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幽世の竜 現世の剣  作者: 石動
第1章 渡海
9/76

第6話 『はやぶさ』

緒戦はこの話で終わります。

第6話 『はやぶさ』


南瞑海 異世界アラム・マルノーヴ

2012年 12月16日 9時39分


 南暝同盟会議水軍初の対空戦闘は、早くも破局を迎えようとしていた。

 快速を誇った旗艦〈バンガコルマ〉号だが、既に至近に二発の火球を食らい、漕ぎ手に被害が出ていた。

 いくら漕ぎ手に屈強な漢達(その中には人族以外の者を含んでいる)を揃えているとはいえ、四半刻余りも全力で漕ぎ続けていては、疲労の色が隠せない。

「頭ァ、もういけませんや。次は避けられそうにありやせん」

 掌漕手長がふさふさした耳を情けなく垂れ下げ、泣き言を漏らした。彼は配下の二割を失っている。

「莫迦野郎、簡単に諦めるな。帝國の蜥蜴どもに笑われるぞ!」

「ですが……」



 艦長は船首楼に仁王立ちになり、汗にまみれた赤黒い顔を左右に巡らせた。彼の視界の中で、艦隊の陣形はとうに崩され各艦がてんでバラバラに海上をのたうっていた。

 八隻のガレーの内三隻が炎上し〈バンガコルマ〉号を含め三隻が損害を受けている。海上には砕かれた櫂や焼け焦げた船材、そして黒い塊──先程まで人間だったものが無数に漂っている。艦長は唇を噛んだ。無様な有り様だった。

 有翼蛇は鏃の様な編隊を組み一旦空高く昇り始めていた。矢は気を逸らす事すら出来ていない。

 畜生、太陽を背にしやがった。艦長は目を細めたが蛇はじきに見えなくなった。


 彼らの戦備えは、空を駆ける敵に対して全くの無力を晒している。敵船への斬り込みに無類の威力を発揮した曲刀も銛も、炮烙ほうろくや弩ですら役に立たない。

 まるで、鮫に蹴散らされる小魚の群れの様であった。有翼蛇があとどれだけ火球を吐くことが出来るのか分からないが、少なくとも先に力尽きるのはこちらである。

 艦長は決して諦めてはいなかったが、切ることの出来る手札は尽きようとしていた。


 その時、船尾楼から声が上がった。


「灰色船、動き出した──何だぁ!?」

「頭ァ! 見てくだせぇ。信じられねぇ……」


 配下の狼狽した報告を受けて、艦長は戦闘開始後初めて灰色船の存在を思い出した。それまでは無力な存在だと半ば無視していたのだ。

 あの得体の知れない船にはカサード提督が乗船している。我等が此処で敗れたとしても、提督だけは無事逃がさねば。しかし、見張り共は何を見てそんなに慌てているんだ。彼は灰色船を見た。

 次の瞬間、彼は自分の見たものに対し、配下と全く同じ態度を示す事になった。


「……何をどうやったら、あんな速さで走れるんだ?」


ミサイル艇〈はやぶさ〉 南瞑海 

同時刻


 船は海上を滑るように進む。鉄の船体は小刻みな揺れをリューリに伝えていた。それは彼の知らない揺れだった。

 彼の知る船というものは、風が強く吹けば煽られ、弱ければ行き脚を失い、潮とうねりの前に力無く押し戻される様なか弱い存在だった。船長たる者は常に風と波を見極め、逆らわず利用する事に心を砕いた。

