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サイコネクト!  作者: 火炎ロダン withサイコネクトproject
1/6

第一話「僕と猫と宇宙人」

この作品はサイコネクトproject公式ページで連載しているものの転載です。

そちらではボイスドラマやMVも公開しているのでよかったらそちらでもお楽しみください。

コチラ⇒ http://saikonekuto2016.jimdo.com/

 僕は白い空間をただひたすら落っこちていた。…いや、落ちているという表現は間違っているかもしれない。身体が風船みたいに軽くなってフワフワっと下の方に降りて行っているような感じがする。なんというかとても心地いい感覚だ。僕はその不思議な感覚に身を任せて深い眠りに落ちていった。


                *    *     *


 眩しい・・・。カーテンの隙間から漏れる光で僕は目を覚ました。ここは…どこだろう?僕の寝ている白いベッドが薄緑のカーテンが取り囲まれている。そう、ここは学校の保健室だ。でも僕はどうしてこんなところに?

(目が覚めたみたいですね)

あれ?…今、なにか聞こえたような?

(お身体の調子は大丈夫ですか?)

やっぱり、人の声がする。この部屋に僕以外の誰かがいるのかな?保健室の先生?

(あのぅ、聞こえますか?)

いや、保健室の先生じゃない。もっと若い声だ。女の子。確かに僕と同じくらいの女の子の声だ。…でも、いったい誰だろう。なんだか少しぼやけて聞こえるような…

(ねぇったら、聞こえてますですよね?)

なんか図々しい声だなぁ。日本語もおかしいし。早く返事をしたほうがよさそうだ・・・。

「はい、聞こえてま…あれっ?」

僕は恐る恐るカーテンを開けたが…・・誰もいない。

まわりを見回しても、誰もいない静かな保健と不気味な人体模型が立っているだけだ。まさか、空耳だったのかなぁ。

(あ、えっと、そこには私はいませんよ!)

まただ。やっぱり聞こえる。僕は思わず、声に問いかけた。

「えっと、誰かいるんですか!?」

(だからここにいますって!)

声は答えた。

「ここってどこだよ!?」

(どこって…う~ん。なんて言えばいいんだろぉ。そう、キミの…カラダの中かなぁ)

僕の身体の中?…なにを言っているんだ、この声は?

(はぁ…まったくぅ…とりあえず目を閉じてみてください!)

「め、目を閉じるっ…?なんでだよ!ていうか、君は誰なのさ!?」

(もう!いいから早く目を閉じて!自己紹介はそこでしますから!)

訳が分からない。なんでもいいや…しかたなくその声に従って僕は目をギュッと閉じた。

(さぁ、目を閉じましたですね?)

「…閉じたよ」

(じゃあ、目を開けてください!)

もう、目を閉じろって言ったり、開けろって言ったり…なんなんだよ…。僕は訳も分からず目を開いた。

「やぁ」

「うわぁあああああ!」

僕は驚いて飛び上がった。なにしろ自分の鼻から3センチも離れていないところに女の子の顔があったからだ。女の子の方ものけぞって目を丸くしている。

「び、びっくりさせないでくださいよぉ!」

「それはこっちの台詞だよ!…というかここ何処!?」

僕たちは地面も壁もないおかしな空間の真ん中にいた。あたり一面真っ暗なこの空間には、キラキラと光の粒が輝いていてまるで星空の中に放り出されてしまったみたいだ。唖然とする僕を見て彼女は口を開いた。

「ここはキミの心の中、精神世界です。」

「精神…世界?」

日常では耳にしたこともない言葉だ。…こんな良くわからない空間にいるわけだから当然か。この女の子だってよくわからない格好している。長く伸びた髪に大きな丸い髪飾り二つ。周りの空間と対照的に真っ白なドレスのようなワンピース。額には妙な形のアクセサリーを載せている。まるでゲームか何かのキャラクターみたいだ。

