シャノンの絵日記
ひさしぶりに「せぶんす」の更新です。
「教授、発見しました!」
「でかしたぞ!」
古代遺跡。
かつて帝国と呼ばれ、滅んでしまった巨大国家の資料を見つけた二人は大喜びでその資料を広げた。
「凄いですね、何千年も過ぎているのにまだ読めます」
「あぁ、帝国時代はとにかく技術の進歩が異常だった。それは他の資料からもハッキリしている。見てくれ、簡易の年代測定でも帝国時代の物だと出ている」
スマホのような物で年代を測定する教授は、興奮した表情で資料を見ていた。
助手である男も感動している。
「全て持ち出されたと思っていましたけど、やっぱりまだ残っているんですね」
埃の多いその場所は、二人が資料を探し回ったので埃が随分と舞っている。
光が差し込む場所には、キラキラ小さな光が見えていた。
「まさか崩れ去った棚の下に置かれているとは……さて、まずは記録だな」
スマホのような物で撮影、簡易の解析を行うと二人は資料の近くに光を用意した。
丁寧に扱い、その資料がいったいどのような物であるかを確認する。
助手の手が震えた。
「え、絵日記? 教授、これって絵日記ですよね! つまりこれは――」
「あ、あわ、あわわわ、慌てるんじゃない!」
白髪で、白い立派な髭を持つ教授が「あわわ」言っても可愛くない。
そう思いながらも、助手は手に入れた資料を確認する。
古代の絵日記。
価値としては確かに貴重だが、帝国時代の絵日記――特に作者が問題だ。もしも、これが有名な女性の描いた代物なら、歴史的な価値と共に芸術的な価値まで付加される。
「ま、まずは解析だ。流石に状態が悪いからな」
もっと設備の整ったところに持ち込めば、すぐにでも内容は解明される。
二人は丁寧に絵日記の一部を保管し、そして緊張しながら古代遺跡を後にするのだった。
――古代。
シャノンは後宮の家で屋根に登っていた。
小さな街である後宮には、側室一人一人に屋敷が与えられていた。
大きくはないが、生活するのに不便ではない。
ある程度は豪華に作られているが、予算の都合で金銀財宝が満載という状況でもない。
屋根に登ってキャンパスを前に絵を描くシャノンは、となりにオートマトンであるヴァルキリーを立たせていた。
ヴァルキリーの視線から情報を読み取り、絵を描いている。
そして、ヴァルキリーの視線の先にある景色には女性たちの姿があった。
ヴァルキリーがノリノリに実況している。
「おっと、ここで蜘蛛女ミランダがスキルで糸を出す! グルグル巻きにして椅子のように扱っております!」
シャノンは自慢気だった。
「流石はお姉様ね」
ライエルの側室は二十五人。
初期から増やす事をしていないために、面子は変わらない。
だからと言って、後宮内の争いがない訳ではない。
「おっと、相手が降参を告げました。すかさず書類を出しております。契約でガチガチに縛り付けるもようです!」
調子に乗った側室を一人……実力で締め上げていた。
ライエルと共に戦場を駆けた正妻ノウェムを始め、側室たちも実戦経験者が多い。そのため、腕力が重要視される後宮である。
「ふっ、私を馬鹿にするからこうなるのよ」
ヴァルキリーがシャノンの屑さに身をよじっていた。
「素晴らしいほどの屑ですね。どうしてその駄目さをヒヨコ様たちが受け継がなかったのか……」
シャノンが紫色の髪をかき上げる。だが、その時に絵の具が付いていた。
ヴァルキリーは嬉々として絵の具を拭き取る。
自分の姉に告げ口し、他の側室に勝利する。
側室同士の関係には、嫌でも政治的な面が関わってくる。そんな中で、シャノンは一人自由気ままだった。
微妙な力関係や、派閥などの面倒な事を全て姉であるミランダに押しつけているからだ。
すると、ヴァルキリーが実況を再会する。
「おっと! ここでヒヨコ様の参戦だぁぁぁ! 他の側室を椅子にして書類にサインさせる姿を見て泣いておられます! これは酷い! 至急、ヒヨコ様をお救いしなければ!」
ヴァルキリーが、他の姉妹たちに増援を要請していた。
ミランダたちの方を見てみれば、出くわしてしまった子供を前に笑顔を取り繕っていた。
喧嘩をしていた二人が笑顔になり「遊んでいただけなのよ~」などと言って幼い子供を不安にさせないようにしている。
ミランダにしても、他の側室にしても子供たちには手を出さない。
