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サイコネクト!  作者: 火炎ロダン withサイコネクトproject
2/6

第2話「隣の宇宙からの挑戦」

サイコネクト!第2話です!


※この作品はサイコネクトproject公式ページで連載しているものの転載です。

そちらではボイスドラマやMVも公開しているのでよかったらそちらでもお楽しみください。

コチラ⇒ http://saikonekuto2016.jimdo.com/

ツイッター⇒https://twitter.com/saikonekuto

日はとっくに暮れていた。ここは龍が森にあるとある神社の横道。森の木々に囲まれあたり一面真っ暗だ。その暗闇の中をひとり歩く無謀な娘がいた。彼女は一六歳、高校二年生。毎日この神社の敷地内を通学路として使っている。彼女にとってこの道通ることは日常的な行為でしかなかった。しかし、油断してはならない。怪奇は日常のすぐ隣に潜んでいるのだ。

 彼女は歩きながらスマートフォンを右手で弄んでいた。所謂「歩きスマホ」ってやつだ。彼女は今はやりのSNSアプリConet(コネット)でインターネット上の友人たちとメッセージをやりとりすることがマイブームとなっていて、一部のユーザーの間では彼女はそれなりに有名人となっていた。今日も一五件ものメッセージが届いている。

 彼女がメッセージの変身を全部済ました時だった。ヴァーチャルな世界へと飛び込んでいた彼女の鼓膜を奇妙な金属音が揺らした。「いったい何の音だろう?」。彼女は一気に不安に引きずり込まれた。こんな真っ暗なところで一人、しかもキーンと耳鳴りのような鈴のような妙な音が聞こえる。何と恐ろしいことか。

 そんなとき、彼女の顔を眩い光が照らした。スマートフォンの画面の明かりだ。どうやらConetの新着メッセージが届いたという通知のようだ。・・・しらないユーザーからの。彼女はおそるおそる、メッセージを開いた。


『○×△♨#‘+?』   


見たことのない文字のようなものが画面に表示されていた。これをみて彼女は凍り付いてしまった。その理由は見知らぬ人から奇怪な文字が届いたからだけではない。彼女はそのメッセージの意味をなんとなく理解してしまったからだ。

・・・コツコツ…キーン・・・コツコツ…

奇妙な音が彼女の背後から近づいてくる。

「振り向きたくない・・・振り向いちゃだめ!」

彼女はそう心に念じたが、自分の本能には勝てなかった。振り向いた彼女は見てはいけないものを見てしまった。彼女の背後には緑色でケロイドの皮膚を持った怪人、「ゴム人間」が立っていたのだ。

「きゃああああああああああああああああ」

「ヒィヒヒヒヒィ!!」

夕暮れの神社に彼女の悲鳴とゴム人間の奇怪な笑い声が響きわたった。以後彼女を見たものは誰もいない。


 *  *  *


「ってな、噂が今女子の間で話題なんだってよ!」

 親友の牧村スバルがいつものように僕、(ひつ)(ぼし)アイナに絡んできた。

「龍が森高の生徒だぜ!すぐ近くだよ!ゴム人間やべぇよ!」

なにをそんなに騒いでるんだか。大興奮のスバルに対して僕は冷めていた。なぜならば…

「そんなのウソに決まってんじゃん。」

「いぃや、そんならこういう噂になってないでしょ!火のないところにケムり無しだぜ」

全然、理由づけになってないぞ。僕はこういう系統の話は信じない。だって、いかにも事件のシチュエーションが人を怖がらせようとしているし、こんな事件が本当に起きていないならまず報道されないわけがないからだ。それに、第一この噂だとゴム人間の目撃者である高校生が話の最後で行方不明になっている時点でいろいろと矛盾しているし・・・。

(おもしろい話ですね!)

突然、僕たち前に精神生命体ユークが現れた。僕にテレパシーで話しかけている。

(そうかな?・・よくある都市伝説のたぐいだと思うけど)

(としでんせつ?)

(ほら、口裂け女とかヒバゴンとかそういうアレだよ)

(あぁ!それなら前にアイナさんの記憶のなかで見ました!)

(勝手に人の記憶を覗くな!)