 それを巧みに為す者が、練達の船乗りとされた。


 でも、異界の船は違う。

 彼等は海をねじ伏せ、自らの力で迅く走る。風もうねりも切り裂いて真っ直ぐに進む。

 リューリはすっぽりと身体を包むような心地の不思議な椅子に身体を預けながら、その速さに心を奪われていた。

 左右の景色が飛ぶように流れ、ガレーがあっという間に大きくなった。


「船長殿! はやい! はやいです! 何なのですかこの船は!」


 本当に船なのだろうか? リューリは興奮して叫んだ。


「海上自衛隊ミサイル艇〈はやぶさ〉、我が国で一番の韋駄天です。お気に召した様ですな」

 リューリの興奮を露わにした態度に、加藤三佐も満更では無い様子だ。


「真艦首のガレー船まで2000ヤード」

「取舵。140度宜候ようそろ

「とぉーりかぁーじ」

 艇長の指示で、〈はやぶさ〉は左へと舵をとった。艇体が僅かに右に傾く。

「戻せ、舵中央」

 左に針路を向けた〈はやぶさ〉は、ガレー船を右舷に見つつ、前を横切ろうとしていた。

「もどーせー、舵中央。宜候140度」

「目標、180度5000ヤード。ガレー船に突っ込んでくる」

 南から太陽を背に、有翼蛇が再突入を図っている。レーダー員が刻々と報告する。加藤は、やや固い声色で命令した。


「ガレー船と蛇の間に割り込む。こっちに引き付けるぞ!」


 〈はやぶさ〉は、翡翠色の海原に弓の様にしなる白い曲線を描きつつ、21ノット(時速約39km/h)の速力でガレー船の南側に出た。

 キレの良い挙動でそのまま横腹を有翼蛇の飛来方向に向ける。76ミリ速射砲は正面に向けたままだ。

 日本近海に合わせ塗粧された灰色の船体は、強烈な陽光を受けギラギラと光を放っている。それは、翡翠色の海に良く栄えた。空からはその姿がはっきりと視認できた。



 一旦高度を稼ぎ、南へ離隔した有翼蛇の編隊は、『魔獣遣い』の思念波に導かれた。

 『魔獣遣い』は、高速で走る新たな船を警戒すべき対象と認識した。先程まで行われていた低高度からの襲撃の代わりに、更に難度が高く強力な攻撃法を選択する。

 蛇は、急角度で右に捻り込むと太陽を背に急降下を開始した。十分な位置エネルギーを速度に変換しつつ、蛇は〈はやぶさ〉に向けて約65度の角度で突撃した。


 風を斬って有翼蛇が降下する。知性の感じられない両の目は、〈はやぶさ〉を捉えている。その情景は『魔獣遣い』の脳裏に映像となって伝えられた。

 有翼蛇による急降下火球突撃。操獣士を乗せない事で、桁違いの機動性と速度を獲得したこの攻撃を破る事が出来るものは、アラム・マルノーヴ広しといえど存在するはずがない。

 それは、全くの真実であった。

 『魔獣遣い』の思念に混じる勝利への確信を感じたか、有翼蛇が甲高い鳴き声を上げた。禍々しい音色が辺りに響く。



 降下する有翼蛇の姿を目撃した〈バンガコルマ〉号の乗員達は、炎上する哀れな異界の灰色船を幻視し、悲痛な呻き声を漏らした。

 敬愛するカサード提督は、あの船と共にやられちまうに違いない。

 誰もがそう思った。


 〈はやぶさ〉のブリッジでは、加藤三佐が慎重にタイミングを測っていた。レーダー員が距離を刻々と読み上げる。

「目標まで1000」

 敵の注意を惹き付ける事には成功したようだ。有翼蛇が目標を〈はやぶさ〉に定めた事は、レーダーの輝点の動きから見て取れた。畜生、先に撃てりゃあ苦労は無いんだが──艇長は、射撃号令の代わりに言った。