「改めまして、はじめまして。弼星アイナ(ひつぼしあいな)さん。」

「どうして…僕の名前を?」

「私の名前はユーク。銀河警備隊隊員です!この銀河からキミたちの単位で400万光年ほど離れたサラー母星からきました。」

ゆーく?銀河系警備隊?さらーぼせい?次々とよくわからない単語が出てくるぞ…。僕は夢を見ているのかな?何が何だかわからない。

「…お願いだから、順を追って話してくれないかな?」

「ふぃー…まだ分からないですかぁ。しかたないなー。よし、じゃあ今最初から話しますね!」

「お願いするよ。」

「では、いきますよ。あの事件が起きたのは今から地球の時間で約8時間前におきた出来事です。」

ユークと名乗ったその子は何とも非現実的な物語を語り始めた。

 「あの時、銀河警備隊員A01号はちょうど日本、関東の上空を飛行してましたです。銀河系警備隊員A01号…これが私、ユークです。銀河警備隊は私の故郷サラー母星を中心に結成された銀河系のあらゆる銀河のあらゆる星々の秩序を守る精鋭チームです。そして、そして、この銀河系を警備する担当は…この私なのですよ!どう?すごくないですか!…まぁ、それは置いておいてですね。私はこの星に留まるために宿主(ホスト)を探していました。あ、宿主っていうのは文字通り私たちサラー母星人が魂を宿すための身体を貸してくれる人のことです。私たちは身体を持っていないですから…。とにかく私は私の魂を安心して預けられる勇敢な地球人をさがしていましたのです。」

「ちょっと待って、それじゃ君は宇宙人だってこと?」

僕はユークの話に聞き入っていたが、引っ掛かる単語があったので話に割って入った。

「まぁ、分かりやすく言えばそうなりますね。精神生命体だから物質生命のキミたちとは違って身体は持っていないですけど」 

この女の子が僕の身体の中に…。考えたら凄く恐ろしいことだ。自分の身体の中に他人が、しかも、得体も知れない宇宙人が。それって所謂パラサイトじゃないか…。そして精神生命体ってどういうことだ?身体がないって…どうやって生きているんだろう?…いろいろ考えていると僕は不安になってきた。

「えへへっ、心配することはない!」

そんな自信満々に言われてもなぁ。ユークは胸を張って笑っている。こんな一見普通の女の子が本当に宇宙人なんだろうか。…というかなんで、この宇宙人はなぜ僕なんかを選んだんだろう。

「それはキミが勇敢なヒトだからです」

「えっ?」

ユークが真剣なまなざしで僕を見ている。今までとは雰囲気が少し違う。

「キミは絶体絶命の命を救い出した勇敢なヒトだから・・・私はキミを選びました。」

「いやいや、そんなの全く身に覚えがないんだけど…」

当たり前だ。だって僕はただの高校生なんだから。そんな誰かの命を救うだなんて…

「そっかぁ。忘れちゃったんですね。じゃあ私が今すぐ思い出させてあげますでしょう!」

ユークはそう言って大きき手を2回たたいた。

「…さっきから思ってたんだけどさ。なんか日本語おかしくない?」

「ま、そんなことはいいじゃないですか!」

その時ユークの掌から白く光が現れた。

「な、なんだそれ?」

「ちょっと眩しいですけど我慢してくださいね。」

「えっ、だからなにがっ!?」

「それでは行ってみましょう!あの事件が起きる30分前の記憶の旅へ!」

ユークが言その葉を発した瞬間、掌から白い光が解き放たれ僕の視界が黒から白に一瞬塗り替えられた。

あまりの眩しさに僕は目をギュッと閉じた。



*    *     *


 一体何が起きたんだろう。また体の感覚がおかしい。妙にフワフワするぞ。

(アイナさん、アイナさん、もう目を開けて大丈夫ですよ)

僕は恐る恐る目を開けた。そこには一面の青が広がっていた。黒い空間、白い空間の次は青いか…。

(違います!下を見てください!)

(下…?うわぉおおおおお!)

僕は自分の目を疑った。なにしろ街が、自分の良く知る木の葉ヶ丘の街が自分の足元にあったから!

(僕、浮いてるっう!?)

(まったく、おーばぁりあくしょんな人ですね。そーんな、驚かないでくださいよ。)

(だってほらっ、ここスッゴイ高いじゃないか!)

(ここは私のキオクの中の世界。キミと私が過去に見た風景をイメージ化して再現したものです。本当はちょっと違うけど、簡単に説明するとこの空間のすべてがホログラムで出来てるみたいな感じで考えてもらっていいです。だから絶対に落ちることはありません)

(良くわからなないけど…安全なんだよね?)

