真剣な顔って見たことなかったな…。


タレントみたいに人目を引くイケメンじゃないけど、中嶋君はかっこいい。





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