 

あの日以来、僕の身体に居候しているユークは時々こうやって僕と誰かの会話や僕の思考に割り込んでくる。相当なおしゃべりさんみたいだ。今僕の前にいるのはユーク本人じゃなくてユークが僕に見せてくれているホログラムだ。ユークは精神生命体だから仮想の姿を僕に見せてくれているんだ。このホログラムのおかげで僕は違和感なくユークと会話することが出来る。それにユークの姿は僕にしか見えない。とても便利な機能だ。


(えへへ、すごいでしょ!)

「おい、アイナ。急に黙っちゃってどうした?」

「あ。ご、ごめん。」

しまった。ユークとの会話に集中しすぎてスバルの前だって忘れてた!

「あぁ、もしかし怖くなってきちゃったかな?アイナちゃん?」

「そんなんじゃないよ!」

はぁ~また女あつかいする・・・。

「それよりさ、あの子とはどうなったんだよ、アイナちゃん?」

「え?あの子って?」

「あの子だよ、あ の 子 !」

スバルはアゴでくいくいと僕の背後を指した。そこにいたのは、わいわい騒ぐ女子のグループと・・・その横で友人とのんびり話している飼篠ヒトミさんだ。

(全然進展なし!…ですよね!)

(・・・ほっといてくれよ)

「この間、あの流れで仲良くなっちゃえばよかったのに。吊り橋効果ってマジであるみたいだよ」

まったくデリカシーのない奴だよ。何で僕はこんな奴と親友なんだろう。

(こらっ!そういうこと言っちゃだめですます!スバルくんはスバルくんなりにアイナさんのことをフォローしてくれてるんですよ!)

(言ってないよ!)

「飼篠ちゃん、ケータイ新しくしたみたいだぜ?Conet交換するなら今がチャンスだと思うんだけどね、俺は。」


Conet(コネット)、それはアメリカ発祥の大人気SNSサービスアプリ。僕も一応使っているんだけどイマイチ面白さが分からない。

「Conetで友達になっちゃえば、連絡し放題だぜ。ちょっと・・・日常を覗けちゃったりするしっ」

「それは・・・ストーカーだろ…」

Conetは携帯端末に登録された電話番号をお互いに知っている人同士であれば、だれでも友達登録することができて、無料でショートメッセージ機能を使うことが出来る。これが世間で人気を博している理由なのかな。

(でも、今学生さんたちの間では別の機能が流行っているんですよねぇ)

そう、タイムライン機能だ。個々でやり取り行うショートメッセージ機能と違ってタイムラインは不特定多数に向けてメッセージを発信することが出来て、Conetのアカウントを持っている人だったら誰でも観覧できるんだ。

(情報を発信するのには今一番有力なSNSって言われてます。実際にConetのタイムラインから芸能界デビューした娘だっているんですよ!)

・・・やけに詳しいな、ユーク。

(世間の情報には常に目を光らせて、記憶してますですから!)

そのまえにちゃんとした日本語を覚えようよ。まぁ、とにかくConetは日本全体で大人気のアプリってことだ。


*  *  *


 「ふぃーやっと終わったぜー!」

ホームルーム終了のチャイムが鳴った瞬間スバルが雄叫びを上げた。いつもの恒例行事だ。

「終わったっていっても、スバル、次は部活でしょ?」

「いゃ、今日は先に生徒会。バスケはその次!」

「あぁそっか、おつかれ」

あぁ見えて、スバルはできるやつだ。不真面目でハイテンションだけど実は生徒会の副会長をやってたりする。バスケ部ではエースで成績も常に上位。学校も特待で入学したみたいだ。

「あ、そうだ。アイナ、あれ貸してよ」

「ん?あれって」

「えっと・・6時限目でやった怪獣史のところのノート。実はあの時寝てたんだよねー」

「あぁ、いいよー。これね。はい」

僕は机に載せてあった怪獣史(社会の授業の一つで1950年代より起きるようになった怪獣事件や災害の歴史を学ぶ学問)のノートを手渡した。

「センキュー、じゃ借りてくわ!じゃあなっ」

スバルはノートを受け取ると元気に教室を飛び出していった。…こういうちょっと不真面目なところがこいつのいいところなのかもしれない。


 スバルと分かれた後、帰宅部の僕は小学生たちの溢れる遊歩道を歩いていた。あの小高い丘の上に建っているのは木の葉ヶ丘中の学生寮だ。その4階の2人部屋・一室に僕は暮らしている。4階は本来女子寮なんだけど、アイナっていう女の子みたいな名前のせいで間違って入れられてしまったんだ。まぁ、幸い一人の部屋として使わしてもらえているんだけど・・・今はね。