それは後宮内での暗黙のルールだ。
政治的に邪魔だから排除しようと動けば、後宮内で働いているヴァルキリーズを全て敵に回してしまう。
彼女たちの行動は至ってシンプルだ。
女性陣に忠誠心を抱いていない。
忠誠心が向かう先は、ライエル――そして、その子供たちだけである。
例外があるとすれば、駄目な子供を産むと考えられていたシャノンだけは他よりも幾分か特別扱いをされているだけだ。
普段はふざけているように見える、モニカを筆頭としたオートマトンたち。だが、敵に回れば本当に厄介な存在である。
もしも子供を害そうとすれば、本気で側室を始末してしまう。しかも、ライエルに分からないように、だ。
彼女たちの忠誠心が向かう先を、側室たちは理解していた。
……シャノン以外は。
「あの子は……誰の子だっけ?」
二十五人も嫁がいるという事は、二十五もの家族があるのと同じ事。
ただし、家庭の主人である夫はただ一人。
ヴァルキリーが即答する。
「エヴァさんのところのヒヨコ様です。愛くるしいお耳が特徴的ですね。こう……ハムハムしてあげると、照れるのがまた可愛いと報告が上がっています」
「あんたら、本当に何をやっているの? 馬鹿じゃないの?」
馬鹿であるシャノンに馬鹿と言われるが、ヴァルキリーは怒った様子もない。
むしろ、耳を唇で挟むような動きをするヴァルキリーは、溜息を吐きながら「私もハムハムしてぇ」と呟いていた。
絵日記の方には、ミランダが他の側室をグルグル巻きにして椅子にして書類にサインを迫る姿が描かれていた。
シャノンはノリノリで、子供を前に困っているミランダのことを文章で表現する。
ヴァルキリーは気が付く。
「しかし、これを見られたら大変な事になりませんか?」
シャノンの手が止まり、筆を落とした。
屋根に筆が落ち、そして転がると屋根から落ちてライエルの頭の上に落ちる。
「シャノン! またお前かぁぁぁ! 降りてこいやごらぁぁぁ!」
忘れ物を取りに来たライエルは、筆を握って屋根の上にいるシャノンに文句を言っていた。
シャノンも言い返す。もはや夫婦同然なので、そのやり取りはお互いに遠慮がない。
「うるせぇ! 仕事に戻れ。ボケェ!」
ライエルと口喧嘩を始めたシャノンは、ヴァルキリーに命令するのだった。
「と、とにかく、今日の分は別で保管して。棚の下に隠しておけばいいわ。お姉様に見つかると叱られちゃう!」
既にいい歳なのだが、シャノンは未だにミランダに怒られている。
時々、子供たちにも怒られる。
屋根から降りて、ライエルと喧嘩を始めようとするシャノンをヴァルキリーは見送った。
手に持った完成した絵日記を見て、どこに隠そうか考える。
「……資料室に隠しておきますか」
「なんという事だ」
教授は頭を抱えていた。
資料の内容を確認すると、そこには【悲運な天才画家】として有名であるシャノンの作である事が分かった。
助手も興奮している。しているが、内容を読んで唖然としていた。
「ミランダと言えば、側室の中では二番目に偉い人でしたよね? シャノンの実の姉……姉妹を側室入りさせるとか、皇帝もやりたい放題ですね」
教授も呆れていた。
「悪女という噂程度はあったが……まさか、事実だったとは思わなかった」
ミランダに対して、後世の評価が音を立てて崩れていく。
「教授、これを隠していたという事は――」
教授が助手の言葉を次いだ。
「分かっている。きっと、後世に伝えたかったのだろう。ありのままの後宮の事実……わしたちは悲運な天才画家に代わり、伝えなければならない」
使命感を燃やす二人。
一枚の絵日記が、ミランダの評価を大きくおとしめるのだった。
ミランダ( ゜言゜)「……おい?」
シャノン。・゜・(ノД`)・゜・。「話を聞いて、お姉様! 出るのよ。ついにセブンス【四巻】が発売されるのよ! ついに予約を開始するの! 私たちの出番よ!」
ミランダ(#・∀・)「今月――つまり、2/27日に発売なのね。まぁ、それはなんと素晴らしいのかしら」
シャノン(´∀`*)「今回は私たちが表紙を飾るのよ。やったわね、お姉様!」
ミランダ( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン「でも、それはそれ、これはこれ」




