ドラグーン&セブンス発売報告とおまけ
こちらは販売報告と作者の小説のクロスオーバーとなっております。
感想欄でライエルたちの反応が気になられている読者の方が多かったので書いてみました。
そういったものが嫌いな方の場合は、読むことをお勧めしません。
登場人物は【アレイスト】【ライエル】【ポン助】【リオン】となっています。
登場作品は順番に【ドラグーン】【セブンス】【幻想と現実のパンドラ】【乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です】となっています。
……どうでもいいですが、新作ほどタイトルがどんどん長くなっていますね。
「残念なお知らせだ……この中に一人、裏切り者がいる」
そこは洋館の一室だった。
大きな窓の外は雨が降り、夜とあって部屋も随分と暗い。雷がゴロゴロと音を立てており、いかにも不穏な空気を演出していた。
蝋燭の明かりと暖炉の光――薪が弾ける音がすると、一人駆けのソファーに座っていたアレイストが腰を浮かせた。
「う、嘘だ! だってみんな被害者じゃないか!」
窓の近くに立ち、裏切り者がいると言ったライエルが部屋にいる面子を見渡した。
アレイストの他には、裏切り者がいると聞いて憤慨しているリオンの姿があった。
「いったい誰が裏切りやがった。許せねぇ」
腕を組んで大きなソファーを一人で独占しているのは、オークのポン助だ。
目を閉じている。
ライエルは手に持ったグラスを視線の位置まで持ち上げ、淡々とこの集まりについて説明を始めた。
「そう、許せない。俺たちヒドイン被害者の会から裏切り者が出るなどあってはならないことだ」
アレイストが両手で頭を抱えソファーに座って俯く。
「同じ被害者同士、仲良く出来ていると思っていたのに!」
アレイストを慰めるのはリオンである。
「そっすね。いったい誰が裏切り者なのかな~」
慰めている台詞に心がこもっていない気がするが、ライエルはソレを無視してポン助に視線を向けるのだった。
「ところでポン助君は何か言いたいことはないのかな? 片割れが卑怯にも記憶喪失エンドとか最低な結末を迎えてヒドインから逃げ切ったのに、君は何も思わないの? 嫌だよね? ヒドインとか嫌いだよね?」
ポン助が目を開けた。
「いや、あの……僕は割と楽しいと言いますか。みんないい人ですよ」
リオンが笑っていた。
「ポン助さんマジカッケェっすわ。その懐の深さ、尊敬っす。リスペクトっす」
アレイストが涙を流す。
「周りが酷すぎて、きっと普通の恋愛を知らないから……」
ライエルが酒を飲み、ポン助の現状に深く同情していた。
「そう。俺たちはヒドインに苦しめられた同士だ。同じ苦しみを分かち合う義兄弟だ。明人とかいう期待外れは必ず復讐してやるとして、裏切り者が出るなんて考えたくもない」
ポン助以外が頷いていた。
そしてライエルの視線がリオンに向かう。
「――ところでリオン君」
「なんですか?」
「君、最近になって女友達と仲直りをしたらしいね。とてもいい子たちと聞いたけど? それ、ヒドインと言えるのかな?」
ライエルの疑惑の視線に、リオンが抗議した。
「ちょっと待ってくださいよ! 俺を疑うんですか? いったい俺が女子たちにどんな酷い目に遭わされてきたか知らないんですか。酷いや。らいえるサンが酷い」
「てめぇぶっ飛ばすぞ!」
怒り狂うライエルをアレイストが宥め、そして本題に戻るのだった。
「やっぱり裏切り者なんていないんじゃないかな?」
ポン助が小さく手を上げる。
「あの、だから僕は別に普通で――あ、ちょっと待ってください。メッセージが届きました」
ポン助の周囲にステータス画面やらメッセージが浮かぶと、相手はギルドメンバー……ライターからだった。
『助けて、ポン助君! アルフィーが“あのアマ、ぶっ殺してやる!”って言ってナナコちゃんを捜し回っているんだ。マリエラや他の子も武器を持って飛び出しちゃって』
メッセージを読んだポン助は、慌てて部屋を出て行くのだった。
「ナナコちゃんが危ない! みなさん、僕はこれで失礼します!」
走り去るオークの足音は随分と大きかったが、その背中を見送ったライエルもアレイストも目に涙を浮かべていた。
「……彼は裏切り者なんかじゃない」
「あぁ、僕たちの仲間だ」
ヒドインに苦しめられる仲間の背中を前に、涙を流さずにはいられなかった。
そんな中、リオンがアレイストを見ている。
「な、何?」
「……アレイストさん、もしかして裏切り者ですか?」
「は、はぁ? な、なんで! 僕が一体どれだけの周囲に困っているか分からないのか!」
リオンは視線を細める。
「と言っても、アレイストさんのヒロインって誰ですか? ちょっと分からなくて。取りあえず数だけ多いハーレムがあるっていうのは知っていますけど、それだけでヒドインってどうなんですか? 数はあっても質がないというか中身のないハーレムで被害者面はどうかと思うんですよ」
一歩引き下がるアレイスト。
ライエルは思った。
(こいつ最低だ)
アレイストのことをフォローする。
「ば、馬鹿! 中身ぎっしりの重たいハーレムなんか誰が得をするんだよ! アレイスト先輩の苦労は【三月発売のドラグーン四巻を読めば分かるから】!」
※実に三年近くお待たせしましたが、ドラグーン四巻が三月に発売となりました! ご予約受付中です!
リオンはライエルも疑ってかかる。
「ライエルさん、貴方も怪しい」
「お、俺が怪しいだと! 感想欄でヒドインw と笑われた俺が疑われるってどういう事だ!」
リオンは立ち上がると背筋を伸ばし、ゆっくりと歩き始めた。
まるで探偵を気取るような雰囲気が鼻につくライエルだった。
「そこですよ。財布さんを代表とした、今まで尽くしてくれたヒロインをヒドイン扱い。貴方、本当は結構幸せ者じゃないですか?」
「ヴェラの事を財布さんって言うのを止めろよ!」
「おっと失礼。――で、それ以外に言うことは?」
ライエルが言い返せずにいると、リオンは続けた。
「【今月末にはセブンス六巻が発売】とか。楽しみですね~。本当に彼女たちはヒドインなのか俺も確かめさせて貰いましょう」
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疑われて焦るライエルは汗を拭う。
「い、いいだろう。俺が一体どれだけ苦労してきた思い知れ! 言っておくが、お前よりも大変だったからな!」
リオンは不敵に笑うと部屋を出て行く。
「えぇ、楽しみにしておきましょう」
高笑いをしながら歩き去るリオンの姿を、ライエルもアレイストも悔しそうに見送るしか出来なかったのだった。
◇
……危ねぇ。
胸をなで下ろすと冷や汗が噴き出してきた。
あの二人の前で「自分、リビアとアンジェがいるんで幸せっす!」などと言ったらどんな酷い目に遭うか分かったものではない。
「本格的に疑われる前に、こっちから先に疑って疑惑をそらしてやったが、次は駄目か? くっそ、俺だって女子に苦しめられているのに何でこんな目に遭うんだ」
俺一人だけどうしてこんなにも理不尽な目に遭うのか?
きっと心優しいからだろう。
自分の甘さが時々嫌になる。
「さ~て、今日はリビアとアンジェを誘ってお茶会だ。師匠がくれた茶葉を用意しようかな。お菓子も買わないと。あいつらの不幸話で今日はおいしいお茶が飲めそうだ」
足取り軽やかに廊下を歩くリオンだった。
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これからも応援、よろしくお願いいたしますm(_ _)m