「うにゃお!」

「うわっ!ななな…なんだっ!」

突然僕の胸の中に黒い塊がと飛び込んできた。

(あれっ?この子は・・・)

「こ、この間の子猫か・・・」

この間、僕が助けた小さい子猫だ。

(で、そのアイナさんを助けたのが私です!)

なんか目をキラキラ輝かせながら僕の顔を見上げて来てるぞ。正直心臓が止まるかと思ったよ。まぁ、元気でなりよりだけど。えっと、この猫ってたしか・・・

「ミナモーっ、どこ行くの!あっ!」

やっぱり・・・。飼篠さんがこっちに向かって駆けてくる。私服・・だ。

「弼星君、今帰り?」

「えっと、こんにちは」

こんにちわって・・・さっき、学校で会ったばかりだけど。な、なんか話題探さないと!

(ガンバです!)

「ミナモって・・・名前付けたんだね、猫。」

「うん。おじいちゃんが付けてくれたの。変わってるでしょ?」

「綺麗な名前だと思うよ」

・・・みなもってどんな意味か知らないけど。

(こらっ!知ったかぶりしない!)

「うん、私もみんなも気に入ってるの!」

「みんな?」

「えっと、実はこの子の写真をConetにアップしたら、みんな可愛いって、いい名前だって、すっごく人気が出たの!」

こ、こねっと!話題についていけるかな?

「それでお友達もいっぱい増えて、毎日写真撮ってアップしてるんだ!」

飼篠さんは僕にスマホの画面を見せて来てくれた。ミナモの写真がタイムラインにずらっと並んでる。アクセス数も相当なものだ。

(わぁ、すごく可愛く撮れてますですね!)

「飼篠さん、写真上手なんだね。」

「そ、そんなことないよ。この子すぐどこかに行っちゃうから撮るの大変なんだぁ。ほら、だからこの首輪にもGPSが入ってるの」

(GPS?じーぴぃえすってなんですか?)

(僕もよくわからないけど、衛星を通して人や機械の場所が分かるシステムだよ)

「そんなことが出来るんだね」

「うん、すっごく便利だよ。Conetで簡単に見れるし」

僕はこのあと10分ぐらい飼篠さんと話した。短い時間だったけど。なんだかとっても幸せだった。・・・こんなことしていて僕はいいのかなぁ。


* * * 


(ねぇ、アイナさん。さっきスバル君が話してた話ちょっと気になりません?)

夜9時を過ぎ僕が寝る支度をしていた時にユークが話しかけてきた。

「えっと・・・Conetの話?」

(そうです!)

ぐぐっ・・スバルだけじゃなくユークまでその話題を振ってくるようになったか・・・

「うーん。僕はまだいいかなって思う。そういうのはもっと現実で仲良くなってからの方がいいと思うし」

(・・・そっちじゃないです。ゴム人間の方です。)

ぼ、ぼくの早とちりだったか!恥ずかしい・・。なんだかハメられた気がする!

(聞こえてますよ・・・。自意識過剰です!それよりゴム人間ですよ!)

「あ、あのうさん臭い話がどうしたの?」

(あながちウソじゃない・・・のかなぁって。)

あのオカルト妖怪事件が?僕には信じられない。確かに現実に怪獣が現れるような世界だけど、まさかあんな噂が本当だなんて考えられない。

(スバルさんの話にはConetが登場しましたよね?それがその事件のキーになってると思うんです。)

「どういうこと?」

(ゴム人間が現れた時に謎のメッセージがConetに送られてきましたよね。あれは異次元…あるいは別の宇宙からのメッセージだと思うんです。)

「ん?どうしていきなり宇宙の話になるんだ?」

(うーん、アイナさんはインターネットのことをどう考えてますですか?)

