森に向かう
「さてと、一応準備しとこうか」
これから向かうのは【ウテロ大森林】、これまでたくさんの調査団が中心に調査しに行って、帰ってこれなかったほど大きい森だ。
とは言えある程度の場所なら、その豊富な自然の魔力によって育った、大きな植物や動物、魔物が存在していて、それらは素材として使えるので周辺の国では重宝している。
「ところで満月の光を取るってどういうことですか?」
「えーとね、ウテロには月の光が綺麗に【うつる】池があるんだ、その池の水を光ごとすくうとその光を保ったまますくえるってわけ」
「へぇぇ…凄いですね、でもその光を取ってどうするんですか?」
「大抵はその水を魔法薬に使ったり、高級料理店とかでは飲んだりするね、月の魔力が移ってるからそれを利用するんだよ」
「なるほど…不思議ですねぇ」
そんな話をしながら準備をする、今回向かうのはウテロの中でも楽な領域、あんまり深く無いところだから武器は置いていこうかな…代わりに借りた盃と少し食料、後は探検道具でも持ってくかな。
「準備できました?」
「はぁい!それじゃあ行こっか!」
「ええ、向かいましょう」
ここスピノーからウテロ大森林までは山を1つ超えなければならない、幸いにも山に道が通っている、なので馬車で向かおうと思う。
今回はギルドの馬車を借りて、行く事にした。
「エルルさん、俺馬車借りてくるんでちょっと待っててください」
「はーい!」
俺は馬車を管理してる場所に来た、様々な馬がいる、大きな馬や小さな馬、魔法が使える馬や特殊能力を持ってる馬、あとカピバル。荷車もたくさん種類がある、普通の荷車やサバイバルうってつけ設備付き荷車、あとカピバル型の荷車。
カピバル型にしたいけど…人気だからかな、めっちゃくちゃ高い…今回は諦めとこう。
「すみませーん、馬車貸してください」
「ん?あぁ!ロキオンじゃないか、今回は遠くに行くのかい?」
「ウテロの辺りまでですよ、まぁ山一つ位ですかね」
「ほー、それまたなんで?」
「エルルさん御用達のお店からの依頼ですよ」
「ははっ!お前はいっつもエルルを中心に考えるんだな」
「そうでもないですよ、この前はブラットサッカー狩りに行きましたし」
「あぁ、あのおばけブラットサッカーはお前達の仕事だったのか、ありゃデカかったな」
「ええ、骨が折れましたよ…っととエルルさんを待たせてるで適当に見繕ってください」
「あいよ、カピバル型にしなくても良いのか?なんつってな!はははっ」
「そうしたいのは山々なんですがねぇ…」
「やる気はあったのか……まぁ良いさ、ウテロまでならこいつで十分よ、馬車も付けとくよ」
そう彼が指差した先にいるのは普通のサイズの馬だった、今回の旅路にはこれくらいで充分だろう。
「はい、分かりました」
「おしっ!それじゃ日数は幾つにする?」
「そうですねぇ…3日にしときます」
「んじゃ前金として300F、後でもう300…と言う所だが今回は250に負けとくよ」
「ホントですか?いやぁすみません…ありがとうございます」
「良いってことよ、お前達はこのギルドでも看板的存在だからな!がっぽり稼げよぅ!」
「ははっ、それじゃいって来ますね」
「おぅ!行ってこい!」
借りた馬車を連れながらギルドの外に出る、エルルさんもそこに居た
「馬車借りてきましたよー」
「おおー!じゃあ早速いこー!」
「グフッ...ふぅ、行きましょう!」
張り切るエルルさんマジ可愛いなぁ…危うく血が吹き出る所だった……何はともあれ俺たちは馬車に乗り込みウテロへと向かった。
ガタガタ…ゴトゴト…
「今日中に森に入って、明日の満月の光を取りに行きましょう」
「私、月の光が取れる場所を知ってるから案内するね!」
「はい、お願いしますね」
ウテロにはエルフ族の村があるらしい、エルフ族は盗賊に狙われたりするし、彼らが隠れて生きるには確かにうってつけと言えるだろう。エルルさんがそこ生まれかは教えて貰ってないが材料採取とかでよく行ってるのだろうから詳しいんだろう。
森に着くまで暇なので馬車内でティータイムにする。
「はい!ロキオン君、紅茶だよ」
「ありがとう、頂きますね」
「お砂糖とミルクは要る?」
「じゃあ…お砂糖二杯ください」
「はーい!」サラッサラッ
「では…ふーっ」ズズッ
あぁ……エルルさんのお茶が飲めるなんて最高だ…身体中の細胞が喜び打ち震えている、力がみなぎってくる…
「私も飲もうっと!…あちっ!」ズズッ
「大丈夫ですか?火傷してません?」
「大丈夫!ちょっと熱いから……【イス】!」
「おお…ちょっと氷が出来てる…」
「…んっ!これなら飲める!」ズズッ
エルルさんの魔力操作は凄まじく精密だ、本来弱い魔法を行使する時は弱い術式や呪文を使わないといけない、だけどエルルさんは戦闘で使うような呪文でも日常生活で使える程度まで弱める事が出来る。あれだね大剣で小さい魚の三枚おろしするみたいな感じだね。
ちなみに俺は今、馬車の操作に魔力を注いでるから魔法を行使する事ができない。
「さてと、ここからそこそこ長いので今の内に仮眠を取っててください」
「うん分かった!半分位過ぎたら交代するから起こしてね!」スヤァ
「わかりまし…もう寝てるゴボォゥッ!?!?」
寝付きのよさによる寝顔と言う名の不意打ちを食らった…可愛すぎる……半分たったら起こしてと言われたがとんでもない!この姿が拝めるなら目的地に着くまでがんばるぜヒャッハァァァァ!!
こうして森に着くまで俺はエルルさんの寝顔を見ながら頑張るのだった。