表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/63

クロスオーバー注意 ハレトモ

こちらは「乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です」の感想でいただいたコメントで、ライエルを気にされている方が多いので書いてみました。

読者サービス向けで、ストーリーには関係ありません。

あと、宣伝です。

「お腹い~た~いのぉ!」


 ゲラゲラと腹を抱えて笑っている男がいた。


 ――ライエルだ。


 もう、笑いすぎて泣いており、とても嬉しそうに床を転げ回っていた。


「本当に最高! まさか、犬と囲っていた女の子の……ぷぷぷ」


 お腹が痛いほどに笑っているライエルに対して、冷めた目を向けているのはエアハルトだった。


 自由騎士エアハルトは、目の前の男がどうして笑っているのか分からない。


 だが、どうせろくでもないことで笑っているのを察していた。


「お前は本当に最低だけどな」


 立ち上がったライエルは、床を転げ回り汚れた服を手で払う。


「見苦しいところを見せてしまったな、友よ」


「誰がお前の友人だって?」


 エアハルトの言葉に、ライエルは酷くショックを受けた顔をしていた。


「俺たちは、同じハーレムで苦労したハレトモじゃないか!」


 ハーレムで苦労した友達。


 略してハレトモだ。


「俺がハーレムで苦労した理由は、お前のせいだけどな!」


 ライエルは胸に手を当てて、とても清々しい笑顔でエアハルトに語りかける。


「俺とお前は、共通の苦しみを知っている。望んでいないのに出来てしまったハーレム。女同士の戦いに胃を痛める日々。どっちが好きなのに、なんて答えに困る質問をして、君が好きだよと言えば喜んで周囲に暴露して火種をばらまく。正確に何番目に好きだよ! なんて言ってしまえば、一気に冷めたムードだ」


 ライエルを見て、苦労しているのは分かっても納得できないエアハルトだった。


「お前、言っているほど酷くなくない?」


「馬鹿野郎! お前、ハーレム――後宮なんて本当にドロドロしているからな!」


 リアルでそういった場所は、権力闘争やら女の戦いやら大変な場所だ。


 甘く優しい理想などそこにはなかった。


 世の男たちの夢と希望がそこにあるのなら、現実と絶望もちゃんとそこにある。


 エアハルトが、解決するのは簡単だと言う。


「なら、人数を減らせば良いだろうが」


「減らせるか! 減らしたら大変なことになるんだよ! いいか、俺に『うちの娘はいかがでしょう?』なんて言ってくる奴がどれだけいると思うの! 一人減ったら、そこに枠があると思って、自分の娘や縁者を押し込もうと――あぁぁぁ嫌だぁぁぁ!」


 皇帝になってしまったライエルは、昔は予想もしていなかった辛さに苦しんでいた。


 肩を落としている。


「……俺はもっと、内政とか外交で苦労すると思ったんだよ」


「跡継ぎの問題も大事だろ」


「大事だよ。けど、毎日腰を振れ、なんて言われたら――あれ? 俺の価値っていったい何? って思うだろ」


 グチグチと文句を言っているライエルに、エアハルトは――。


「でも、お前って結構幸せそうだよな」


「何が?」


「内政やら外交問題は、優秀な家臣が片付けてくれるだろ? 何だっけ? あのメイドたちとか、大活躍じゃないか」


 モニカを筆頭としたオートマトンが、日夜帝国のために頑張っています。


「後宮のことで悩める、ってまだいいじゃないか。俺なんか、誰もハーレムをまとめようとしないから、俺が頑張るしかないんだぞ。お前はそういうの、ノウェムさんに全部丸投げしているだろ。あとはミランダさん?」


 後宮の――ハーレムの管理をしているのは、ノウェムとミランダです。


「あと、俺の癒しはアリアとかヴェラだけだ、みたいに言っていたよな? シャノンの名前もよく出てくるし、結構楽しんでない?」


「……い、いや、それは」


 苦労していると言いつつ、結構楽しんでいるのがライエルです。


「お前狡いよ」


 ライエルは輝きを失った宝玉を握りしめ、涙を流すのだった。


「ご先祖様たち……ハレトモが俺の悩みを理解してくれません」


 きっと彼らも言うだろう。


『いや、お前が悪い』


 ――って。


 そんなハレトモ同士の、心温まる会話をしている部屋を覗いている男がいた。


 黒髪黒目のモブは――クスクスと笑っている。


 ライエルもエアハルトも、少し開いたドアから覗き込む男に気が付いた。


「――お前は!」


「え、誰?」


 モブは笑顔で部屋に入ると、べらべらと喋りはじめる。


「いや~、笑われていると思って仕返しに来たんですけどね。話を聞いていると、苦労されているんだと思いまして」


 二人の苦労話に心が痛いと言いながら、モブはとても嬉しそうにしていた。


 その態度に、ライエルもエアハルトも苛々している。


 こいつは人を苛立たせるのが得意である。


「俺は三人で苦労しているわけですが、やはり皇帝はスケールが違いますね。何人でしたっけ? 二十五人? それは素晴らしい! たった三人で『どうして俺がこんな目に!』なんて言っていた俺は、まだまだでしたね。反省しました」


 反省したと言いつつ、ライエルを見てモブが笑っていた。


「あ~、でも俺は思うんですよ。素朴ながら心優しく胸の大きな可愛い女性と、男前で凜々しい女性……二人がいて良かったな、って。色々とありますが、お二人の話を聞いて思ったんです……俺、恵まれすぎかなってさ!」


 ゲラゲラ笑い出すモブは、明らかにライエルとエアハルトの二人を煽っていた。


 そのままモブは部屋から出ていく前に、


「二人とも……ご苦労様で~す!」


 最後に満面の笑みで去って行った。


 ライエルが手を握りしめ……。


「あいつは絶対に許さない」


 ……仕返しを決意するのだった。


いかがだってでしょうか? 楽しんでいただければ幸いです。


ライエルが嬉しがっている、と言われたとおりですね。


そんなライエルが活躍する「セブンス」は、一巻から六巻まで発売中です。


「乙女ゲーはモブに厳しい世界です」も、書籍、電子書籍の両方で好評発売中です。


購入していただければ嬉しく思います。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