「どうって・・・」


 ユークはネットに関する持論を語り始めた。

(私がこの惑星に来て一番驚いたのはインターネットなんです。私たちサラー母星人のようにテレパシーを使ってある程度の距離なら通信ができる種族はたくさんいるのですが、インターネットのようなどんなに長距離でも、どんなに沢山の情報でも、どんな場所でも一瞬で通信できるシステムがあるのは私が知る限り地球だけです。それだけじゃありません。アイナさんはコンピュータのシステムはすべて2進数で出来ていることを知っていますよね?コンピュータやネットの世界は全部2進数でできていて、全部2進数で動いている世界ってことなんです。つまり地球人はこの宇宙の物理法則とは全く違うシステムの世界を作り出したんです! もっと砕いていうとインターネットは人が作り出した別の宇宙っことです!)

「2進数だけでできた宇宙?」

(そうです!わかってるじゃないですか!)

「それがゴム人間と関係あるの?」

(もしインターネットと同じ2進数の物理法則が働く宇宙があって、実際にインターネットと繋がっているとしたら?ゴム人間はそこの住人なんじゃないかなって。もしかしたらインターネット上にあるConetは別の宇宙のゲートになってるのかもしれません・・・)

「ゴム人間は・・・別の宇宙から来た宇宙人?」

(まぁ、私の妄想ですけどね!)

「なんだ脅かさないでよ・・・じゃあ、そろそろ僕は寝るよ」

(はい!おやすみなさい)

僕はユークの話を軽く流して眠ってしまった。今学校であんなことが起こっていると全く知らずに。


* * * 


  真っ暗な廊下。外の電灯の明かりでギリギリ視界は確保できる。化学教師の早嶋浩太は残業を終え、一人夜の校舎を歩いていた。

「ちくしょー、ちょっと職員会議に遅れたからってあんな雑務押し付けやがって…。もー最悪~」

電気のついていない廊下を早嶋はグチグチ言いながら、歩いた。誰もいない夜の学校はたとえ大人にとっても不気味だ。だから早嶋はスマートフォンを懐中電灯代わりに使用して廊下を歩いた。

 しばらく歩くと早嶋は何かを見つけた。・・・放送室のランプが光ってる。

「もー誰だよ…電源つけっぱにしたやつは…」

早嶋は大きく溜息をはいて放送室に入っていった。

 放送室の中は廊下以上に暗くて何も見えない。なにしろ窓がなく街灯や月の明かりすら入らないのだから。早嶋はスマホの明かりをたよりに電源スイッチを探した。

「スイッチ、スイッチは…」

  その時、部屋の奥、防音室のガラスが青く光り始めた。

「ん?なんだ?」

  早嶋は眩しそうにしながら防音室の方へ進んで進んでいきドアを開いた。

・・・なにもない。今自分が見たのなんだったんだろう。疲れてるのかな?早嶋はそう思ってドアノブに手をかけた。。

「あああああああああぁ」

ドアを開いた早嶋は驚愕し思わず尻餅をついた。ドアの前には緑色でケロイド状の皮膚を持った怪人が立っていたのだ。

怪人は不気味な金属音をならしながら近づいてくる。

「ヒィヒヒヒヒィ!!」

夜の学校に奇怪な笑い声と男の悲鳴が響きわたった。


* * *


 次の日の昼休み、僕は教室の前の方で騒ぐ女子グループを煙たく思っていた。

「次の時間さ、ハヤシマーの授業だよ!」

「そっか今日、水曜日か!やった!」

「ハヤシマーイケメンだよね!」

早嶋先生人気高いよなぁ・・・そんな授業毎に騒ぐほどかなぁ。

(まぁ若いし、ルックスもそれなりですしね)

ユークが話に入ってきた。

(もうちょい、威厳があったらいい先生だよな)

(そうですねぇ。Conetでもすっごくチャラチャラしてましたし)

(な、なんで早嶋先生のConetなんて知ってるんだ!)

(昨日アイナさんが寝てるときに、ちょっとスマホとお体をお借りしていろんな人のConetを覗いちゃったんです!)

