幕間 逃げ出した皇帝 シャノン編
12/07
日間一位をとらせて頂きました!
本編『セブンス』は四位です!
ありがとうございます!
嬉しくて、幕間を書いちゃった。
今回、後書きは消さないよ。一気読みするものでもないから。
「お前、俺を売ったな!」
「アハハハ、それがどうしたのよ。私は私のために行動する。真面目な話……私に本気になったお姉様を止めるなんて無理だから! 無理だからぁぁぁ!!」
両手をバタバタさせ、いかに姉であるミランダが本気だったかを語るシャノン。しかし、ライエルにしてみれば笑えない話だ。
「お前最低だよ! ノウェムの後にミランダはきついから、お前で一回ワンクッション置こうと思ったのに! 思ったのに!」
先日、シャノンの屋敷を訪れたライエル。
その前の日にはノウェムの屋敷に顔を出しており、休んだはずなのに疲れた顔をしていた。
そんなライエルがシャノンの屋敷を訪れたのは、ミランダのところに行くには体力が足りないと思ったためだ。
シャノンの屋敷で休んで、英気を養おうとしていた。
だが、それを見越していたのか――シャノンの屋敷にはミランダが待ち構えていた。シャノンはミランダの屋敷に泊まっており、ライエルは気を抜いていたところにミランダが待ち構えていたので「ギャァァァ!!」などと叫んでしまった。
それが気に入らなかったのか、ミランダに色んな意味でしっかり絞られたライエル。
そうして今日は、シャノンの屋敷に来て文句を言っていた。
「私でワンクッション置こうとか、そういう甘い考えを持つから悪いのよ」
ライエルはシャノンを見ながら、
「何を受け取った、言え! 俺を売った対価に何を受け取った!」
シャノンの両肩を掴み、前後に譲るライエル。
シャノンは頭をガクガクさせながら、
「だ、誰が言うものですか。嘘です! 言うから止めて。コロコロ出来るゼリーで売ったわよ!」
「俺はゼリー以下かよ!」
シャノンはライエルから離れると、髪を乱しながらも自分の胸に手をやった。二年間一緒にいるが、シャノンの胸が余りにも成長していない事に気がつくライエル。
(こいつ、ミランダと違って真っ平らだよなぁ)
「新しい味のゼリーが出来たの! 私……一番に口の中でコロコロしたかったの! そのためになら、ライエルくらい売るわよ! というか……どこ見てんのよ、スケベ!」
蹴りを入れてくるシャノン。
ライエルは一歩退いて避けると、シャノンのおでこにデコピンをする。
「痛いっ!」
おでこを両手で押さえるシャノンを見ながら、ライエルは笑っていた。
「皇帝であるこの俺を売るからだ、馬鹿め!」
すると、シャノンがライエルを鼻で笑った。
「はっ! お姉様とノウェムから逃げ回っている癖に皇帝? 随分と情けない皇帝よね。おら、かかってこいよ!」
ファイティングポーズを取るシャノンに、ライエルも「ふっ! 皇帝を怒らせたな。この一撃で仕留めてやる!」などと、両手を広げ、片足を上げるポーズを取っていた。
シャノンはいつも通り。
ライエルは疲れからテンションがおかしくなっていた。
二人して騒いでいるのを見ていたのは、幸せそうな顔をしているモニカとヴァルキリーズだった。
モニカと三体ほどが、屋敷の中で喧嘩をしている二人を見てその駄目さに惚れ惚れしていた。
涎を垂らしたモニカが、ハンカチで涎を拭う。
「なんて駄目な奴らなんでしょうね。お二人のヒヨコ様は確実に駄目な方を引き継いで、ハイブリッドな駄目可愛いヒヨコ様決定ですよ」
他のヴァルキリーズたちも幸せそうな表情をしていた。
「駄目な子ほど可愛いですからね」
「私たちがいないと生きていけない体にしてあげます」
「もう、今から楽しみで仕方がありません」
そんなオートマトンたちの呟きの先では、シャノンと喧嘩をしているライエルの姿があった。
「噛むのは卑怯だぞ! は、離せ!」
「うるふぁいわね!」
ポカポカと叩き合うライエルとシャノンを見て、オートマトンたちが幸せそうにしていた。モニカなど。
「ウフフフ、今日はとても素晴らしい光景が見られました。ついでに、将来の夢が広がりまくりです。お二人のヒヨコ様は私が面倒を――」
そんなモニカの目の前には、刃が突き立てられていた。ヴァルキリーズが真剣な表情で武器を持って構えている。
「お前は駄目だ。シャノンさんのヒヨコ様は、我々がお世話をする」
モニカがその場から飛び退くと、エプロンからお玉と鍋を取り出して構えた。調理道具で迎え撃とうとするモニカと、武器を持ったメイド服姿のヴァルキリーズが睨み合っている。
モニカは不敵な笑みを浮かべると。
「……ふっ、ここは協力しませんか? 私とて、ヒヨコ様は多い方が幸せです。モニカ、モニカと甘えてくるヒヨコ様たちを思うと、興奮して仕方がありませんよ。互いに、協力するべきなのです。何しろ、今のお二人はまるで兄妹ではありませんか」
四体のオートマトンの視線が、疲れて床に両手をついて息を切らせているライエルとシャノンに注がれた。
「な、なかなかやるな」
「あ、あんたもね。見直してあげるわ」
確かに駄目可愛い二人だが、あのままでは子供が出来るのは何年先になるか分からない。今のままでも良いが、出来れば二人の子供が見たい。
ヴァルキリーズは顔を見合わせ、そしてうなずき合う。武器をしまって代表として一体がモニカに右手を差し出した。
「いいでしょう。ヒヨコ様のために協力します。ですが、我々に優先権があるのをお忘れなく」
(まぁ、お前には指一本振れさせてやらんがな)
モニカはヴァルキリーの手を握ると、固い握手をした。
「えぇ、構いませんよ。優先権はそちらです」
(今の内に夢でも見ておきなさい。チキン野郎もヒヨコ様も独占するのはこのモニカですよ)
互いが互いを出し抜こうと考えているオートマトンたち。
笑顔で握手をしているが、その裏ではドロドロとした感情が渦巻いていた。
これより後に、シャノンにもライエルとの間に子供が出来る。
当初、ヴァルキリーズやモニカたちの興奮は凄いものがあった。
「駄目可愛い。駄目可愛い、のハイブリッドや!」
そんなモニカたちだったが、子供が成長するにつれてガックリと肩を落とす事になるのだった。
意外にも、シャノンの子供たちは優秀な子が多かったからだ。
次は、次こそは、などと二人目、三人目に期待するが、ことごとく予想を裏切って優秀に育ってしまった。
そんなシャノンとライエルの子供の中には、まるでミレイアのような女傑がいたとかいなかったとか……。
ミレイア。゜(*゜´∀`゜)゜ノ彡「シャノンの娘が私にソックリwww 可愛いわねぇwww」
七代目(・ω・` )「……可哀想に。まったく、叔母上の血もしつこいですよ――」
コイツゥ( ´∀`);y=ー(゜∀゜)・∵. ターン
ミレイア「ほらご褒美よ、ブロード君w」
七代目「ありがとうございますー!」