「記録始め」

「了解」

 ブリッジの中は戦闘配置の乗員であふれていた。88式鉄帽に救命胴衣を装着した航海科員が、固唾をのんで天井を見上げる。

「飛行生物3、左80度500。真っ直ぐ突っ込んでくる」

「目標まで300」

「了解。……カサードさんはどうした?」

「左見張りと一緒です!」

 舷窓の向こうに、見張りの横で仁王立ちし空を睨む威丈夫の姿が見えた。加藤は一瞬だけ迷った。退避を。いや、間に合わん。加藤は左舷見張りに指示を出した。


「目標が降下を始めたら叫べ!」


「目標直上! 急降下ァ!」

「蛇! 来るぞ!」


 加藤の言葉尻に見張りの叫び声がかふさった。カサードの発した警告が同時に響く。



「取舵一杯! 最大戦速! 見張り退避急げ」

「総員衝撃に備えェ!」


 三匹の有翼蛇が流星の様な勢いで降下する。海面から見上げたその姿は、殆ど垂直に落ちてくる様に見えた。甲高い鳴き声が、まるでサイレンの様だ。

 対する〈はやぶさ〉の三基のウォータージェットノズルが駆動する。左舷側に猛烈な勢いで吐き出された水流が、艇首を蹴飛ばすような勢いで左に向けた。

 椅子に縛り付けられたリューリの身体が右に振り回される。乗員達は手慣れたもので、立っている者は皆何かに捕まりその任を全うしていた。

 〈はやぶさ〉は、海面を白く濁らせながら、左急速回頭を行う。




 有翼蛇の眼を通して敵船を捉えていた『魔獣遣い』の視界から、かき消える様に敵船が消えた。

 いや、有り得ない速度で舳先を振っている。敵船はこちらのあぎとから逃れようとしていた。

「……海魔め」

「どうした?」

 操獣士の問い掛けを無視した『魔獣遣い』は、思念波を放った。今ならまだ──


 思念波を受けて、有翼蛇は喉を震わせるとその口から火球を放った。高温の火球が尾を引いて敵船に向かう。粘性の高い分泌物を燃料とした焔は、命中すれば船材も人も等しく焼き尽くすだろう。

 火球を放ち終えた三匹の有翼蛇は、疲労した体躯を無理矢理引き起こし急降下の勢いを殺す。二匹がそれに成功した。海面を這うように離脱する。だが、残りの一匹は哀れな悲鳴を残し大きな水柱を立てた。

 引き起こしに失敗した一匹は、海面に激突したのだった。蛇はそのままもがく事すらせず海中に消えた。



 一方、轟音と水蒸気が〈はやぶさ〉左舷を包み込んだ。



「ああ、やられちまった……」

「糞ったれェ!」

「駄目だ、次は俺達だ。皆殺しだぁ!」

 濛々と立ち昇る水蒸気の雲を見て、南暝同盟会議の船乗り達は口々に嘆き罵った。


 だが次の瞬間、煙るような水蒸気の中から〈はやぶさ〉が姿を現した。泡立つ海面を真一文字に切り裂いて凄まじい速度で飛び出す。

 最大戦速──44ノット。

 アラム・マルノーヴの船乗り達にとって、それは有り得ない光景であった。


「左舷至近に着弾!」

「船体に異状無し! 各システム全力発揮可能」

「左見張りは生きとるか?」

「だ、大丈夫でーす」

 左舷の舷窓には、微かに炎が舐めた名残が黒い煤となって付いているだけだった。どうやら敵の攻撃は破片を撒き散らす類の物では無いらしい。

 加藤は〈はやぶさ〉が戦闘能力を維持している事を確認した。激しいピッチングが連続して身体を揺さぶる。当然だ。蛇風情にやられてたまるか。  


 彼は、重要な事項を確認する事にした。

「記録は撮れたな?」

「動画、ボイスレコーダーその他完璧です」

「よし。本艇は国籍不明の武装勢力から無警告攻撃を受けた。武器等防護のため、自衛隊法第95条に基づく武器使用を行う──通信、群司令に報告!」

「目標を敵機に指定。280度、1000ヤード。左旋回中!」


 離脱した二匹は、態勢の立て直しの為体躯を左に捻った。思念波が再度の突入を命じる。哀しげな鳴き声があがった。信じられない程の速度で走る灰色船に向け、二匹の有翼蛇は襲撃機動をとった。