(勝手に人の身体を使うな!)


時々こんな風にユークは僕が寝てる間に僕の身体を動かしてなにかするときがある。この間なんて目が覚めたら森の中にいた。お蔭でその日は寝不足できつかったなぁ。全く困ったもんだ。

 それにしても早嶋先生のConetかぁ。

(友達数もかなり多くて保護者のお母さまたちに大人気みたいです!)

それっていろいろ問題なんじゃ・・・。

 その時チャイムがなる。騒いでた女子たちもザワザワしながら席にいた。するとドアが開いて先生が入ってきた。

「さぁ、みなさん。席についてちょうだい」

「あれ?岡嶋先生?ハヤシマーは?」

 あれ?早嶋先生じゃない?

「早嶋先生は怪我をされて今病院にいらっしゃるので、今日の化学は自習です」

「えぇえええええ」

クラス中がどよめいた。怪我?何があったんだ!?

「昨日の夜、放送室の前で転ばれて頭を打ったそうです。寝ぼけていたんでしょう。まったくだらしないですね。ベッドの上でうわごとで、ゴム人間、ゴム人間とか呟いてるみたいですよ。」

(アイナさん!やっぱり、ゴム人間って!)

・・・本当にいるのかもしれない。僕たちは確信した。


* * *


帰り道、僕はユークとゴム人間について考えた。もしユークの言う通り、ゴム人間が別の宇宙から来た存在だとしたら、どうやって標的を選んでるんだろう・・・そして目的はなんなんだろう?

(昨日の夜、調べたのですが、スバルくんの話していた高校生、実は行方不明になってないみたいなんです)

「え?そうなの?」

(噂に尾ひれが付いちゃったみたいで本当のところは現場の神社で倒れていたみたいなんです)

「それじゃあ、早嶋先生と同じ・・・」

(それだけじゃありません。2人にはもう一つ共通点がありますです)

「そっか、二人ともConetの人気ユーザーだ!」

(もし、ゴム人間が本当に、インターネットと同じようなシステム宇宙の住人なのであれば、彼らにとっての強さは、『つながりの強さ』です)

「・・・だから、web上で強い繋がりを持っているConetの人気ユーザーを狙っているんだ!」

(あれ?あそこにいるのって飼篠さんじゃないですか?)

本当だ。昨日と同じ場所でせわしく動き回ってる。今日は制服だ。

「飼篠さん、どうしたの?」

「ひ、弼星君!ミナモが!」

なんだかすごく慌ててる。何かあったんだ!

「ミナモがいなくなっちゃったの!どうしよう!」

「ミナモが!?えっと、GPSは?」

「それが何だかおかしくなっちゃって、これ見て」

飼篠さんはスマホを出して僕に渡してきた。

(こ、これはっ!アイナさん!)


『○×△♨#‘+?』   

見たことのない文字がConetの通知に表示されている。間違いない・・・ゴム人間からのメッセージだ!

(飼篠さんは最初の被害者や早嶋先生と同じでConetの人気ユーザーです!ゴム人間は飼篠さんを狙って彼女の端末に入り込もうとしたのでしょう。でも誤って飼篠さんのConetと繋がっているミナモちゃんの首輪に入り込んでしまったんです。)

「飼篠さん!この、携帯…借りるね!」

「えっ?」

「僕たちが・・・いや僕が、ミナモを探してくる!」

僕は飼篠さんのスマホを持ったまま走り出した。

「ま、まって、弼星君!」

ごめんね、飼篠さん。このままではミナモと君が危ないんだ!

(ゴム人間はいつ具現するかわかりません!急ぎましょう!)


 * * * 


 一匹の小さな猫が木の葉ヶ丘のとある神社の横を歩いてた。彼女の身体は黒く夕暮れでできた木の陰に体が解けてしまいそうだ。彼女の首には小さな機械が入った首輪がついていて、小さな青い光が点灯している。しばらくするとその明かりの色が青から赤に変わった。すると彼女は何だか眠くなってしまった。

 猫が倒れると…そこにゴムのようなケロイド状の肌を持った怪人が現れた。

「いた、あれがゴム人間!」

僕たちはGPSを頼りに遂にミナモの元にたどり着いた。

「ミナモ!」

僕は急いでミナモの元に抱え付け、ぎゅっと抱きかかえた。

「ゴロニャー」

よかった。ちょっと疲れているみたいだけど無事みたいだ。

(アイナさん、気を付けて!)