(はい、それは保証します。あ、来ましたね。あれを見てください。」

僕は池を覗きこむようにかがんで自分の足元に広がる街を眺めてみた。少し怖いけど、自分が普段暮らしている街をみるのは新鮮で少し面白いかも。街は遊歩道に囲まれていて、登校する木の葉ヶ丘中、木の葉ヶ小に通う学生たちで溢れかえっていた。その中でユークの指を差していたのは2人組の男子生徒だ。なんだか見覚えがあるぞ。

(あれは…僕?)

(そう。あれは今から約8時間30分前のアイナさん。)

(そっか、今僕は今日の朝の光景を見ているんだ!)

(ふぃーやっと理解してくれましたかぁ。もっと近づいてみましょう。)

 今朝の僕はスバルと一緒に登校していた。いつものように肩を掴まれて絡まれてる。

「なぁなぁ、アイナ。今日のおはYOUTVみたか?」

「いゃ、見てないけど。僕、朝はあんまりテレビ見ないんだ。なんかあったの?」

「占いだよ!占い!今日乙女座1位なんだぜ!」

改めてみるとなんてハイテンションなやつなんだ…

(あのヒトはたしか…アイナさんの親友の牧村スバルさんでしたね。)

「へぇ、そうなんだ。良かったじゃない。おめでと」

「違げぇよ!お前9月生まれだろ?」

「あぁ、僕の話なのかぁ」

「運命の王子様に合えるかもだってよぉ♪」

「だからさ…僕のことを女あつかいするなって!もう、気にしてるんだから…」

(気にしてるんですね)

(うるさいなぁ…っていうか何でスバルのことまで知ってるんだよ?)

(さっきキミの頭の中をスキャンさせてもらいましたからっ!)

(ちょっと待ってよ!じゃあ僕の頭の中の情報は全部筒抜けってこと!?)

(全部じゃないですけど…いろいろ知っちゃいましたよ!例えばキミの想い人とか)

(や、やめてくれ恥ずかしい!プライバシーの侵害だ!)

(安心してください。私が情報を持っているだけで第三者に提供することは絶対ないですから!)

(なんだ…その個人情報の利用規約みたいなのは。)

「ん、あそこなんか人集まってねぇか?」

スバルが行く先をふさぐ小中学生の集団を見つけた。なにやら遊歩道沿いに植えられた百日紅の気を取り囲んできゃーきゃー騒いでいる。

「なんだろ?」

「おっ、そこにいるのはお前の王子様じゃん?」

「だからもう、その話はっ…あ。」

そうだ。思い出した。この時僕は人ごみの中であの子を見つけたんだ。そう、あの子を。

…飼篠ヒトミさん。僕が少し前から気になってしまった人。前に理科の授業で話したとき、なんだか妙に気が合ったんだよね。でも、僕が彼女に想いを伝えることは絶対にない。だって僕には…

(僕には?なんですか!その先が気になりますです!)

(わわわっ!勝手に人の心を読むな!)

(うぅ…私たちの関係だと、聞こうとしてなくても心の声が聞こえちゃうときがあるんですよぉ。お互いに気を付けましょうね)

…そんなこと言われても安心できないし、信用できない。

(安心してくださいよ!)

あぁ完全思い出した。このあと僕はある悲劇に見舞われることになるんだ…。スバルが僕の背中をどついている。あの子に話しかけろっていう催促だ。スバルは恋のキューピッドをやってるつもりなのかもしれないけど、邪魔というか、正直ありがた迷惑なんだよなぁ。…故意に邪魔をしようと思ってる訳じゃないだろうから申し訳ないけどね。

(ダジャレですか?恋だけに故意。)

(・・・ちがうよ)

「や、やぁ、飼篠さん。なにがあったの?」

「あ、弼星君、牧村君。えっとね。あの木の上に…」

「木の上?」

幹を見上げてみると青々と茂った葉の間になにか黒いものが丸まっている。尖った耳に長い尻尾。フワフワとした体毛に可愛らしい髭に小さな体。

「あれは…ネコ!」

「そうなの。よく私がここであうノラちゃんみたいなんだけど、降りれなくなっちゃったみたいで」

僕は百日紅の木肌に触れてみた。するするとして簡単には登れなそうだ…。あの猫は一体どうやってあんなところまで登ったのだろう…。

「ぬぅう、流石の俺でもこの木の細さじゃ…さすがに無理…かな」

体力テスト学年上位の運動神経の抜群のスバルもお手上げだ…。むしろその鍛えられた筋肉の重さが仇になっているんだ。そうなると名乗りを上げるのが…

「私が、私がいく!」

「えっそれは危ないよ、飼篠ちゃん!」

幹につかみかかる飼篠さん。更にそこに掴みかかるスバル。改めてみるとシュールな光景だ・・・。

軽くセクハラだからな、スバル。

(ヤキモチですか?)