「右対空戦闘」


 攻撃をかわし南へ走る〈はやぶさ〉は舵を右にとりつつ、西から迫る有翼蛇に右舷を向ける。主砲の76ミリ速射砲が、角張ったステルスシールドの砲塔を回転させた。

 FCS-2-31射撃管制レーダーが、有翼蛇の編隊を捕捉する。主砲の砲身が連動し生物の様に動き、狙いを定める。


 加藤三佐は、艇長席のリューリを見た。

「リルッカさん。本艇はあの蛇を撃墜します」

「……良いのですか? 貴国は──」

 余りの速度に目を白黒させていたリューリは、加藤の瞳をじっと見つめた。彫りの浅い男の瞳には、断固たる意志が存在していた。

「あの蛇はどうやら我が国にとっても侵略者である様ですからな」

 リューリの視線を受け止めた加藤は、すぐに右舷から迫り来る有翼蛇に向き直った。

「距離800」

「主砲打ち方始めェ!」


 艇長の号令と同時に、前甲板の76ミリ速射砲が乾いた発砲音を響かせた。閃光。続いて砲煙。激しい金属音と共に砲身下から薬莢が転がり落ちる。

 発砲は二回。それで全てが決した。



 低空を這うように突撃する有翼蛇の眼前に、黒い華が咲いた様に見えた。

 〈はやぶさ〉から発射された調整破片榴弾は、近接する有翼蛇の直前で信管を完璧に作動させた。黒煙と共に破片が哀れな蛇を包み込む。

 まともに飛び込んだ一匹は、全身をズタズタに切り裂かれ、悲鳴をあげる間もなく海面に叩きつけられた。

 二匹目は、更に劇的だった。目の前で仲間を叩き落とされた事に反応を見せる間もなく、76ミリ砲弾がほぼ直撃したのだ。強烈なカウンターを喰らったかの様に、有翼蛇は空中で消し飛んだ。顔面のパーツや薄い羽が、粉々になって落下する。



「グゥ、莫迦な!?」

 思念波の逆流に、こめかみを押さえた『魔獣遣い』が狼狽した声をあげた。無敵であったはずの魔獣が、瞬きする間に墜とされた光景に、彼は言葉を失った。

 攻撃魔法か? いや、あの様な威力の術を俺は知らない。あの船は危険だ。

「おい、やられちまったぞ! どうする?」

 操獣士の声に彼は我に返った。与えられた任務は、敵の攪乱と物見である。支配下の魔獣を失った今、己に出来ることはあの船の情報を持ち帰る事。


 冷静さを取り返した『魔獣遣い』は、操獣士に告げた。

「帰投する。あの船、将軍にお伝えせねばならん」

「心得た。彼奴はとんでもないな。有翼蛇が一撃とは」

 彼等は、為すべき事を見誤らなかった。操獣士は愛龍の手綱を引くと、小さな旋回径を描きつつ離脱を開始した。

 南暝同盟会議の軍船にあの様な型は無いはず。いや、我が帝國にも存在せぬ。南方征討領軍に大きな障害となるやも知れぬ。あれを沈めるには──。


 だが、彼の思考はそこで絶たれた。視界の片隅で、灰色船の更に遠方約四浬先にあるもう一隻に微かな光を見た。

 一息の後。

 『魔獣遣い』の身体は、衝撃と共に空中に放り出されていた。赤く染まる視界の中で、引き裂かれた翼龍と操獣士が混じり合って墜ちていくのが見えた。

 彼は、自分も同じだと気付いたがすぐに意識は闇に飲まれた。



「〈うみたか〉敵一機撃墜。全目標撃墜」

「打ち方止め。第一戦速。ガレー船の救援に向かう」

 加藤三佐は、ようやく肩の力を抜いた。初の実戦に無意識に緊張していたらしい。首を回す。椅子で惚けた表情を見せるリューリの姿が目に入った。

「敵は全て落としました。もう、大丈夫でしょう。これより貴艦隊の救援に向かいます」


「……はい──いや、いやいや! 船長殿! この船は一体? 何というか、わたくしは御伽噺を見ているかの様な心地です」

 リューリの言葉に艇長は思わず噴き出した。おとぎ話の様なのはそっちの方だろう。

「ご助力に感謝いたします。カサード提督も感──」

「おおッ勇者達よ! 儂からの礼を受け取ってくれ! 何たる凄まじき魔導よ! 古の王国にすらこの様な軍船は存在すまい! 見事だッ! 感服仕った!」

 とてつもない騒がしさで、カサードがブリッジに飛び込んできた。彼は、煤まみれの大柄な身体で手当たり次第に乗員と抱擁し、褒め称え、笑った。彼は加藤を見つけると言った。


