【乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です SS】 タイトル 「幸せの分配」
それはリオンが王様になった翌年のことだ。
「俺はみんなで幸せになる!」
急に思い付いたように騒ぎ出したのが始まりだった。
学園の友人たちを呼び集め、何を言い出すかと思えば――。
「学生時代からお前たちは俺のために尽くしてくれた。その褒美を用意したんだ。受け取って欲しい」
謁見の間にて、リオンの前で膝をつき頭を垂れるダニエルは、その申し出を一度は辞退した。
「いえ、陛下。当然のことをしたまでです。褒美など受け取れません」
リオンはそれを聞いて感銘を受ける。
「なんと謙虚なことだろう! 俺は最高の友人たちを持った。あの過酷な学園時代も無駄じゃなかったな。お前たちという素晴らしい友を得た! 学園時代、苦楽を共にしたお前たちは、誰が何と言おうと俺の友人だ。――だから、褒美を受け取れ」
拒否は許さないという威圧を込めるリオンに対して、レイモンドがそれでも辞退する。
「過分な評価をいただきありがとうございます。しかし陛下、友人であればこそ信賞必罰は徹底せねばなりません。私共への配慮はお心だけで十分です」
リオンが口に手を当てて感動している。
「お前たち――俺は何て素晴らしい家臣を持ったんだ! こんな忠義に厚い家臣たちを持てて、俺は幸せ者だな!」
呼び出された辺境の男爵たちが、リオンが笑うと一斉に笑い出す。
ただ、リオンがすぐに真顔になった。
「拒否は許さない。受け取れ」
ダニエルとレイモンドが、それでも拒否する。
「お断りだ」
「絶対に嫌だ」
先程までの和気あいあいとした雰囲気はそこになく、剣呑な雰囲気が場を支配していた。
褒美を渡したいリオンと、受け取りたくない友人たち。
何とも不思議な構図だった。
その様子を見ていたアンジェは、小さく溜息を吐く。
「ダニエル殿、レイモンド殿、陛下は何も私怨であなた方を出世させるのではない。現在、バルトファルト王朝は立ち上げで非常に慌ただしい。リオンに親衛隊が必要だとは思わないが、立場として必要だ」
リオンの命を狙える者などいないが、それでも一国の王に親衛隊がいないのも問題だ。
ホルファート王国で言うなら、王子時代の取り巻きたちが、親衛隊入りをした後に王子が王になった段階やその辺りで家を継ぎ、王の治世の手助けをする。
しかし、リオンに取り巻きなど存在しない。
辺境の男爵家から、一国の王に成り上がった男だ。
そういうわけだが、立場的に「親衛隊がいた方が良くない?」という理由で集められたのが――かつて苦楽をともにしたグループの友人たちだ。
ダニエルがそれでも拒否する。
「ふざけるな! 俺たちを散々利用してきたじゃないか!」
レイモンドも同じだ。
「これからもこき使うつもりなんだ! それに、辺境の貧乏男爵家に陛下の手伝いなんて出来ないよ!」
リオンは玉座に座り、脚を組んでいた。
ニヤニヤしている。
あぁ、これは悪いことを考えている顔だと、この場にいる全員が理解していた。
「確かに、貧乏男爵家には王都に呼び出されるのもきついな。俺もそれは良く知っている」
ダニエルが笑顔になる。
「え、分かってくれたのか?」
「騙されるな、ダニエル! あれは酷いことを考えている顔だ!」
レイモンドが即座に注意するが、もう遅かった。
リオンは立ち上がる。
「実は俺、今後は辺境にも投資をすることにしたんだ。国費からじゃない。俺個人の資産で投資してやる」
レイモンドが首を横に振って嫌がっていた。
「札束で殴るやり方は卑怯だよ!」
「何とでも言え! 金ならあるんだ。金持ちは強いんだ! ――領地に投資して欲しいだろ?」
ダニエルが頭を抱えている。
投資して欲しいが、その相手がリオンと知っていれば怖くて仕方ない。