「離して牧村君、じゃないと猫ちゃんが!」

「だからって女の子が木に登るなんて・・・」

飼篠さんは一見大人しそうに見えて、いざっていう時になると体が動いちゃうタイプなのかもしれない。一方僕は、あたふた動き回ってる二人を見て固まっていた。僕は飼篠さんとは逆にこういう時になると体が動かなくなってしまうんだ。でもこの時の僕はいつもとは少し違っていたようだ。


「わかった!僕が行くよ!」


なんでそんなことを言ってしまったのだろう。無意識にそんな言葉が口を飛び出したんだ。よくわからないのだけど、「僕が行かなければならない」そんな気持ちがしたのかもしれない。…覚えていないけど。とにかく夢中だった。

「えっ!弼星君」

「自分で言うのはなんだけど、僕、体重かなり軽いんだ。あの細い枝にだって僕なら登れる!」

・・・そんなわけがない。なにしろあんな小さな子猫が乗っているだけであんなに撓んでいるのだから。

「大丈夫かアイナ!だってお前高いところ苦手…」

「大丈夫!早くしないと子猫が」!

全然大丈夫じゃない。僕は所謂高所恐怖症でジェットコースターなんかは大の苦手だ。高いところにいるってだけで、鳥肌が立つ。さっきユークと飛んでいるときもかなり怖かったぞ。

「よしわかった。もし猫が落ちたら俺が下で猫を受け止めてやるから、早く行ってやれ!」

「ありがとう!」

「頑張って弼星くん!」

この時はもう、怖いなんて考えている余裕はなかった。

(この時アイナさんは本能だけで動いてたのかもしれませんね)

僕は、太い幹の枝分かれした又の部分に手をかけ木登りを開始した。今見るとこの時点で上の枝がすでにグラグラと揺れている。木肌は本当にするするしていて、その名の通り木登りの得意な猿でさえ滑って落ちてしまいそうで、せわしく手足を動かしていないとすぐにずるずると下へ引っ張られてしまう。猫の手も借りたいぐらいだ。でも僕は落ちるわけには行かない。

 猫に手が届くあたりには意外と早く登れた。普段木に登ることなんてないから感覚が分からないものだなぁ。客観的に見ると僕はなるべく下を見ないようにしているみたいだ。

「もう少しだ…」

「頑張れアイナ!」

スバルが木の下でブレザーを広げてスタンバイをしている。これで万が一猫が落下しても大丈夫だ。僕は猫にゆっくりと手を伸ばした。

「ニャア」

僕が手を使づけると猫はまんまるな目をキラキラと輝かせながら僕に近づいてきた。これならすぐ捕まえられる!

「よし、捕まえた!」

(猫ちゃん大人しいですね!)

(飼篠さんにも懐いてたみたいだし、人慣れしてるのかもね)

「よくやったアイナ!降りてこい!」

 僕は猫を抱いて、木を降り始めた。この時に気付いたんだけど気を降りるのは木を登るのは何倍も怖い。右手が猫でふさがっているからなおさらだ。ある程度、木を下ると猫は僕の腕を飛び出した。

「あっ!」

ギャラリーが騒めいて、心臓が止まるかと思った。でも大丈夫。猫は空中で器用にクルっと一回転、ブレザーに飛び込んみたいだ。

「だ、大丈夫かい?」

「ニャア」

「大丈夫みたい!ありがとう弼星君!」

・・・そんな芸当ができるなら初めから飛び降りればよかったんじゃないのかな…

でも安心した。飼篠さんが笑ってる。みんなが拍手している。…僕は少し恥ずかしくなった。でも、僕は何とか無事に猫をたすけることができたんだ。・・・この時はそう思っていた。

「アイナ、もう降りて来ていいぞ!」

「わかった!」

僕が気を抜いてる時だった。

……… ボキッ!

そんな鈍い音があたりに響き渡った。僕の掴んでいた枝が折れたのだ。

「うわぁあああああああああ」


僕は悲鳴を上げながら木の下に落ちた。



・・・ここからは僕にも記憶がない。

 その時突然、世界がピタっと停止した。落下する僕も、驚いた顔の飼篠さん、スバルも、風に揺れる百日紅の葉も。

(な、なにが起きたんだ?)