ゴム人間は頭をクネクネと動かしながらゆっくりこっちに歩いてきている。

「ヒィヒヒヒヒィ!!」

ゴム人間は奇怪な声をあげている。こ、怖い!

「ま、負けないぞ!ゴム人間!」

『ゴムニンゲン・・・?ソレはワレワレのコトか?』

不気味な低い声があたりに響いた。ゴム人間の声なのか!?。

「おまえがしゃべっているのか?」

『オマエ、フツウのニンゲンじゃないな。ワタシのコトバがリカイできるとは』

(アイナさん!こいつは自分たちの言葉で話しかけています。それを私の能力で解析しているんです!)

『ワレワレはスルーク人。キミたちのスムこのウチュウのトナリのウチュウからキタ。』

(スルーク人、目的はなんですか!)

ユークの言葉にスルーク人はおかしそうに首を傾げた。

『モクテキ?ソンナモノはナイ。ワレワレはタダ、イキテイルいるダケ。タダホンノウのママ、ハンショクするダケダ。ワレワレのウチュウはもうセマイ。ダカラ、このウチュウにイジュウし、このウチュウでサラナルハンエイをハタシ、このウチュウのシハイシャとナルノダ!』

そういうとスルーク人は「ヒィヒヒヒヒィ!!」と奇怪な笑い声を上げた。このこんな宇宙で繁殖して、この宇宙の支配者になるだって?・・・そんなことさせるものか!

『ソノタメに、ワレワレは人間の生体エネルギーをツカイ、このウチュウに具現化する。オオクのツナガリを持つそのコタイはワレワレにトッテサイテキのポータルなのだ!』

スルーク人は僕の背後を指さした。

「し、飼篠さん、なぜここに!」

「あ、うぅあ、ああ・・・」

飼篠さんは恐怖のあまり、動けないみたいだ。スルーク人は手をゆっくり伸ばしてこっちに向かってくる。

(アイナさん!まずは飼篠さんをつれて逃げましょう!)

わかった!

「飼篠さん行くよ!」

「え!?」


僕は左手にミナモを抱えて右手で飼篠さんの手を握った。飼篠さんは混乱してるみたいだ。

「走るよ!」

僕たちは駆けだした。転びそうになる飼篠さんだったが何とか僕の腕の力で持ちこたえた。

『ワレワレから逃げれられるとオモッテいるのか!』

 スルーク人はさっきのゆっくりとした動きからは信じられないスピードで走ってきた。走る動作がまるで人間と違って、気持ちが悪い。足や体がヌルヌルと物凄い速さで動いていて軟体動物みたいだ!

(このままでは追いつかれます!)

その時、僕の腕からミナモが飛だした!どこにいくんだ?ミナモは道端に乗り捨ててある自転車の籠に飛び乗った。そうだ、これなら早く走れる!

「飼篠さん、これにのるよ!」

「ええっ!待って!」

僕は飼篠さんの手を引っぱりあげて、荷台に乗せた。

「さぁ、いくよ!」

僕は一気にペダルを踏みこんだ。チェーンが錆びているのか、ギシギシ音が鳴って車体がグラグラと揺れる。でもバランスのことなんて考えてる暇はない。飼篠さんは僕の腰にギュッと掴まって。僕たちはそんな状態で下り坂に突入した。

「きゃぁあああああああ」

2人分+1匹の重さで自転車は凄いスピードで坂を駆け下りた。まるでジェットコースターだ。飼篠さんの悲鳴がこだまする。

これで大分距離を離せたはず。僕は振り返った。スルーク人は信じられないスピードと独特のフォームで猛スピードですぐ後ろまで迫っていた。

「うそだろ!!なんだよあの速さ!」

「きゃ、追いつかれるよ!」

スルーク人は追い抜かんばかりのスピードで自転車の横までやってきた。

「くそぉお」

僕は強くペダルを踏みこんだ!追いつかれるわけにはいかない!