魅力的な話だが、対価が割に合わないと悩んでいた。
アンジェが額に手を当てる。
「陛下、お楽しみのところを申し訳ありませんが、予定も詰まっています。さっさと話を進めてください」
「うむ! ――まぁ、苦楽をともにしてくれたお前らに、幸せを分け与えようと思ったんだ。お前ら全員――子爵に昇進だ。階位はダニエルとレイモンドが四位下で、その他の連中が五位上ね。いや~、役人たちを説得するのも大変だったよ。でも、友人たちにお礼がしたかったから、俺は頑張ったよ! あ、拒否は出来ないぞ。この謁見が始まる前に、お前たちはもう子爵様だ。おめでとう!」
出世と聞いてかつてのリオンが喜ばなかったように、ダニエルやレイモンドも嬉しくなど無かった。
そこにどれだけの苦労があるのか知っているからだ。
ダニエルがリオンに迫ろうとすると、護衛していた騎士たちが取り押さえた。
「は、放せ! あいつを一発殴らせてくれ!」
騎士が首を横に振る。
「気持ちは理解できます。ですが、仮にも陛下なのです!」
アンジェが騎士を注意する。
「仮ではなく正真正銘の王である。そこを違えるな――次はないぞ」
「も、申し訳ありません!」
威風堂々としたアンジェに敬礼する騎士たち。
まるで女王の風格があった。
その横でリオンが、高笑いをしていた。
「みんなでハッピーになろうぜ! 俺一人だけ出世するなんて間違っていたんだ。そうだよ! 友達も出世させてやるのが、優しさってものだよな! これからみんなでハッピーになろう!」
レイモンドが項垂れる。
「自分が出世して苦労したから、仲間を作りたいだけじゃないか」
リオンは否定しない。
だってその通りだから。
「気合を入れて領内の発展に力を注げよ。今日からお前らは俺の親衛隊だ。準備ができ次第、こき使ってやる!」
楽しそうなリオンに水を差すのは、アンジェだった。
「楽しそうなところを申し訳ありません、陛下」
「何?」
「それよりも、レパルト連合王国からの使者が来ております。すぐに面会してください」
「レパルト? あ、あぁ、レパルトね! う、うん」
「先王の妃であるミレーヌ様のご実家からの救援要請です。是非とも、陛下に協力していただきたい、と。レパルト連合王国でも陛下は大変人気だそうですよ。よかったですね」
このタイミングでアンジェがリオンを困らせたのは、ダニエルやレイモンドたちの憂さ晴らしの意味合いと――ちょっとした仕返しだった。
「で、でも、あの辺りのことはエリヤに任せているし」
「陛下に、是非とも協力していただきたいとのことです。これから忙しくなりますね、陛下」
身内ばかりがいるためにグダグダになった謁見の間で、リオンは最後に項垂れるのだった。
「――頑張ります」
それを見て、ダニエルやレイモンドが腹を抱えて笑う。
もう自棄になっているようだ。
「頑張ってね、陛下!」
「応援してます、陛下!」
リオンが二人と、他の友人たちを睨んだ。
「お前らも来い! 地獄の底まで付き合ってもらうからな!」
「えぇぇぇぇ!!」
全員が絶叫をして、そのままレパルトへと連れて行かれるのだった。
若木ちゃん(# ゜д゜) 感想欄閲覧中……
若木ちゃん( ゜言゜)「私を忘れるなんて絶対に許さない。――夢に出てやるから。一生忘れられないトラウマと共に、私の存在を刻み込んであげるわ」
クレアーレ( ○)『それって、呪われた何かみたいね。というか、マスターもあんたのことを忘れていると思うの』
ルクシオン( ●)『でしょうね。マスターなら忘れているはずです。それよりも、一人称がふわふわしすぎでは?』
エリシオン(-●)『マスターを困らせたらぶっ○してやる!』
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