(覚えてませんか?アイナさん。私たちはこの時に出会ったんです。)

(この時に?どういう事だ?)

(これを見てください)

ユークがそういった瞬間に世界が動き出す。ただし、すべてがゆっくり遅く動いている。落ちていく僕なんて空中にフワフワ漂っているように見える。

(これは?)

(これは私とアイナさんが見た記憶を客観てきに再現したものだという事は覚えていますよね?この記憶は私が体感した音速の世界なんです。)

(じゃあ、君は今どこにいるんだ?)

(あれです!)

ユークは空の彼方の方を指さした。なんだあれは!淡いピンク色をした玉が、ものすごいスピードで近づいてくる!

(あの桃色の発光体が、私です。)

(あれが君!?)

(はい。本来、私には実体が身体がありません。これは私を光のイメージとして再現していますです)

発光体はどんどんこっちに向かってきて、僕の身体を包み込んだ。まるで光に抱きかかえられているみたいだ。

(私たちはこの時に一体化したのです)



***



「じゃあ、僕を助けてくれたのは・・・?」

(そぅ、私です!)

僕たちは記憶の旅を終え保険室のベッドに腰を掛けていた。今横に座っているこの子が僕の命を救ってくれたんだ。いや、あの高さから落ちても死にはしないかもしれないけど…。とにかく信じられない。

「なんていうか、いろいろと非日常的過ぎてまだ理解できてない部分が多いけど…ありがとう」

(いいえ。私はキミのような人を探していたんですから)

「そんなこと、言われても…僕なんて女々しいだけの意気地なしだし」

(いいえ違いますよ。あの猫を助けた時のキミの目の輝きを見ればわかります。キミには素晴らしい勇気と秘めたる可能性が備わってるんです!)

「・・・そうなのかな?」

やっぱり自信がない。猫を助けようと思ったのも無意識というか無我夢中だっただけなんだよなぁ。でも、猫も僕も無事だったわけし、何より飼篠さんの笑顔が見れた。それだけで嬉しい。

(ねぇ、アイナさん。これから私と一緒にこの地球を守るために戦ってみませんか?)

「戦うって、何と?」

(人類の未来を脅かす天敵とです)

「人類の天敵って・・・?」


ガラッ!

な、なんの音だ!音に驚いたのか、ユークは空気にとけるように消えてしまった。

「ゆ、ゆーく?」

「弼星くん!」

「え、あ、う、あぁ、し、飼篠さん!」

さっきの音は飼篠さんがドアを開けた音だったみたいだ。ユークとの会話…聞かれちゃったかな…?

「あ、ごめんなさい。・・・・ビックリ…させちゃったかな?」

「いやいや、そ、そんなことないよ。えっと、どうしたの?」

まずい、なんとなく取り乱してしまう!い、いやっ!な、なにも悪いことはしてないぞ!

「今、保健室に行こうと思って来たら…中から声が聞こえたから…」

「あ、あぁ。なんだか心配かけちゃって…その、ごめん」

宇宙人が助けてくれたなんて、口が裂けても言えない。

「ケガは、ケガは大丈夫なの?」

「特に傷もないし・・・体も痛くないし、うん。大丈夫じゃないかな」

宇宙人のおかげでケガしなかったなんて言えない!

「ふぅー、良かった!私、もし弼星くんが大きなケガをしたとか思ったら…心配で」

・・・飼篠さん。なんだかここまで心配されると、嬉しい・・・って思ってしまう。なんかアタマがボーっとしてきたぞ。顔、赤くなってないかな・・・?

「・・・。」

い、いかん!思わず黙ってしまった!

「あ、そうだ!あのネコちゃん。家で買うことになったの!」

「そ、そっか!よかった、よかった。」

・・・・・。間が、この間が辛いぞ!


ドドドドカァアアアアアン


「な、なんの音だ!」

 突然、沈黙を破るような轟音が校舎に鳴り響いた。何かが吹き飛んだような音だ。まだ鼓膜がビリビリする。そうだ飼篠さんは?

「大丈夫?飼篠さん!」

「だ、大丈夫!あ、あれ見て!」

窓の外に見える校庭が真っ黒になっている。グランドの砂が土が舞い上がっているんだ!いったい何が起きたんだ!