「にゃー」

ミナモが鳴き声をあげた。前に、前に崖が迫ってるんだ!前には崖、後ろにスルーク人どうしよう!

(アイナさん、今こそ精神一体化です!)

(でも、今自転車だし!後ろには飼篠さんが!)

(心配せず私を信じてください!)

(分かった!いくよ、ユーク!)

(はい!)

僕はハンドルから光り輝く右手を離して前に突き出した。


〈サイコネクト!〉


* * * 


「きゃぁあああああああ」

 アイナとヒトミ、ミナモの乗った自転車はそのまま崖に突っ込んでいった!こだまする少女の悲鳴。異次元生命体スルーク人は思わず、呆気にとられた。まさか自ら命を絶つとは。

キュィイーン!

その時、崖の下が光り輝き、眩い光の塊が飛び上がってきた。

「テヤァアアッ!」

サラー母星の精神生命体ユークと、弼星アイナが心を一つにした時、彼らは巨大な姿に変身する。そう、

この姿こそ無敵の超人『ユーク・エクスマキナ』だ!

ユーク・エクスマキナは掌に乗せたミナモとヒトミを野原に優しく降ろした。2人とも意識を失っているみたいだ。

『ナニモノダ、キサマ。ワレワレのジャマをするモノはダレダロウとユルサァアアアアアン』

ゴゴゴゴゴゴッゴオ・・・。スルーク人はユークに対抗するべく身体を巨大化させた。身長50m。なんと恐ろしい怪物だ。ユーク・エクスマキナはその怪物に果敢に挑んでいった。

「ティアッ!」


「んっ・・・」

飼篠ヒトミは目を覚まし体を起こしあたりを見回した。

「ミナモ!ミナモ!」

彼女の呼びかけに答えるかのようにミナモは姿を現した。

「ミナモっ…よかった!よかった!」

ヒトミは泣きそうなような、ほっとしたような声でミナモを抱きかかえると、すくっと立ち上がった。

夕闇の中、2つの巨大な影がぶつかり合い、激しい音が鳴り響く。ヒトミのいる位置からは逆光でよく見えないが、この宇宙を掛けた戦いが繰り広げられていることは良くわかった。その運命の瞬間に立ち会うべく、猫を抱えたまま駆け出した。

スルーク人はあまり戦闘能力が高いわけではなく、力とスピードでユーク・エクスマキナに押されているようだ。ユークは敵の全身に素早くパンチやキックを連続で叩きつけた。するとスルーク人は大きく後退し唸り声をあげた。

『オノレェ・・・!オマエもワレワレの糧にしてやる!』

スルーク人は手を思い切り横に広げた。すると背中からニュルニュルとした黒い物体が何本も生えてきた・・・触手だ!

スルーク人は触手を伸ばしユークの腕に巻きつけてきた。振り払うユークだが次々とユークの身体に巻き付いてくる。ついには8本全部の触手がユークに巻き付いた。これでは身動きが取れない。

「ウウウウ…ヌァアアアアアアッ」

ユーク・エクスマキナは悲痛な声を上げた。怪人の触手一本一本から何かが放たれたのだ。どうやら針のようだ。

『グフフ…!クルシメ、クルシメ。お前のソノ生体エネルギー…ワレワレがイタダク!』

ユークは必死に抵抗するが、どんどんと力が抜けていく。

(もうダメなのかもしれない…)

アイナは巨人の意識の中で思った。

(アイナさん!あきらめちゃダメです!)

(ユーク…でも、もう力が出ない…。)

(アイナさん、だからあきらめたらダメなんですって!私たちの意識が1つになってないと、サイコネクトが解除されて返信が解けてしまいます!私は諦めませんから!)

「巨人さん!負けないで!」

その時、一人の少女の声が二人の耳に届いた。飼篠ヒトミだ!

(この声は…)

「巨人さん、この間もガロガスから私を、いや、私たちの学校を守ってくれたよね?だから大丈夫!あなただったら、そんな怪人すぐ倒せる!だから頑張って!!」

その声は不思議な声だった。スルーク人に奪われカラカラになっていた体中のエネルギーがどこからか沸き上がってきくるかのようだ。解れかかっていた2つの意識は再び一つの意識として覚醒した!