「お陰で部下が生き残れた。感謝致す。先に手を出す訳にはいかなかったのであろう? 自らを危険に曝してまで──アイディン・カサードとその一党は、この恩決して忘れぬぞ」

「肝は冷えました。ですが、あれが〈帝國〉軍であるなら、遅かれ早かれ交戦は免れなかったでしょう」

「正直な男だな」

 加藤三佐はふと思い出し、言った。

「ところで、カサード提督。この艇の本当の速さお分かりいただけたでしょうか?」

「ぐ……聞いていたのか。あれは撤回しよう。我が戦船が一番だと思っておったが、どうやら『ハヤブサ』の名に偽りは無いようだ。完敗だ」

 そう言って、カサードはまた笑った。


「ガレー船まで、500。単横陣を組んでいます」

「ウィングに出ましょう」

 加藤三佐は、リューリとカサード、そして腰を抜かしていたロンゴ・ロンゴを連れてブリッジを出た。



 〈バンガコルマ〉号はお祭り騒ぎであった。つい先程まであらゆる手管を用いても倒せなかった〈帝國〉の有翼蛇が、いとも簡単に落とされたのだ。これで喜ばない者はいない。

 疲れ果て、汚れきった漢達だったが、各々が力の限り歓声をあげ拳を突き上げていた。


「艦長! 提督の灰色船近付きやす!」

 見張りの報告に、全員が振り返った。平和な景色を取り戻した海原が、先程の戦闘など無かったかの様な態度を見せる。その中を、灰色に船体を塗粧した軍船が素晴らしい速度で近付いていた。

 もう、誰も侮る者はいなかった。鋭い湾曲剣シミターを思わせるその船は、恐らく近隣で最強の存在である事を、全員が理解していた。

「艦長どの。ありゃ、何者なんでしょう」

「知らん。検討もつかん。海神の御使いだと言われても驚かん」

 艦長は、投げやりに答えた。ふさふさの耳を立てる元気を取り戻した掌漕手長は、感心した様に言った。

「少なくとも、連中が糞強くて、その糞強い連中が、糞ったれの〈帝國〉と喧嘩する気があるってのは、いい気分ですな」


 そこで艦長は、灰色船にカサード提督の姿を認めた。虚脱した気分を腹に力を込めて追い出し声を張り上げた。


「野郎共、提督が見てらっしゃるぞ! だらしねぇ様晒してんじゃねぇ! あの船に敬意を表するぞ! 合図出せ」

「漕手台に付けェ!」

 満身創痍の漢達と五隻のガレーが、威儀を正す。灰色船上に立つカサード提督の顔がはっきり見える距離になった頃、艦長は五隻に命令を下した。


「異世界の勇士に──櫂立てェ!」




 その様子は〈はやぶさ〉からもよく見えた。朱色に塗られたガレー船の両舷で、左右に突き出されていた櫂が一斉に起こされた。

 少なからぬ櫂が、折れ、焼け焦げていた。だが、傷付きながらも全ての櫂を天に向けたガレー船団の姿は、紛れもない敬意を示していた。

 国どころか世界が違っても、船乗りの流儀は同じか。

 艇長は信号員長を呼ぶと、手空き総員を整列させた。潮風がマストの艦旗をはためかせる。


「気ヲ付ケェ!!」


 答礼喇叭が異界の海に高らかな音色を響かせた。


『魔獣使い』と翼龍騎兵の組み合わせは、現代で言うAWACS「早期警戒管制機」でしょうか。有翼蛇はUAVのような使い方をしているようです。

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