(こ、この気配は…っ!大変です、アイナさん!)

「ユークっ!」

「弼星君?」

「な、なんでもないよ!」

突然ユークが姿を現した!まずい、飼篠さんに見られる!

(安心してください。私のこの姿はホログラムです!キミにしか見えません!それより、ついにあらわれましたよ!)

(な、なにが!)

(私たちの天敵です!)

ギャオオオオオオオオン

再び校庭に轟応が響き渡る。でも今度は何かが吹き飛んだような音じゃない。生き物…そう大きな生き物の声だ。

僕たちは恐る恐る窓の外に広がる砂煙の中を覗いて見た。・・・動いている。巨大な影が、巨大な影が動いている。

「か、怪獣!!」

「ま、まさか本物の怪獣が現れるなんて!そんな!」

鳥肌が立った。これは現実なのか?学校の校庭から大きな影が這いずり出て来ているんだ。絶対に危ない!

「飼篠さん、は、早く逃げよう!」

僕は飼篠さんの手を引いて廊下の方へ走り出した。

(何言ってるんですか!)

突然ユークが声をかけてきた。

(何って逃げるに決まってるだろ!怪獣が、怪獣が迫ってきてるんだぞ!)

(このままではあの怪獣にこの学校はぺしゃんこにされちゃいますよ!いいんですか!)

(そんなこと考えてる暇ないよ!)

「って飼篠さんどっち行ってるの!?」

飼篠さんは僕の手をふりほどき、窓の方へ戻っていく。早くしないと! 何してるんだ!?

「ウサギが、ウサギたちが危ないの!」

「えっ?」

飼篠さんはかなり焦ってるみたいだ。顔が真っ赤だ。

「ウサギがあのガロガスにやられちゃうの!」

「な、なんだいガロガスって!?」

「あ、あの怪獣のこと!私、ウサギたちを助けに行ってくる!」

「あ、待って!待ってよ!飼篠さん!」

飼篠さんは外に飛び出してしまった。そうだ、飼篠さんはいざっていう時になると体が動いちゃうタイプだったんだ!

(「飛び出してしまった」…じゃない! 早く!私たちも行きますよ!)

「うん!」

僕たちも飼篠さんを追いかけ外に駆けだした。砂煙は大分マシになっているけど、大分視界が悪い。…飼篠さんは?

いた!正門の方に向かって走ってる。

グルガァアアアアアア

怪獣が唸っている。砂煙が薄くなり怪獣の全貌が見えてきた。怪獣は金色の大きな鱗を纏った恐竜のような姿をしている。2足の足でたっていて、前足が手のようになっている。そして口から伸びた長いキバが恐ろしい。絶対に肉食だ!怪獣はズシンズシンと大きな足音を響かせながら校舎の方へ歩き出した。

「アイナッ、お前どこに行くんだ!そっちは危ないぞ!」

誰かが僕を呼び止めた。スバルだ。きっと保健室にいた僕が心配になってきてくれたんだ。だけど、ゴメン!

「スバルどいてくれ!」

「おい、アイナっ!アイナーーーーーーッ!」


 僕は走って、正門の方へやってきた。でも飼篠さんが見当たらない。飼篠さんは・・・

(あそこです!)

ユークは校舎横にある木製の小屋を指さした。あれは…たしか。そうだ、飼育小屋だ!あそににはウサギがいたはず!

(飼篠さんはあの小屋の中にいますです!わかりますか!?)

「もう大丈夫だよ、スマイル、クローバー」

いた!2匹のウサギを抱えて小屋をでてきた。

ズドォン、ズドオン・・・

大変だ。怪獣が迫ってきている!このままでは飼篠さんが踏みつぶされてしまう!

「キャアアアアアアア」

「飼篠さん!」

飼篠さんの悲鳴がこだました。

もう、ダメだ。…もうダメなのか?でも、あきらめたくないッ!

(アイナさん!もう時間がありません!)

「どうすればいいんだ、僕は!?」

(あいつと戦うんです!)

「どうやって!?」

(私と一つになるんです。)

「君と一つに?」

(そう、心と心をひとつに、精神一体化(サイコネクト)するんです!)