「ォオオオオ…」

ユーク・エクスマキナは気を溜め、全身を一気にスパークさせた。電気が流れるように触手に水色のエナジーがツ輪割っていく。

「ハァアアア!!」

ユークが一気に力を解き放つとスルーク人の触手は粉々に吹きとんだ!

流石のスルーク人も悲鳴をあげる。今がトドメを刺す時だ!

ユークは右手を青白く発光させ巨大な爪を出現させた。

必殺ユーク・レイ・クロー!!

ユークの手から解き放たれた光の爪がスルーク人の身体を貫いた!

『ギャアアアアアアアアア』

断末魔を上げスルーク人はブロックが崩れるようにばらばらと崩れていき消滅した。


* * * 


「弼星君!弼星君!」

飼篠さんが僕を呼ぶ声が聞こえる。

「飼篠さん!こっち、こっち!」

僕は急いで飼篠さんに駆け寄った。

「弼星君、大丈夫?怪我はない?」

飼篠さん…目に少し涙が浮かんでる。なんだかぼくも泣きそうだ…。

「だ、大丈夫!げんき、げんき!」

「私逃げてる途中からちょっと記憶があやふやでよく覚えてないんだけど・・・」

「僕も途中から記憶がふわってしてて…」

・・・ぼくが倒したなんていえないよ。

(もっと、誇ってもいいと思いますけどね)

そうなのかな・・・

「でも弼星君、また・・・助けてもらっちゃったみたいだね。ありがと!」

「え?また?」

「あれ?前にもこんなことってなかったけ?」

・・・もしかして、ぼくがユーク・エクスマキナだってバレてる?

「・・・木の上のミナモを助けた時かな?」

「うーん、良く覚えてないや!」

そっか、よかった。バレてないみたい。

(でも、アイナさんの想いはしっかり伝わってるみたいですね)

(いや、今回助けられたのは僕のほうだと思うよ。飼篠さんの応援がなければ僕は…)

(…そうですね。私も飼篠さんの声が聞こえたおかげで落ち着くことができましたし。)

「飼篠さん・・・。なんていうか、その…ありがとう!」

「え、こちらこそ!ありがとう。」


 僕たちは、訳も分からずお互いにお礼を言い、夜の星を眺めながら帰路についた。そしてついに飼篠さんとConetを交換してしまった。

(それに彼女と同じ飼育委員だって判明しましたからね、良かったですね)

・・・。うんこれでいいんだよね。


* * *


『今日の放送はここまでです!ここまでご視聴ありがとうございました!バイビー!』

「エンコード終了!これでよしっと」

彼は動画投稿サイトに自らを撮影した動画をアップロードした。最近はConetに続きこういった動画投稿サイトが流行りつつあるのだ。

「ノブユキ、ごはんよー」

「はーい」

夕食に呼ばれ、部屋を出て行った彼のPCに1件のメッセージが映し出された。



「あなたの動画に1件のコメントがつきました


『○×△♨#‘+?』


サイコネクト第2話 おわり


おまけ

異次元生命体 スルーク人

身長:40メートル 体重:1万トン

全てが2進数で作られた別の宇宙に住んでいる生命。日本では「ゴム人間」、アメリカでは「スレンダーマン」と呼ばれ都市伝説となっている。知的生命体ではあるが人間とは生命や繁殖等、価値観が違い、種の繁栄の為なら他の種を滅ぼすことも良しとする凶悪な生命体である。戦闘能力はあまり高くなく多くの触手を伸ばして戦う。



第2話いかがでしたでしょうか?

次回、第三話、第四話はボイスドラマでの公開となっております!

是非是非、サイトのほうでお聴きになってください♪http://saikonekuto2016.jimdo.com/

第三話10月1日公開予定


※この作品はサイコネクトproject公式ページで連載しているものの転載です。

そちらではボイスドラマやMVも公開しているのでよかったらそちらでもお楽しみください。

コチラ⇒ http://saikonekuto2016.jimdo.com/

ツイッター⇒https://twitter.com/saikonekuto

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