表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/63

【乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です SS】 タイトル 「宰相とユリウス」

明日12/6(金)は、コミカライズ版 乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 15話 の更新日!


14話を読み返しておくと、より楽しめるかも?


コミカライズ版は一話と最新話が「ブックウォーカー様」と「ニコニコ静画様」で読むことが出来ます。

 ユリウス・ラファ・ホルファート。


 前王朝の王太子だった男は、今では新王朝で働いていた。


 誰かが担ぐのではないか?


 前王朝の王太子が働いて良いのか?


 様々な疑問の声もあるが、第一にユリウスを担ごうとする貴族がいない。


 元王太子だったユリウスだが、学生時代に最大支援者のレッドグレイブ家の娘を婚約破棄している。


 その娘がアンジェリカ――新王朝の王妃だ。


 圧倒的な強さを持つリオンに対して、今更ユリウスを担いで正統性を掲げる愚か者などいなかった。


 いたとしても、すぐに鎮圧される。


 言ってしまえば、ユリウスはそんな馬鹿者たちをつり上げるための餌だ。


 ただ――そんな餌にも働いてもらわないといけないのが、今のホルファート王国の現状である。


 宰相の執務室。


 リオンのお茶の師匠が、そこで様々な書類を処理していた。


 元は学園でマナーを教えていた教師だが、昔はローランドよりも師匠を王に――という声があるほど、有能な男だった。


 そんな彼でも忙しい毎日を送っている。


「さて、この問題はどうしたものか」


 リオン――アンジェが行っている政策は、基本的に貴族たちの力を奪うものだ。


 貴族たちの数を減らす。


 領主たちを減らす。


 元から減りすぎた貴族たちの穴埋めに、優秀な民を採用する方針を掲げている。


 王国直轄地を広げ、王国自体の国力を更に高めることも行っている。


 ――つまり、かなり忙しい。


 アンジェも宰相も激務の日々だ。


 だから、猫の手も借りたい。


 考え込んでいる宰相のもとに、一人の男がやって来る。


「宰相、そろそろ休憩の時間ですよ」


 入ってきたのはユリウスだ。


「おや、もうそんな時間ですか」


 宰相が立ち上がると、ユリウスはお茶のセットを乗せた台を持ってくる使用人を中に通すのだ。


「お疲れでしょう。今日は俺がお茶を用意しました」


「それは何とも嬉しいですね。忙しい身ですが、どうしてもこの趣味だけは止められません。ですが、ミスタリオン――いえ、陛下ともお茶をする機会が最近は減ってしまっていますからね」


 弟子にして国王。


 そんなリオンともお茶をする機会は減ってしまった。


 そう嘆いている宰相に、ユリウスは笑みを浮かべる。


「リオン、いえ、陛下も忙しいですからね。今日は俺のお茶を楽しんでください」


「期待していますよ。それにしても、ミスタユリウスはやはり優秀ですね。引き抜いて正解でした」


「俺としては、少々不満ですけどね。マリエとの日々が短くなってしまいました」


 これさえなければ、この子はきっといい王様になったのに。


 宰相はそう思いながらも口には出さなかった。


(それにしても、お茶が気になりますね。先程から妙な匂いがします)


 お茶の用意を始めている使用人も、どこか困惑した表情を浮かべている。


(はて? 何か珍しいお茶なのでしょうか?)


 ユリウスは自信満々に持って来た茶菓子――と思われる皿にされた蓋を手に取る。


「今日は趣向を凝らしましてね。見てください、これが俺の新しいお茶です。これはもう、革命ものですよ」


「こ、これは!?」


 蓋を開けると、そこにあったのは――串焼きだった。


 宰相もこれにはビックリだ。


「――串焼きに見えますね」


 匂いも甘辛いタレの匂いがする。


 確かに食欲を刺激するが、宰相が求めていたのはこれではない。


 ユリウスは熱心に解説する。


「お茶と言えばお菓子! この概念を破壊するために、俺はあえてこの料理を選びました。お茶をしながら串焼きが食べられ、更にお腹も満たせる。一日三食串焼きでも足りない中、どうやれば食べる数を増やせるのか? そう考えた俺の最高傑作ですよ!」


 宰相は引きつった笑みを浮かべる。


 確かにおいしそうだが、そうじゃないのだ。


 宰相の胃が求めていたのは、お茶とお菓子だ。


 お茶を楽しむ空間を希望していたのに、出て来たのは串焼き。


 既に宰相の体はお茶を求める準備をしていたのに、出て来たのは――串焼き。


 想像して欲しい。


 たとえば、今日は大好きな料理が夕飯だと言われて楽しみにしていたら、家に戻ると出て来たのはまったく違う料理だった。


 たとえおいしくても――不満に思わないだろうか?


「ミスタユリウス、これはお茶ではありません。もう、食事です」


 宰相がそう言うと、ユリウスは悪びれもせずに言うのだ。


「えぇ、そうです。毎日串焼きを食べるため、俺の買い食いとお茶は全てこれです。まぁ、食べてみてください。今日の串焼きも良い出来です」


 ユリウスはパクパクと食べ始め、幸せそうな顔をする。


 宰相も一つ手にとって食べてみた。


「――おいしいですね」


「でしょう! 串焼きは最高でしょう!」


 そんなユリウスを見て、宰相は思った。


(彼はどこで道を踏み間違えたのでしょうか?)


若木ちゃん(ノД`)「後書きから私は消えても、みんなの心の中には残るわ。私、絶対に消えない! 記録からは消えても、記憶からは消えない!」


若木ちゃん( ゜∀゜)「そして元気に宣伝よ! 乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 15話 が、コミックウォーカーとニコニコ静画で 12/6日 に無料公開されるわ。潮里先生のコミックス版は1~2巻が絶賛発売中よ! 重版もしたって! お勧めだから買ってね!」


若木ちゃん(゜∀゜)「これだけコミカライズ版の宣伝を頑張れば、きっと私は優遇さ――」


エリシオン(-●);y=ー( ゜д゜)・∵. ターン「にゃいっ!」


エリシオン(-●)『……』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ユリウスは留学でのことが良いも悪いも成長に繋がったんだなと思う。 [一言] 団子を知れば改善できると思ってしまったが無理だろか...?
[一言] 三年も経てば 多年草が分け身の種を吐き出している可能性ががが… 「誰か斧を持てーい!」
[良い点] 残念元王子はまともになったんだ・・・まともになったんだよ! 串焼きいいじゃないか!おいしいし手に職を持って他より差がついてるじゃないか! まぁ残念すぎてやっぱり最後には悲しい結末が待ってる…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