「僕に・・・できるのかな?」

(できます!キミも私も飼篠さんやみんなを守りたいという気持ちは同じです!それにキミには勇気と秘めたる可能性が備わってるんです)

「わかった!やってみよう!」

すると突如僕の右手に違和感を感じた。見てみると中指がの周りが光に包まれている。。まるでそう、指輪のようなリング型の光だ。初めて見る不思議な光だけど、僕はその光の使い方を僕は知っている!

(行きますよ、アイナさん!)

「うん!」

僕は右手日拳を開いて前に突き出した!

〈サイコネクト!!〉

* * *

 飼篠ヒトミは生命の危機に瀕していた。突如学校に巨大な怪獣ガロガスが現れたのだ。ヒトミにとって怪獣とは家にある動物図鑑や歴史の教科書に載っていて自分たちとは全く関係ない世界に生きている存在という認識だった。しかし現実に怪獣は自分の目の前に迫っている。ヒトミにとっての日常が一気に非日常に塗り替えられた。

ギャアアアアアア

怪獣は咆哮し迫ってくる。もう私はダメだ…。恐怖のあまりヒトミは足がすくんで動くことができなかった。

ヒトミは絶望に襲われ、涙があふれてくる。

その時だった。ヒトミはガロガスの背面になにか小さな光をみた。一瞬自分の涙を見間違えたのかと思ったがそれもちがった。ヒトミが見た光は再び現れどんどん巨大化している。

「この光…」

ガロガスも光に気付き振り返った。いったい何が起こっているんだろうか。光はついに校庭をつつみこんだ。

「テヤァアアッ!」

光のなかから突如、何かが飛びだしてきた!怪獣はその力の強さで校庭の奥の方に吹き飛ばされ、学校の周りをかこっていたネットがなぎ倒される。

「あれは・・・」

 光が消えると、それは全貌を現した。

白い巨人だ。

尖った角2つに長い尻尾。白くスベスベとした大理石のような肌に太陽の光が反射してキラキラと光っている。

サラー母星の精神生命ユークからその命を助けられた弼星アイナは友人を救うべく巨人に変身したのだ。そう、このすがたはアイナとユークの心が一つになった時に変身できる姿、『ユーク・エクスマキナ』!

それゆけ われらのヒーロー

 ユーク・エクスマキナは大地を蹴って走り出すとかかんに怪獣に掴みかかった。ガロガスは予想外の敵に遭遇し驚いているようだ。しかし、ガロガスは中生代に生態系のトップにいた恐龍族の生き残りだ。元来の凶暴性を剥き出しにしユークに襲い掛かってきた。自分の肩に食らいつこうとしてきた怪獣の頭をユークは弾き飛ばし、顎をアッパーカットで殴りあげた。どんな生物でも顎は急所になっているため効果は覿面だ。怪獣が怯むとユークはわき腹に強力なローキックを数発打ち込んだ。ガロガスは思わず悲鳴を上げ早くも後退し始めた。

 ヒトミは怪獣が巨人と戦っているのを動けずに眺めていた。巨大な2つの影が激突するのは現実とは到底思えなかったからだ。これは映画でも演劇でもない、現実で起きている出来事なのだ。

 怪獣は巨人と距離を取り、グルグルという低温の唸り声を上げていた。野生の本能で接近戦では自分に分が悪いと分かったのだ。ユークが近づこうとするとガロガスは巨大な尻尾をこん棒のように振り回し始めた。地味だが意外と有効な攻撃手段だ。いくら強靭な体をもっている巨人であろうとあんな尻尾に弾き飛ばされたらただでは済まない。しかし、ユークはその攻撃を逆手に取った。鞭のように飛んでくる怪獣の尻尾をがっちりと両手で髪上げたのだ。これで怪獣は身動きをとれない!ギャオオオとガロガスはもがいてユークを振り払おうとしている。しかし絶対に離すものか!とユークは怪獣の尻尾を決して話そうとしない。ユークは力一杯怪獣の身体を引き上げ始めた。するとその怪力で怪獣の身体が宙に浮く。そのままハンマー投げのように振り回し遠心力のまま敵を投げ飛ばすジャイアント・スイング戦法だ!これで怪獣を校舎から引き離せる!

ズドーン!

地面に叩きつけられた怪獣は怒りの声を上げた。とどめを刺すならいまだ!ユークは怪獣に駆け寄った。

 その時だった。突如怪獣の金色の鱗が逆立った。

「グァアアッ」

怪獣にローキックを浴びせたユークが悲鳴を上げた。さっきまではただの鱗にしか見えなかったガロガスの鱗が逆立ち牙のように鋭くなっていたのだ。鱗は全身を覆っている。そう、古代牙獣ガロガスはまるで全身が牙になっている…全身凶器と呼べる存在だったのだ!怪獣は怯んだユークの右手に噛みついた。

グァアアアアアア

激痛が身体をはしりユークは悲鳴をあげる。振り払おうとするが怪獣が決して話そうとしない。さらには鋭い爪でユーク身体を引っ掻き始めただ。これにはたまらずユークは校舎の方に後退した。

さぁどうする、ユーク・エクスマキナ!

 ユークは一度怪獣と距離をとり、怪獣を観察することにした。全身牙のこの恐るべき敵をどう倒すのか、彼らは考えているのだ。よくみると、怪獣の腹部だけは鱗がない!あそこが弱点だ!ユークは前転し、怪獣の懐に飛び込んだ。この距離なら怪獣の腹部を狙い撃ちできる!

「テヤッ!ハァアアアっ!」

ユークは全身の力を右手に込め渾身の一撃をガロガスの腹のど真ん中に打ち込んだ。

ギャアアアアン

怪獣は口を大きく開き、地を揺るがすような悲鳴と白い泡の塊を吐き出した。

今がトドメを刺す時だ!

ユークは右手を青白く発光させ脇に引き寄せた。

歯には歯を、爪に爪をだ!

オォオオオオ・・・

ユークの身体に走るピンク色のラインがキラキラと光出し右手に光の爪が出現した。

必殺「ユーク・レイ・クロー!!」

ユークの手から解き放たれた光の爪が怪獣の身体を貫いた!怪獣は「グルグル」と唸って固まっている。

2体の間に僅かながら静寂の時間が流れた。

グッ…ギャァアアアアアアアン ドカアァアアアアアアン!!

怪獣の身体はスパークし、粉々に吹き飛んだ。ユークは勝利したのだ!

 戦いが終わったころには空が赤く染まっていた.。夕日に照らされてユークの身体も赤く光っている。

「・・・綺麗」

飼篠ヒトミはひとりそうつぶやいた。そうして巨人は夕日に解けるように消えていった…。

***

「飼篠さーん!」

スバルが飼育小屋に駆けつけてきた。

「牧村君!」

「はぁはぁ…アイナは?」

どうやら僕を心配してくれているみたいだ。

「弼星君とは、さっきまで一緒だったんだけど…」

「ま、まさかアイツ怪獣にやられたんじゃ…」

「そ、そんな!」

こ、これは早く出て行った方がよさそうだ。僕は校舎の影から飛び出した。

「おーい!」

「お、あれは!」

「弼星くん!」

飼篠さん、目をまん丸くして驚いてるぞ。僕は走って二人に駆け寄った。

「お前!心配かけやがって!」

「いたっ!どつくなよ!」

ただでさえ、怪獣との戦いで疲れてるのに、コイツはっ。

「弼星君、大丈夫?ケガとかしてない?」

「あぁ、うん大丈夫だよ、ありがとう飼篠さん」

よし、今度は間を作らずに応答出来たぞ。

(よかったですね。アイナさん♪)

(ありがとう、ユーク。君のおかげで学校も、そして友達も守ることができたよ)

ユークは笑顔で僕を見つめてくれている。

(ふふ、わたしもみんなの笑顔が見れてうれしいますです!)

(だから日本語おかしいって。)

(うぅ…チキュウゴハムズカシーデース)

(しかたないなぁ…僕が後で教えてあげるからさ。)

(わ、わ、わっ!ありがとうございますです!)

こうして僕たちの奇妙な共同生活が幕を開けたんだ。


第一話おわり



おまけ

  古代牙獣 ガロガス

 身長:50メートル 体重:2万5000トン

白亜紀に生息していた恐龍が温暖化の影響で目覚め怪獣化した怪獣。

怪獣の生態系のトップを占める怪獣だが、個体数が多く世界各地で出現している。

 全身に牙のような鱗を付けており、もともとは狩りや縄張り争いに使われたものだと思われる。


この作品はサイコネクトproject公式ページで連載しているものの転載です。

そちらではボイスドラマやMVも公開しているのでよかったらそちらでもお楽しみください。

コチラ⇒ http://saikonekuto2016.jimdo.com/

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